林道駐車地にて。

 

 

 前夜発し、某道の駅でコージと酒宴。あわよくば花見酒と思ったが、少し早かった。目を覚めると一体ガスの中。

一昨日は紀伊半島南部は大雨で、今朝も路面が濡れている。三里大橋を渡ると、十津川の川面からもくもくと蒸気が沸いているのが見えた。その蒸気を穿つように太陽が顔を出している。対岸の道を走り、上切原の集落から上ノ谷林道に入った。

 林道は最初アスファルトだったが、やがて荒れた地道となる。見下ろす上ノ谷は河原で、干上がっている。護岸はコンクリートや石垣で

整備されていて、都市の河川のようだ。『大峰山脈の谷』の記録の時点ですでに堰堤だらけとある。今回は堰堤だらけの下流部はカットし、

158mと標高記載されれている、右岸枝沢出合から溯行する計画だ。

 やがて、林道が右岸から左岸へと渡った先で、地図を見て、見当付けていたポイントに到着。そのスペースに駐車し、適当に斜面を下って、沢床を目指す。すでにゴルジュの中なのか、どこも壁が立っていて、最後は数メートルの懸垂下降で降り立った。

 

降り立った地点にて。

 

 

二条滝?ハイブリッド堰堤。

 

 

右岸枝沢に掛る10m。

 

 

 目の前には、さっそく深緑色をした釜。釜の先に掛る滝は1mも満たないものだが、両岸手に負えない壁で、引き返さないと巻くに巻くことができない。たとえ巻いても、再び林道まで追い上げられそうだ・・・今日はそんなつもりで全然なかったが、右岸を胸まで浸かってへつる。その上のナメと小滝を越えると、5mの滝??滝の上に堰堤が乗っかった、コージに“ハイブリット堰堤”などと恰好良くネーミングされた滝?堰堤?が現れる。『大峰・・』では、「前方に二条になって落ちる滝をみて、カメラを出す。だが、よく見ると滝ではなく、実は堰堤の排水口から流れ落ちるもので、ガックリきた」などと、酷く書かれている。ここでゴルジュは一旦終えて、簡単に巻くと、地形図に158mと記された出合だった。

 右岸枝沢の方を覗くと、滝が掛るのが見える。「見に行ってくるから、待っていて」と、コージに声を掛けるが、コージもついてきた(ーー;)。

滝は10mほどで、両岸黒い壁が迫りゴルジュの様相を呈していた。あの先もちょっと気になる。

 

 

再びゴルジュとなり5m。

 

 

簾状3m。

 

 

 本谷に戻ると、こちらもゴルジュとなり、釜の先には5mが掛る。ホールド乏しく、直登は困難。しかし、両岸は、苔や草を纏った黒光りする壁。安全に巻くなら、ひき返し林道まで上がって大きく高巻けばいいのだろうが、それでは沢屋が廃る。右岸に弱点が見いだされ、そこから

トラバースできるだろう踏む。ザイル要らんと思ったが、コージが出すと言う。確かに出して正解だった。ハンマーを出し、氷面を進むような

カッティングしながらの際どいトラバース。もやしほどであるが、根っこが手掛かりとして掴むことができた時には、ほっとした。それにしても、こんなに悪いと思ってもみなかった・・・。

 小滝を越えると、細長い淵。ここも巻くに巻けない・・・奇声を上げながら胸まで浸かって淵を通過。初っ端からこんなに濡れるなんて・・・。谷間は深くて、日差しは全く入らない。淵を越えると、簾状4m。ここは左岸を簡単に巻くことができた。コージは左を直登できそうだと

言っていたが。4m上でゴルジュを抜け、河原となる。

 

 

作業道が渡る。

 

 

8m。

 

 淡々とした河原が続いてひと段落。左岸に壁を見上げると思いきや、法面だった。左岸側はコンクリートで護岸整備され、林道のガードレールが見える。やがて、林道から作業道なのか階段が降りてきて、鉄橋が渡る。鉄橋を潜ると、左岸から突如、大きな土管が顔を出す。左岸の枝沢の水が流されていた。谷の風情がすっかり出しなしになった。

 堰堤を越えると8m。雰囲気の良い滝だ。ここで谷は左に曲がり、林道は直進して行くので林道から離れていくと思ったのだが、谷は右へ蛇行し、再び林道を横に見ることになる。谷も平凡なので、林道に上がって歩くことにした。間もなくして、林道は終点となり、そこが二又だった。

 『大峰山脈の谷』では、吉岡さんらは何故だか本谷である左又でなく、右又を溯行している。堰堤があまりに多くて厭き厭きし、早く詰めれる右又にしたのだろうか・・・?

 私たちは冬場全然山歩きしてなかったので、足トレにということで今回、『大峰山脈の谷』から十津川上ノ谷をチョイスした。溯行の面白さなどはニの次。どうせゴーロばかりだろう、本谷の方が溯行距離が長くて足のトレーニングに良いし、どうせなら記録のない方がいいということで。しかし、まさか、あんなに楽しめるとは、思ってもみなかった。