2022年のGWは、4日と5日のみ休み。まず、4日はredeyeさんとツキ谷千尋滝登攀。本当は4月24日に予定していたのだが、南部の天気予報が悪るかったので、播州の七種滝に変更したのだった。




 ツキ谷千尋滝は、遥か以前、2005年8月に登攀したことがある。シブ&コージによる、二本目の大滝登攀。最初は北山川深瀬谷大滝だった。深瀬谷大滝は、右岸の樹林に逃げたので、ちゃんと登った大滝としては最初と言えるのかもしれない。ワンプッシュでは完登できず、2度目で完登を果たす。私は下山時に地蜂の大群に襲われ病院送りとなった思い出のある大滝。


 池原ダムに7時に集合し、ツキ谷に向かう。千尋滝へは探勝路がつけられており、それを利用し大滝前へ。大滝前に立ち、見上げると2人で挑んだ当時を思い出す。あの時の緊張感をredeyeさんも感じているのだろう。さっそく、雉撃ちに向かう。


1ピッチ目。

 まず最初はもちろん、redeyeさんがリード。順調にザイルを伸ばし、ブッシュのテラスでピッチを切る。川崎さんの初登ルートの1ピッチ目と2ピッチ目を繋いで一気に登った。



3ピッチ目。


4ピッチ目。

 3ピッチ目はredeyeさんに休憩してもらおうということで、コージがリード。カンテを回り込み、凹角を登るとちょっとしたテラスに出る。ここから滝身は草付きのハングとなり、初登ルートは右岸のブッシュを高巻く。4ピッチ目は私がリードし、最小限の高巻きで、大テラスに出る。


 残すは、最終ピッチのみ。ついでに枝谷の大滝も登 ろうなんて、楽勝ムードだったが、最大の核心が待っていた。最終ピッチは、redeyeさんにリードを委ね、フィナーレを飾ってもらうはずだった。

 しかし、ヌメったバンドからテラスへの乗り越しが悪かった。行きつ戻りつし、redeyeさんはホールドを探るが、なかなか踏ん切りがつかない。探っては戻る、そういうことを何度も繰り返すこと数十分…。相当、悪いのだろう、時間を見て、引き返すように声を掛けた。




5ピッチ目。

 コージがリードを代わるが、テラスへの乗り越しがやはり悪いようで、同じようにホールドを探っては戻りを繰り返している。2005年挑んだ当時より遥かに強くなっているコージでも、登れないとは…?後で分かったが、キーとなるホールドやスタンスが飛沫でヌメっていたようだ。コージの姿をしばらく眺めて、これは無理だと思い、引き返すように声を掛けた。しかし、コージは諦めることはせず、こちらを見向きもしない。
 やがて、苦し紛れか、壁に生えてた草を引き抜いて、そこをハンマーでほじくり始めた。
 一体、何を始めたんやら?と思っていたら、そこにハーケンを2枚重ね打ちした…!!!何と、そのハーケンを手掛かり・足掛かりにコージは見事、テラスへ乗り越したのだった。一旦、そのテラスでピッチを切り、私とredeyeさんを迎える。それにしても、コージのしぶとさとは!


6ピッチ目。


フォローする私。

 ここから、本当の最終ピッチ!は、redeyeさんに再びリードを委ねる。後はボルトに従って、頭を目指すだけ!ここは従来、アブミの架替えで登られてきたんだが、redeyeさんは、フリーで挑む。ボルトのセクションをフリーで慎重にこなした後、長いレスト。そして、意を決したようにムーブを起こし、最後は雄叫びを上げて登り切った!!集中した、いい登りだった。

 頭に3人集結すると、がっしり握手を交わす。私たちは再登となるが、仲間と成し遂げた完登はまた違った達成感がある。右岸を巻き下り、滝下に立った時には、夕闇が迫っていた。
 一時は敗退も頭が過ぎったが、コージの起死回生の突破力で核心を乗り越えることができた。そして、最後のredeyeさんによる渾身のフリー。川崎実さんに始まる、わらじの“登攀渓”の系譜が受け継がれているのを感じた千尋滝登攀だった。