毎年書いてます。 去年のが自分としてはほぼ「完成版」だと思っていましたが…

 そして今年もこの花の季節になりました。

 毎年毎年開花するのが早くなっている・・と嘆いていますが、ソメイヨシノの開花とほぼ同時に咲きます。

 


 今年も今までのメモを見直し、今年撮った写真てを加えたりして修正します。

そして、「植物なんでも事典」とすり合わせて作り直しました。

 多くは去年の作った箇条書きをベースにしています。
 

 

 「カタクリ」です。  漢字では「片栗」です。

 ユリ科、カタクリ属の多年草です。

 

 

 故郷は東アジアで、日本、朝鮮半島、中国あたりですが、日本では全国ですが生きていける場所には条件があります。主には東北から北陸地方に自生地が多くあります。

 世界的には北半球に24種あります。

☆日本を含むアジアに1種。

☆シベリアなどに1種。

☆ヨーロッパのコーカサス地方などに2種。

☆北アメリカの東部に5種。

☆北アメリカの西部に15種です。 

 つまり、カタクリは北米に多い植物で、北米には黄色い花が多いそうです。

 

 

 日本のカタクリは学名では「エリスロニウム・ヤポニカム」といいます。エリスロニウムというのは「赤い」という意味だそうです。ヤポニカムは日本産のことです。

 

 ここから以下は箇条書きにします。

 主なネタもとは「植物なんでも事典」と各種図鑑、エッセー、ネット情報などです。

 

 

①カタクリは3500万歳。

 御先祖は今から約3500万年前(第三紀中期)にシベリアの落葉広葉樹林(ブナやミズナラ林)に出現したようです。気候的には温暖な時期で周北極域に生息地を広げました。そして約2400万年前になって寒冷期に南下して、乾燥地帯をさけて東アジア・ヨーロッパ・アメリカ東部・アメリカ西部に隔離分布するようになったのだとか・・。このような植物を「第三紀周北極要素の植物」というそうです。

 

 

②日本の夏は辛すぎる・・

 カタクリが生きていけるのは落葉樹林の林床ですが、夏の高温多湿、乾燥などでは暮らしていけません。なので、日本では早春の落葉樹が葉を落としている時に葉を出して、花を咲かせ、果実を実らせて、落葉樹の葉が茂る前に地上部は枯れてしまいます。

 

 

③生きて行ける場所は地下の温度が大切。

 カタクリの生息地については「植物なんでも事典」に詳しく記してあります。それによると、氷河期に冷温帯植物が南下し、今の暖温帯に逃れて、縄文時代の温暖期に北方へ戻るものと、標高の高い所へ上がるもの、また一部は特殊条件の沖積錐(扇状地の急斜面に出来たものや段丘崖の北斜面、落葉樹の多い所で残った)で、関東では雑木林の北~北東斜面で地下に水の流れがある所です。

 

 

④一年のほとんどは地下で暮らしてます。

 地上部が枯れても地下ではしっかり生きています。夏はしっかり休んでいますが秋には活動が始まり、来春の花芽を10~11月には作ります。

 

 

⑤「片栗粉」は今、どこに・・。

 カタクリと言えば「片栗粉」ですが、今食品売り場にある片栗粉は、馬鈴薯デンプンが多くなっています。また、一部ではジャガイモのデンプンのもあります。本来のカタクリのデンプンからの片栗粉は一般の食品スーパーにはありません。あるのは一部の薬局らしいです。

東北地方では葉、花茎、花を食用としていました。茹でて、乾燥させて保存食としても利用していたそうです。

 

 

⑥「片栗粉」は薬?

 カタクリのデンプンには解毒作用や緩和作用もあり、風邪・下痢・胃腸炎・子供の嘔吐などに効果があり昔から民間薬としても使われていたそうです。

 

 

⑦「万葉集」に詠われた。

 大昔、万葉集の頃には「カタカゴ(堅香子)」と呼ばれていたのですが、万葉集には1首しか掲載されていません。『物部の 八十乙女らが 汲みまがふ 寺井の上の 堅香子の花』ですね。作者はあの大伴家持さんです。

 

 

⑧カタクリは成長するのは時間がかかって大変です。

 カタクリは寿命が15~20年くらい(図鑑によって違いますが40~50年としているのもあります)ですが、発芽した1年目には細い松葉のような糸状の子葉が1枚出るのみです。そして、2年目に葉っぱらしい形になりますが、まだ1枚のみしか出ません。

