日本の山野草の代表のひとつで、固有種の多さでも特筆すべき花です。

 いつかまとめたいと思っていましたが、質、量ともに太刀打ちできるものでもなく、第一そんな力量もないのですが、自分が撮ったのを並べてみます。

 

 

 アザミは世界に250種くらいあるそうです。主に北半球でくらしています。

1年草、2年草、多年草と様々ですし、地方、地域による亜種、変種が非常に多いそうです。

日本で暮らしている種としても70という図鑑、80、100以上と見解もいろいろですし、亜種、変種をカウントしたら130(多くて途中であきらめた)くらいまでありました。

 

 そんな多くの変異がありますが、ある程度の範囲で暮らしているは6つくらいしかありません。①北海道の「チシマアザミ」と②「コバナアザミ」、③東北の「ナンブアザミ」、④関東の「トネ(タイ)アザミ」、⑤近畿・中国・四国の「ヨシノアザミ」、⑥九州の「ツクシアザミ」です。


 〇〇アザミと、アザミの名の付くのは、本来のアザミ属以外にもあります。例えば、「ルリタマアザミ」はヒゴダイ属です。また、「ミヤコアザミ」はトウヒレン属になります。さらに、「キツネアザミ」はキツネアザミ属です。なので、今回のアザミは本来のアザミ属に限ったことにしました。

 

 その本来のアザミ属とは以下のような特長があるそうです。

①普通アザミっていう時にはキク科、アザミ属の総称として使います。

②草丈は5~400cmと幅があります。一般にはトゲがあります。

③花は両性又は雌雄異株(雌性両全性異株)です。

④茎は1~数本が直立して分枝または単枝で、翼がないのと、トゲのある翼のあるものがある。

⑤葉っぱは根生葉と茎葉があり、全縁に近いものから2回羽状に分裂して、形は披針形~広披針形です。 縁にはトゲがあります。

⑥花については、頭花と一般的に言われ、総苞は円筒形~卵形~球形で、クモ毛のあるもの、ないものがあります。

⑦総苞片は数、5~20列について同じような形状です。外側と中間の総苞片は圧着し、先が広がり、または直立し、普通は先端にトゲがあります。最も内側の総苞片はふつう直立し、平でしばしば捩れて全縁又は歯状、縁はふつう先端にトゲはなく(多くの種の総苞片の中脈の上部は伸びた粘る樹脂状の腺をもち、普通新鮮な時には乳白色だが、乾くと暗褐色~黒色になる)。

⑧花托は平ら~凸面、パレアがない。黄褐色~白色の剛毛又は剛毛状の鱗片で覆われる。

⑨小花は25~200+α個あり、花冠は白~ピンク、赤、黄色、紫色とある。筒部は長く細い、上部は曲がり、喉部は短く急に広がり円筒形で裂片は線形。花糸は分離し葯は鋭い短い尾あり、その先の付属体は線状楕円形や長楕円形。雌しべ花柱の先端は長い。

⑩出来る果実は痩果で、狭倒卵形や卵形。



 

 これだけ仲間がいろいろあっても、別名はあまり記載されていません。

「刺草」くらいです。

 上の①~⑩はやや専門的で内容も難しい感じです。個別の同定をするにはもっと細かい違いが分からないと出来ないようです。

 なので、もっと簡略した内容で、

①根は細長く、山ゴボウとして漬物になります。

②葉っぱは根生葉と茎葉。根生葉が最初出るが次第に草丈が大きくなると枯れるが、花の後にも残るものもある。葉には深い切れ込みが入るものが多い。

③葉や総苞にはトゲが多い。

④頭花(頭状花序)は筒状花だけです。

⑤雄しべも雌しべも尖った棒状になっています。

⑥花の色は赤紫色~紫色が多く、希に白色も出ます。

 

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 「アザミ」という名前は、もともとは「アザム=傷つける、驚きあきれる」が訛ったものとされます。また、蜜源植物として蜂蜜が作られたりします。

 現在「ヤマゴボウの漬物」とされて販売されているのは殆ど、「モリアザミ」を栽培してものです。

 アザミについていろいろな図鑑や書物に書かれています。

そんな中からひとつ。

 稲垣栄洋先生の「花は自分を誰ともくらべない」より

「アザミ」の名は「あざむ」に由来するといわれている。あざむには「興ざめする」という意味がある。美しい花だと思って触れるとトゲがあって驚かされる。つまり「あざむかれた」ということなのだ。アザミは漢字で薊と書く。草冠に魚(骨)と刀と書き記した字もアザミのトゲをよく表している。

