大熊谷界隈の谷には数年前集中して通ったことがある。三滝谷だけ行きそびれたままだったが、

今回、ようやく訪ねる機会を得た。

 

 

三滝谷大滝。

 

 

 

 林道広場に駐車し、6時に歩き始める。すぐに車道は崩壊し、車では通行不能。

悪谷出合を見送り更に歩き続け、林道終点から大熊谷本谷に入谷する。ゴーロを

乗り越え、ちょっとした滝場を迎えると、左岸に大きな滝が掛かるのを見上げる。

ここが、目的の三滝谷だ。

 

三滝谷出合。

 

 

 出合はうず高く岩が積み重なっており、左岸には岩に埋もれるようにナメが続いている。

登って行くと、すぐにその大滝下に立つ。二段の大滝のようで、上段は分からないが下段だけでも

50mはゆうにありそうだ。(高度計測定で65mあった)。さっそく、高巻きとなるが、左岸は

嵓がたってあり得ない。右岸にルートを探ることになるが、

ルンゼから突破口を探るのが定石だろう。

 

 

下段滝の巻き。

 

 

 ルンゼを少し登ったところからトラバースしバンドに出るが、滝側へ更にトラバースしてみると、

ハングした壁に行き詰る。ここはダメだろうということで、もう一度ルンゼに引き返し、再度ルートを探ることに。

 

 ルンゼを更に登っていくと、もうここしかないでしょうというポイントを見付ける。さっきは、

攻めすぎたようだ。ちょとした岩場をこなし、バンドを辿って行くと、上手い具合に下段滝の頭へと導かれた。

頭に立つと、更に上段滝が聳え立っている。こちらもなかなか大きい。40m以上ありそうで、

二段で100m越える大滝だった。「登れるかな~」と、コージと話し合う。

 

 

 

大滝上段。

 

上段の高巻き。

 

 

 上段の高巻きは引き続き右岸となるが、コーナーがあり、それを登って行くことにした。

コージのリードでザイルを伸ばすが、傾斜があって、パワフルなモンキークライムとなった。

ドンピシャで大滝頭へ。関門の大滝を突破しやれやれと座り、

パンを齧って休憩していると、ふと、右岸に石積みがあるのを見付けた。

炭焼きだろうが、ザイルなど使わずにここまでこれるルートがあるのだろう。

 大滝上は、両岸の壁が未だ立って、薄暗い廊下となっていた。しかし、中にあるのは、小滝ばかりで

問題ない。

 

 

廊下内の小滝。

 

 

 廊下を抜けても小滝が相次いで掛かり、飽きさせない。再び両岸の壁が高くなると、6mの

先に20mが掛かる。左岸のルンゼから巻くが、脆い。コージはもっと上がりたそうにしていたが、

頭へとトラバースできそうなポイントを見付け行こうとすると、「ザイル出さなあかん!」と叫ぶ。

「要らんやろ?」と答え先に行こうとすると、プンプン怒るので、仕方なくザイルを出す。

得意不得意があるもんで、私なんかよう登れん、難しいところを突破できるのにと思う。

 

 

 

20m。

 

 

 20m上で、ひと段落かと思いきや、5m、4m、それにナメと滝は切れ目なく続く。それにどれも登って行ける

のが愉しい。6mで、ようやく河原となり、右岸にまたもや炭焼き窯跡を見る。はるか昔、こんな谷中で

生業を営んでいた人たちがいたという、事実に今更ながら感嘆する。

  

 河原を過ぎると、ふと前方に連段となった滝が掛かるのを見る。「おお!まだあるでぇ~!」。

前衛の4mを登ると、そこには二段30mが掛かっていた。左岸からあっさり巻くと、まだ連滝が続く。

詳しくはコージの溯行図を見てもらうとして、2、3mほどの小滝が二又までジャンジャン掛かる。

コージは、「同じような滝ばかりで飽きてくるわ~」と言うが、確かに大滝のインパクトが強いだけに、

そう思ってしまうのは仕方がない。

 

 

 

二段30m下段。

 

 

その上の連滝。

 

 

 

更に二又を左に採ると、黒光するハング滝を最後に、水切れとなる。そこで、左岸の尾根を詰めて、

下山予定のルートを目指す。以前、悪谷本谷を溯行した時に下山に使ったルートで、

悪谷二又へと降り着く尾根がある。

 

 

詰めにて。

 

 ひと登りすると、稜線から悪谷左又のガレ地帯を見下ろすことができ、目的の尾根に乗ったことを

確認。後は、以前使ったルートを辿ればいいだけなのだが、枝尾根が複雑に派生しており、

その見極めに手間取った。すっかり葉が生い茂り、展望が効かないのも、

ルーファイを難しくした。行ったり来たり、降ったり登り返したりし、

ようやく正解の尾根に辿り着く。その尾根を下って行くと、やがて植林となる。

いよいよというところで、ナルい斜面を見付けて下って行くと、上手い具合に左又に降りることができた。

 

 

 

悪谷左又。

 

 

 ゴルジュ出口までは、ガレた谷中を下って行くだけ。ゴルジュからはこれも以前下山時に使ったことのある、

左岸の仕事道を利用しようと思っていた。しかし、当時も不明瞭な箇所があって、ちゃんと辿れるかどうか・・?

 

 ゴルジュの出口には、番人のように今も桂の大木が佇んでいた。それを目印に石垣を探す。

その道は、山腹をトラバースし、ゴルジュを大きく高巻いている。朽ちているがトラロープも張ってあり親切だ。

しかしながら、予期した通り、不意に道を見失ってしまう。右往左往しても、見付けることができないので、

谷に下ることに。降りたところは、ちょうど巨大CSの上だった。

 

 

左岸の仕事道をしばらく利用。

 

 

 

ゴルジュ内へ。

 

 

 

 巨大CSは容易に通過するが、その先で谷中を下ることができずに、右岸を巻かされた。

ここもよく滑る照葉樹の落葉が斜面を覆っていて、気を遣った。谷に戻ると、そこはゴルジュ出口。

淡々と続く河原を歩いていると、しとしとと雨が降り出した。

 

 

 大熊谷三滝谷。知る人は少ないが、大滝に、連滝に、楽しめる谷だ。私たちは以前行ったので、巻いたが、

悪谷下降と組み合わせると充実する。(悪谷ゴルジュは短いので、それだけの為に訪れるのは、

勿体ないので、三滝谷との組み合わせを推奨)。