 一昨年、やっと1年目の葉っぱをパチリしました。

 

 

それが6~7年続いて7~8年目に葉を2枚出すと初めて花を咲かせることが出来ます。

 

 

⑨毎年花を咲かせることは出来ないようです。

 花を咲かせることが出来て果実を実らせた株は翌年は開花出来ません。また、開花しても果実を実らせることが出来なかったものはその個体の栄養状態にも左右されるが翌春も開花するそうです。

 

 

⑩地下の球根が一番大事です。

 カタクリは球根(鱗茎)をもっています。春に発芽して葉を展開させるまで昨年作った栄養分を使って成長し、葉を展開させてから新しい球根を作り始めます。この時、もし球根が十分な深さまでもぐっていない場合は新しい球根を前の位置よりも下方に作ることによりより深くもくり乾燥しないようにしています。

 

⑪「カタクリ研究レポート①」から

 カタクリの生育する場所、環境条件については、1980年に新潟県立教育センターの研究報告第34号にあります。

そのまとめには

 ・カタクリの分布はコナラ二次林の分布と一致する。

 ・最もよい生育地はコナラの樹齢が若く階層構造の見られない雑木林である。

 ・ススキ草原に生育することは積雪地の特徴である。

 ・40度を超す斜面では雪崩が発生しやすく、土壌が不安定なため生育地としては適さない。

 ・カタクリが成熟して花を咲かせるまでに9年かかると推定される。

 ・二葉性の有花個体では、種子形成のため、翌年単葉になる個体もある。

 ・種子や球茎の発芽については内生的要因により一定期間の休眠が必要である。

 

 

⑫「カタクリ研究レポート②」より

 カタクリの分布と生育環境については2012年に富山森研研報4に・・「本州中部・多雪地域丘陵帯の里山林におけるカタクリの分布と環境」という報告書があります。

・夏期の地温が22度C以上になる場所では生育が抑制される。また、22度C以上が1000時間越えるとカタクリは生育しない傾向。

・春先の光環境を決定する林相だけでなく地域・標高・方位など立地要因も大切。林分として春先の相対散乱光が20%以上となるような常緑林の少ない林底または林縁とし、微地形として夏期に高温とならない北向き斜面及び斜面下部とする。・・とあります。

 

 何年か前に傾斜地の下で水流のある所が良い・・と聞いた覚えがあります。

 

⑬カタクリ粉の歴史は

 カタクリ粉は明治時代までは本当にこのカタクリから作っていました。有名な産地は今の兵庫県、昔の播磨国、越前や大和、中でも大和国の「宇陀」は標高が500メートルくらいの高原地帯でここで栽培して作られたものは「幕府への献上品」だったそうです。

 それが明治になって北海道を中心に「ジャガイモ」栽培が盛んになり、1882年頃から、「ジャガイモのでん粉」として生産が始まったそうです。

 その時にカタクリ粉の代用として、「片栗粉」を『商標』としてジャガイモのでん粉が一気に多くなったそうです。
 

⑭日本のカタクリの鱗茎

 鱗茎は5~6cmで筒状の楕円形です。これが分球して殖えることはありません。つまり栄養繁殖はしません。(北米のもので栄養繁殖するものもあります)

 

⑮カタクリの花の基本

 カタクリの花はユリ科の特徴を現しています。花びらが6枚、萼が変化した外花被片が3つ、本来の花びらの内花被片が3つです。雄しべは6つ(長いのが3つ、短いのが3つ)、雌しべは1つで柱頭は3裂します。子房上位です。

 

 

⑯花は自家受粉しにくい性質です。

 花は両性花です。そして「自家不和合性」があります。

 開花初日には花粉を盛んに出しますが、その時は雌しべの先をほぼ閉じていて自分の花粉を受け付けないようにしています。2日目以降に雌しべの柱頭が3裂して受粉できるようになります。また、同花受粉しても花粉管が伸びず、自分の花粉では受精しないようにして近交弱勢を避けています。

 

⑰カタクリのポリネーターの昆虫は・・

 カタクリの受粉を助けるのはハナバチの仲間が主です。クマバチ、コマルハナバチ、マルハナバチ、ギフチョウ、ヒメギフチョウ、スジグロシロチョウなどです。

 

