隆臣も寝かしつけてから、臣が先に風呂に入った。
風呂から出ると、リビングのソファーで隆二がグラスを傾けている。
濡れた髪をバスタオルでがしがし拭きながら、臣は冷えた缶ビールのプルトップを開け、
隆二が手にした瓶に目を向けた。
「お前、明日オフなの?そんなキツい酒飲んで…」
「夜中に音録りだから平気だよ」
「電子タバコも酒もほどほどにな、喉に良くねぇぞ」
「タバコ?…俺、吸ってたっけ?」
「ウソ…覚えてないの?」
「あ〜…吸ってたかもね」
臣は裸足でスタスタと歩いてきて、ソファーにどかっと腰掛けた。
隣に隆二の顔がある。
「あの絵の毒気にやられて、そうなったのならさ、早めに処分しろよな」
「うん、考えとく」
「は⁉︎」
「また変な行動されたら、こっちはたまったもんじゃねぇよ」
「だな…」
「それと、俺のピアスさぁ、お前ほんとに知んない?」
隆二は何も答えずグラスの酒を一気に飲み干して、ニヤリと微笑み返した。
「何?今の意味深な笑みは」
「…ピアスなんて知んねぇ」
「そっか、ならもういい」
臣も缶ビールを一気飲みした。
「明日、りおの服とかさ、生活用品買いに行かなきゃ」
「おみ…」
「ん?」
隆二は臣を引き寄せ、その首にあるビューティーマークに吸いついた。
「ひゃ‼︎くすぐったいから、よせ!」
肩を竦ませ、身をよじる。
隆二は逃げようとする臣を更に引き寄せ、
耳元で低く囁いた。
「いいか、臣。よく聞け」
「お前のこのホクロも、なくなったピアスもなにもかも、お前の一部は俺のもんだ」
「…わかったな?」
どの口が言ったんだろう。
普段の隆二なら、到底口に出さないようなセリフを言ってのけた。
ふわっとウォッカの香りが臣を包み込む。
悪い気はしなかった。
けど…
妙な違和感も感じた。
「夕方の続きな…」
隆二の方から誘ってきた。
臣が髪に巻いてたバスタオルを剥ぎ取り、ソファーに押し倒した。
「やっぱ俺のピアス隠したのって…」
「この期に及んで、野暮なこと聞くな」
「…しねぇのか?」
「ん?する」
「素直な臣って…たまんねぇな」
隆二が臣の上に乗っかってきた。
臣のボクサーパンツに手をかけた。
なんか…
新しいものが生まれそうな気がする…
子供とか、そういうのじゃなくて…
何かもっと別の…?
ワケもなく変な予感がしたが、
隆二の愛撫が始まると、そんな感情もすぐに消え去った。
「うん…っう…」
少し荒めの愛撫に声が漏れる。
気怠さと快感がさざ波のように押し寄せてきた。
「あ…」
絵のことは、明日考えよう。
今はただ、子供たちを起こさないように…
喘ぎ声を抑えるのがやっとだった。
完
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