 アザミの花をそっと指で時期すると雄しべの先から白い花粉が噴き出してくる。アザミの仲間は筒状の小さな花が集まって1つの花を形作っている。

 アザミの花にやってくるのはチョウ。チョウは人間には人気があるが、植物にとっては密泥棒として知られる存在。何しろチョウは足が長く、ストローのような長い口を伸ばして蜜を吸う。そのため蜜を吸われるだけで、チョウの体に花粉をつけることがカンタンではないのである。しかし、魅力もある。チョウは飛翔能力が高く長い距離を飛ぶことが出来るからチョウの体に花粉をつけることが出来れば遠くまで花粉を運ばせることが出来るのである。そこでアザミはチョウの体に花粉をつけて受粉できるように筒状の花から長い雄しべや雌しべを針のように突出している。こうしてチョウがアザミの花に止まった時に雄しべや雌しべの先がチョウの体に触れるようになっている。そして、チョウの体がアザミの雄しべに触れると刺激された雄しべの先から白い花粉を出して体に花粉をつける。

 

 自宅近くで見れる代表種です。

 秋の郊外で昔は普通にあったし、小中の登下校の川岸でも見ていた覚えがありますが、最近はこれも邪魔者扱いされている・・って噂です。

 

 「ノハラアザミ」です。  漢字では「野原薊」です。

 

 

 キク科、アザミ属の多年草です。

 生まれ故郷は本州の中部以北の山地、林縁や原っぱです。ということは、日本固有種です。

 

 

 草丈は60~100cmくらいで、葉っぱはやはり羽状に中裂して、やはり縁にはトゲがあります。茎の下の方に大きい葉っぱがあります。この根生葉は花の咲く頃にもしっかり残っていて、8~12対くらいに裂けて、怖そうな刺があります。が、茎の中程や上に付く葉は少なくて、茎を抱くように付いています。

 

 

 花はお馴染みのアザミの花。総苞にはクモ毛がありますが、腺毛がなくてネバネバしません。また反り返りもしていません。

 

 春に咲くのが「ノアザミ」です。ネバネバします。そして、今回の秋に咲くのが「ノハラアザミ」です。

 

 

 アザミも各地に地域ごとの特徴あるアザミが沢山あって多様な生き方をしているようです。

 このノハラアザミのことを調べていたら、実は雄性先熟だそうです。まず、集約雄しべという濃い色の雄しべが花粉を出せるようになります。雌しべはまだ働きません。

 

 

 雄しべが花粉を出し終わると今度は雌しべの柱頭が2裂して、受粉出来るようになって、雌性期となります。

 

 アザミのトゲは誰から身を守っているのでしょうか?、これだけのエネルギーを使って武装しているのですから、ご先祖たちは、相当の艱難辛苦に耐えて、自衛するようになったのでしょう・・。

 「タイアザミ」です。 別名が「トネアザミ」てす。 これも最後の花でした。

 

 

 東北などに多い「ナンブアザミ」の変種とされています。

 茎葉は互生してついて30cmにもなる大きい葉っぱです。 

 

 

 葉は楕円状披針形で深く切れ込みが入ります。 そして、ここにも鋭いトゲが・・・もう、花も

 終わるのに、トゲは立派です。

 根生葉は花の時期には枯れてなくなってしまいます。

 

 

 総苞がちょっと膨らんだ感じの鐘形です。

 総苞片は先が尖り、トゲ状になっていて、おまけに反って、超痛い!

 今年はそういえば、あまり歌いませんでした。

 「アザミの歌」対「アザミ嬢のララバイ」

 

 

 

 

 アザミと言えば、その舞台は山野ばかりだと思っていましたが、野草として見れば、里でも海辺でも当然あります。

そんな海辺が暮らしやすいと言っているアザミです。

 「ハマアザミ」です。  漢字では「浜薊」です。

 

 

 故郷は関東~九州にかけての太平洋側の海岸です。 千葉辺りから鹿児島で、なぜか鹿児島より南にはいないそうです。 つまり、日本固有種なんです。

 でも、鹿児島よりさらに南には、別種の「オイランアザミ」というのが暮らしているそうです。

 

 このアザミ、高山からこの海岸縁まで、草原から砂地まで、進化してそれぞれの環境で見事に適応しているんですね。さすがキク科です。

 そして、このハマアザミは若葉の時には山草、山菜(海菜とはいわない?)として葉っぱも根も食べられるそうです。特に、根も食べられるので別名で「ハマゴボウ」といも言われます。

 でも海岸で強風のせいなのか分かりませんが、草丈は30~50cmくらいで、アザミの中ではコンパクトなタイプです。

 

 