 

⑱開花と温度の関係は

 カタクリの花びらは虫たちが活動を始める10度cくらいから一部の個体で開き始めます。虫が活発に活動する17~20度cでほぼ全ての個体で花びらが反転します。ただし、曇天の場合には気温にかかわらず花びらは反転しにくいそうです。

 

 

⑲カタクリの花は1週間。

 カタクリの花の寿命は7~8日。でも開花中の天気や受粉したかどうかによって違うようです。花が開く時には内側が生長し、閉じる時は外側が生育します。これには植物ホルモンのオーキシンが関与しているそうです。

 

⑳花びらには蜜標があります。

 花色はギフチョウやハナバチの好みの紫桃色で赤紫色の蜜標で虫たちに蜜のありかを教えています。そしてこの蜜標はWのようなМのような・・(以前、早稲田VS明治とか言ってました)でも、この模様は個体ごとにみんな違うとのことです。指紋のようです。

そういえば葉の模様もみんな違うようです。

 

 

㉑花のつくりと昆虫の関係。

 花の雄しべ、雌しべを花よりも下に出して虫たちの止まり場所を確保しています。雌しべや雄しべに止まらせることによって花粉が確実に虫の腹部に付くようにしている。しかも雄しべには長いのと短いのが3本ずつあって、花粉が虫に付く面積を大きくしています。

 

 

㉒カタクリの花と紫外線対策。

 カタクリの花色はベンジンテストでは変化はなく、アンモニアテストで緑色に変化し、塩酸テストでは桃色を呈するのでフラボノイド系色素とアントシアニンで発色しているそうです。そして、雄しべ、雌しべ、花びらは紫外線をよく吸収しています。

 

 

㉓種子にはあるエライオソームがついてます。

 カタクリのタネの先には「エライオソーム」がついています。エライオソームには脂肪酸や高級炭水化物が多く、アリの好物です。アリによって巣まで運ばれてエライオソームはアリの食料になり、タネはアリの巣の近辺に散布されることになります。このアリは、アシナガアリ、アズマオオズアカアリ、クロヤマアリ、トゲアリ、トビイロケアリなどだそうです。

 

㉔種子散布にはアリが一助を担います。
 カタクリの種子のエライオソームとアリ散布の関係は1998年99年に金沢大学の理学部の大河原先生の報告書に細かく記載されています。北海道と金沢での調査結果がありますが、そこにいる蟻の種類によって多様な形態が見られます。

 

㉕果実は熟すとタネを飛ばします。

 出来る果実は蒴果です。カタクリの雌しべの子房の中には種子のもととなる胚珠が生育のよい個体では通常30数個あり、花が終わると莢(植物学上は蒴果)が出来、受精の行われ具合によって莢の中に数個~30数個の種子が出来ます。蒴果は熟すと裂けて種子を飛ばします。

 

㉖カタクラにはサビ病という病気が多いようで、葉の裏に橙色の小さい斑点が出来ます。

 

㉗カタクラの花には変種もあります。白い花が咲くものは数万株に一つと言われるものと、いわゆるアルビノ種の白花があるそうです。

 また、花びらが7枚や8枚のものがあり、八重咲とされます。

 葉に斑のない無紋のものがあります。通常はアントシアニンによる紫色の紋が入りますが、それの無いものがあります。

 

 

㉘園芸種もあります。ピンク色の花の「ピンク・パーフェクション」や白花のものも作られているようです。

 

㉙日本以外のカタクリでは

☆「エリスロニウム・アメリカナム」は茎が匍匐して横に広がり黄色花、葯は褐色~黄色で

   1輪咲かせます。

☆「エリスロニウム・カリフォルニウム」はカリフォルニアの産で花は白~クリーム色で茎

  に1~数輪咲きます。

☆「エリスロニウム・トゥオルムネンセ」はカリフォルニアの中部の地方名で濃い黄色。1

  茎に数輪咲きます。

☆「エリスロニウム・ヘンダーソニー」は北米で花は藤色、葯は茶色。

☆「エリスロニウム・デンスーカニス」はヨーロッパ。花は赤~紫色で濃淡も多様。葯は黄

  色葉には白~赤褐色の模様が入ります。

 

 

㉚田中澄江さんの花百では奥多摩の「御前山」です。新花百では「三毳山」です。