先月の集会で、2月に入会したチカちゃんに「どこか行きたい谷ある?」と聞いたら、「垣外俣谷に行きたい」とのことだった。

 垣外俣谷は、台高・宮川支流の大和谷左岸に入る大きな谷だ。しかし、溯行記録は稀有で、「なんで、よりによってマイナーな谷なん?」と聞いてみたら、二又付近に石灰岩地形があるからとのことだった。

 チカちゃんは、ケイビングの会に所属しており、その世界では知る人ぞ知る存在。洞窟は決まって石灰岩地形に形成されるらしい。新たな洞窟開拓を目指して、各地の石灰岩地形を探索しているのだ。

 私たちとしても、垣外俣谷は『台高山脈の谷』で、取り零している谷の一つだったので予てから行きたいと思っていた。なので、さっそく6月4〜5日で計画を上げた。GWは雨でダメだったが、今年初の焚火山行。NGAYさん、コージの友人のMATさんもメンバーに加わり、総勢5名となった。





 初日は、570m右岸枝谷出合の幕営地までの行程と、短いので、8時にカラスキ谷公園に集合。軽く挨拶を交わした後、大和谷橋手前の駐車地までみんなで車を走らせる。

 9時前に駐車地を出発。大和谷橋から右手の林道に入り歩いて行くと、すぐにトンネルを潜る。手彫りで、入口上部の壁が崩壊していて、大きな岩が道に転がっていた。かなり以前のものだろうが、「直撃したら痛いですねー」とか言いながら通り過ぎた。



河原に降りる。



二又にて。

 やがて林道終点となり、踏み跡らしきものを辿ったが、すぐに不明瞭となったので、適当な斜面を下って河原に降りる。ちょうど、左岸から大きな枝谷が入るところで満水時にはバックウォーターになってるのだろうが、今はだだ広い河原だ。見上げると、両岸の樹林がキラキラ輝き、その上は青空が広がる。最高の焚火山行となりそうだ。

 二又まで、単調な河原が続く。沢というより、川というに相応しい、大きく開けた渓相。左右に堆積地が見られ、渡渉を繰り返しながら進んでいく。時々、チカちゃんが外れて見に行っているが、石灰岩でも探しているのだろう。1時間ほどで二又に到着。さっそく、座って休憩を入れる。




右俣に入って。


 右俣に入ると沢筋がひと段階狭くなる。しばらくは河原が続くが、やがて廊下となり、淵の先に小滝を掛ける。「癒ししか行かへんで!」と、宣言していたMATさんが先頭を切って、淵に浸かって攻めていく。見ているとリーチない人は苦労しそうなんで、待っている間に私とチカちゃんは左岸に垂らされたロープを使って巻いた。そこから小滝の饗宴となり、淵をへつり、シャワクラを各自楽しむ。


CS3m。



 左岸に枝谷を見送ると、CS3mで足止めを食らう。左岸をトラバースし、長めのスリングを灌木に回し掛けて頭へクライムダウンする。懸垂下降したという箇所はここのことだろう。その上に夫婦滝と名付けられた滝があるようたが、気付かぬまま通り過ぎた。前方に鋭鋒を見上げると、奥ノ二又。457と地形図に表記ある地点。


奥ノ二又。

 ここでもしばし休憩を入れる。左岸には崩壊地を見上げる。右俣を進むと、その影響からか、土砂が堆積した荒れたゴーロとなる。しかし、谷が大きく右に曲がると、両岸から樹林が覆い被さり、渓相が落ち着く。巨岩帯となり、巻き登って行くと、奥に15mが掛かっていた。左岸を落石に注意しながら高巻き、谷に戻ると、河原となっていた。右岸には滝を掛けて枝谷が入る。左岸は台地となり、石垣やガラスの破片などを見掛けた。小屋でもあったのだろう。ここが、今日の幕営地予定地だ。




幕営地にて。

 まだ、お昼になったばかりだが、この先、幕営適地はないとのことで、ザックを下ろす。各自、整地し、ツェルトやテントを広げる。まず、ビールを沢で冷やし、米を洗った後、ようやく薪集め。5名もいるんで、あっと言う間に、山ほどの薪が集まった。
 あまりに早いんで、私は辺りを散策、他のメンバーはうだうだしていたが、戻ってくると、小さな火を熾していた。藪蚊が寄ってきたとのこと。あまりに早いんで我慢していたが、15時になるや否や、沢からビールを取り出して乾杯!今回は酒が好きな面々。それからは、あっという間で、沢談義に花を咲かせている内に、いつしか日が暮れていた。最初にノックダウンしたのは私で、20時にシュラフに潜り込んだ。