 根生葉と茎葉があります。ともに羽状に切れ込んでやや厚みがあり、光沢もあります。海岸で暮らす植物に多い葉の特徴です。根生葉は花の時期には枯れてしまうのもよくありますが、このアザミは花期にも葉が残ります。

 茎葉は互生について、葉にはやっぱり鋭いトゲがあります。

 

 

 花はうす紅紫が普通ですが、まれに白花のがあるそうです、もちろん見たことはありませんが・・。頭花は直立して1~4つのトゲのある苞葉があります。総苞は鐘形で、その総苞片は6列に並んで先が鋭く尖ります。 

 

  ちょっと名前も珍しいアザミです。

 

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 「ダキバヒメアザミ」です。 漢字では「抱葉姫薊」です。

 今年の山歩きで逢いました。

 キク科、アザミ属の多年草です。

 本州の東北(福島にはいません)と新潟県で暮らしています。 

 なので・・日本固有種です。

 

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 草丈が細身で1.5~2mくらいあります。茎は紫色っぽくなって茎葉の基部は茎を抱きます。葉っぱは鋸歯状に裂していてトゲっぽくなっています。

 根生葉と下に付く葉は花の時期にはなくなっているようです。

 

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 花は茎先に上向きに付きます。総苞はネバネバしません。その総苞片は長くて反り返っています。 花冠の先が5つに裂けて、不規則に折り重なり柔らかい毛鞠状のかたまりになっています。そのかたまりの中から雄しべが5つ、雌しべは雄しべに包まれています。

 ちょっと珍しい感じのアザミです。湿気の多いところが好きみたいです。

 

 そしてジャンボサイズのアザミです。

 「フジアザミ」です。

 

 

 名前の通り、富士山の周辺に暮らしています。

 

 

 

 

 

 よく近くの原っぱや河川敷などでトゲ自慢をしているアザミがあります。「アメリカ・オニアザミ」です。アメリカに鬼がいたのにもビックリしましたが、日本の山にもちゃんとオニがいました。

 「オニアザミ」です。  漢字ではもちろん「鬼薊」です。

 生まれ故郷は本州、北陸~東北の日本海側、多雪の所で育ちました。

 なので、これも日本固有種です。

 

 

 このオニアザミは標高2000メートルくらいのところにも暮らしています。 

 なので高山植物図鑑に掲載されている「アザミ」をひろってみると・・

①フジアザミ、②シロバナフジアザミ、③アポイアザミ、④エゾノサワアザミ、⑤ミヤマサワアザミ、⑥ウゴアザミ、⑦オオノアザミ、⑧オニアザミ、⑨ジョウシュウオニアザミ、⑩チョウカイアザミ、⑪ダイニチアザミ、⑫タテヤマアザミ、⑬ガンジュ(岩手)アザミ、⑭センジョウアザミ、⑮
ヤツガタケアザミ、⑯ホウキアザミ、⑰オゼヌマアザミ、⑱ナンブタカネアザミ、そして、日本から千島列島にいる⑲チシマアザミ。 

 

 

 

 名前からも地域限定版のアザミが多いのが分かります。

するとこのオニアザミは結構広範囲で生きているようです。

 

 

 なんといっても自慢はこの葉っぱでしょう。鬼にはトゲがあったっけ?、あれは角?

 葉には根の際から出ている根生葉と茎に付く茎葉があります。根生葉は花の時期にも残っています。茎葉はこの写真のように、いろいろな形がありますが図鑑では、卵状披針形~長い楕円形で羽状に裂けて、その先に超痛そうなトゲがあります。

 基部では茎を抱きます。

 

 

 花はキクの花ですが、舌状花はありません。みんな筒状花です。

 筒状花の先は5つに裂けています。花の直径は3~5cmくらい。総苞はよくネバネバします。総苞片は6列、反り返りはしません。

 

 

 この頭状花序。とにかくたくさんの筒状花の集合体です。1つの筒状花には長い雌しべが1つ、そして雌しべを取り囲む雄しべがあります。

 美味しい花粉と蜜で虫たちを誘いますが・・・花のすぐ近くにもトゲトゲがあるので、着地のへたくそな昆虫は止まるのもヒヤヒヤかも・・。

 

 

 虫媒花なので、昆虫に来てもらわないと話になりません。そこで、昆虫が花に止まると、その刺激で筒状になった雄しべが収縮します。雄しべは5つあって葯が一体になっていて、その中を雌しべの花柱があります。この筒状になった所に花粉がたまります。雌しべの花柱の中程に毛の生えた膨らみがあって、花粉が外に掻き出されるようになっているようです。

