この花も例年ならとっくに終わっている頃です。
でもこの残暑としか言いようもない季節のためでしょう、まだまだ咲いてました。
今年はパスするつもりでしたが・・・
近所では見られなくなりました。ちょっと前までは、畦や河原、用水路などで普通にありました。最近は都市近郊ではすっかり見られなくなっていまいました。ちょっと郊外の里山っぽいところでは群生しているところもあります。
「ミゾソバ」です。 漢字で「溝蕎麦」です。
別名が「ウシノヒタイ(牛の額)」です。 これは葉っぱの形が牛の額に見えるからだそうです。でも、牛の「額」って・・・
タデ科、イヌタデ属の1年草です。
北海道〜九州で生きています。湿気のあるところです。 東アジアに広く暮らしているようです。
茎は地面を這うように広がって節から根を出しています。 地中で閉鎖花を付けるものがあり、それを「オオミゾソバ」として区別することもあるようです。
この茎、実は中空です。
上の方で立ち上がり、30~70cmくらいになって、逆さにトゲが付いています。この刺を他の植物に引っ掛けてその力を借りて成長するそうです。
葉っぱは互生について、卵状の鉾形で先が尖ります。そして両面に刺毛っぽいのや星状毛がついています。
葉の形やデザインは個体差が大きいようで、太った牛、痩せた牛、馬のような牛の額もあるとか・・そして、葉に紋様のようなものが入った葉もよくあります。
葉だけでなく、葉鞘に短く毛があり、縁にも毛があり、なんか毛と刺で守っているようです。
花は花柄に腺毛があります。花は紅紫色で花びらの先の方の色が濃くなっています。この色合いがなんともカワイイ感じです。
花びらは5つ、雄しべは8つ、雌しべは1つで柱頭は3裂します。
でもあんまり花を開いてくれません・・。
なんかやる気がないのか、そんなに競って咲き誇らなくてもいいのか・・?
なので、聞いたら、実は地中に「閉鎖花」を作って、開放花で受粉できなくても、自分自身で受粉して果実を作れるそうです。
そして、この閉鎖花で作る果実の方が大きいそうです。地上の花はあんまり当てにしていないのかも・・。
閉鎖花をつける花はスミレなどたくさんありますが、今回注目したのは「植物は動けないけど強い」 という本、著者は北嶋廣敏先生です。
その中にこのミゾソバの閉鎖花について記述されています。
そのまま転記します。
「・・・ミゾソバの閉鎖花はなんと土の中あるのだ。ミゾソバは開放花もつけるが、その花は小さく、8本の雄しべ、1本の雌しべからなり、花びらはなしく5つに裂けた萼が花びらのように見える。小花が10~20個集まり、球形となり金平糖状。
花に蜜があり、ハナアブ、ハナバチ、チョウが訪れる。
一方、地中になる閉鎖花のほうは、外見が開放花のつぼみの状態に似ている。ミゾソバと同じく開放花と閉鎖花をもつスミレの場合、開放花の花弁は5つ、雄しべ5つで、閉鎖花では5本のオシベのうち3本は退化し、5枚の花びらは全て退化している。
それに対して、ミゾソバの閉鎖花は開放花と同じように8本の雄しべ、1本の雌しべを持ち、また、蜜腺も備えている。ただし、蜜は分泌されない。
閉鎖花は自分の花粉で受粉する。昆虫に花粉を運んでもらう必要はないから、地中あってもいいわけである。それに地中のほうが安全である。
同花受粉を行う閉鎖花では、虚弱な種子ができやすいというデメリットがある半面、メリットもある。閉鎖花は花粉の運び手がいなくても種子がつくれ、花粉は少しつくればよく、蜜は分泌しないので、開放花に比べ、花をつくる゛コスト゛が少なくてすむ。
ミゾソバの種子は閉鎖花のほうが、開放花のものより少し大きい。地上の茎の先で花を咲かせた開放花の種子は鳥に食べられたり、水に流されたりして遠くへ運ばれていく。
閉鎖花は開放花が種子を作れなかった場合のいわば保険である。ミゾソバは一年草で、種子をつくると、やがて枯死する。
閉鎖花の種子は親植物の性質を受け継いでいる。その種子は親のもと、土の中で安全に冬を過ごし、親が死んで空いた場所で芽を出す。その子孫(種子)は親の性質を受け継いでいるから、その場所で生きていけるであろう。」
ミゾソバには仲間が4種、1亜種、1変種あるそうで、ヤマミゾソバ、コミゾソバ、ニシミゾソバ、オオミゾソバなどがあるようですし、あの「アキノウナギツカミ」も仲間です。