 花粉を押し上げていて花粉を出している時には、めしべの花柱の先の柱頭は閉じたままなので、自家受粉することはなく、花粉を出し終わると柱頭が開くようになるそうです。

 

 でも、一部には両性花として機能する個体と雄しべがあっても花粉のないもの、また、雌花だけを作るもの、雄花だけをつくるもの・・つまり雌雄異株のもあるようです。複雑です。

 

 

 里にいるのは「アメリカオニアザミ」です。日本では北海道~本州、四国に広がっていて、このオニアザミよりも多く日本では見られる鬼です。

 アメリカ・・っていうので、アメリカの鬼だって思っていたら、これがヨーロッパの生まれで、実はヨーロッパの鬼でした。今や、北米、アフリカ、オーストラリアへも進出中だそうです。

 

 最後に・・日本固有種のアザミたちです。

 どこまで書けるかな・・

①アズミノアザミ、②アイズヒメアザミ、③ゲイホクアザミ、④シライワアザミ、⑤ミネアザミ、⑥ダキバヒメアザミ、⑦アオモリアザミ、⑧アポイアザミ、⑨アシノクラアザミ、⑩アシウアザミ、⑪カムイアザミ、⑫サツマアザミ、⑬ダイニチアザミ、⑭ビッチュウアザミ、⑮コバナアザミ、⑯オニアザミ、⑰シマアザミ、⑱ヒメアザミ、⑲アキヨシアザミ、⑳チカブミアザミ、㉑ノマアザミ、㉒チョウカイアザミ、㉓コイブキアザミ、㉔ヒッツキアザミ、㉕モリアザミ、㉖リョウウアザミ、㉗エチゴヒメアザミ、㉘キソアザミ、㉙リクゼンアザミ、㉚ウラジロカガノアザミ、㉛ガンジュアザミ、㉜リュウノウアザミ、㉝ホウキアザミ、㉞ミヤマホリエノアザミ、㉟マルバヒレアザミ、㊱ギョウジャアザミ、㊲ハチジョウアザミ、㊳ハチマンタイアザミ、㊴ハグロサンアザミ、㊵ハナユキアザミ、㊶ハッポウアザミ、㊷フタハマアザミ、㊸トオノアザミ、㊹ヒダカアザミ、㊺ヒダキセルアザミ、㊻オゼヌマアザミ、㊼オガアザミ、㊽イズモアザミ、㊾タチアザミ、㊿イリオモテアザミ、・・・

下のアザミを省略して、番号もカットして…

「イシダテ・・・」「イシヅチ」「アッケシ」「ノ」「オニオオノ」「トゲ」「カガノ」「ナトリ」「ウゼンヒメ」「アサヒカワ」「キリシマ」「クジュウ」「ナガエ」「テリハ」「イナベ」「ナンブ」「ハマ」「ムラクモ」「ヒュウガ」「ハクサン」「ホッコク」「アズマヤマ」「キンカ」「ミョウコウ」「ナガト」「ナギソ」「ナンブタカネ」「シモツケ」「ニッポウ」「キタカミ」「トネ」「サド」「シコク」「ヨシノ」「ノリクラ」「エチゼンオニ」「オオミネ」「ジョウシュウオニ」「ノハラ」「カツラカワ」「タテヤマ」「オクヤマ」「エゾノサワ」「ニセツクシ」「フジ」「テマリフジ」「マツシマ」「センジョウ」「シドキヤマ」「ツガルオニ」「ヤチ」「キセル」「ヤマ」「オイラン」「ハリカガノ」「カクダ」「スズカ」「ジャクエツ」「ハチオウジ」「タネガシマ」「ワタムキ」「ウスバ」「ホソエノ」「サンベサワ」「テシオ」「トガ」「ウエツ」「ウゴ」「リシリ」「ウンゼン」「ウゼン」「エチゼンヒメ」「ヤクシマ」「セツタカネ」「エゾノミヤマ」「サワ」「タキ」「マルモリ」「イワキヒメ」「ザオウ」・・130まできました・・・もういいや。

 山で出逢ったアザミには この歌しかありません。

 歌が作られた舞台は信州、霧ヶ峰、八島湿原です。

 

♪ 山には山の 愁いり

  海には海の 悲しみや

  ましてこころの 花園に

  咲きしあざみの花ならば

 

  高嶺の百合の それよりも

  秘めたる夢を ひとすじに

  くれない燃ゆる その姿

  あざみに深き わが想い

  

  いとしき花よ 汝はあざみ

  こころの花よ 汝はあざみ

  さだめの径は 涯てなくも

  かおれよせめて わが胸に

  ああ ああ