先日行ったヌタハラ谷で、溯行図を書き留めていた

手帳をコージがどうも忘れてしまったらしい。色んな思い出の詰まった手帳で、

どうしても取りに行きたい!とのことで、蓮川の谷で計画。

 

 川崎実著・『秘瀑』に収録されている、宮ノ谷西股(高滝谷)右又の滝を

まだ見に行ってないので行くことにしてみた。

 

 

高滝にて。

 

 

 宮ノ谷出合を見送り、蓮小学校跡を越え、さらに林道を走り、ヌタハラ谷の駐車場所に行く。

降りて周囲を探してみるが、見付からない・・・・。忘れたのはきっとそこだろうということで、

今度は水浴びをした河原に降りてみる。流されたことを想定し、堰堤まで下ってみたが、

コージの大切な手帳は結局見付からなかった。それにしても一体どこに・・・。

いつも沢中でマメに溯行図を付けてくれていて、記録を書く時には大変役立っていた。

 

 落胆するコージをヨソにさっさと引き返し、宮ノ谷林道終点へ。まだ、車は一台もなく

私たちが一番乗りだった。準備をしていると、次々に車がやってきたので、急いて出発。

二又まで登山道を歩く。随分整備されていたが、やはり高滝の巻きは嫌らしかった。

しばし二又で休憩し、右又に入る。

 

 

ナメと魚止滝。

 

 

 

 河原を進むと、すぐにナメが掛かり、その先に15m。『秘瀑』にも収録されている魚止滝だ。

ナメを登って近づいていくと、「んんっ?」。右岸の斜面にイノシシが、と一瞬思ったが、カモシカで

私達に気付くと慌てて斜面を駆け下りて行った。「カモシカや!」と叫ぶが、

コージが顏を上げた時はすでに遅しで、どこかに消え去った。「おらへんやんか」と文句を言う。

 

 右側を登って魚止滝を越えると、また河原が続く。やがて左岸にナメの掛かる枝沢が出合う。

一瞬、二又に見えるが読図すれば気付く。ゴーロとなり、どんどん登って行くが、奥ノ二又は意外に

遠く感じる。「まだかな~」と思う頃、ようやく到着。右又にはさっそく大きな滝が掛かるのが遠望できた。

 

 

ナメの先に奥ノ右又大滝。

 

 

「高滝谷右又に入りさらにその奥の左又に入ると、遥かに高い岩壁から落下する大滝に行く手を阻まれる」

『秘瀑』88ページ 123宮ノ谷西股(高滝谷)右又大滝より

 

 『秘瀑』では、奥の二又で左又に入っている。しかし、右又に見えるその滝もなかなか大きそうなので、

下まで見に行ってみることにする。コージは渋ったが、もう何度も来ることないんだからと、説得する。

 

 奥の右又に入り、ナメを登って行くと、その大滝が掛かっていた。50mはあるだろう。下部はハングしており、

上部はナメとなって続いている。両岸は壁が立ってなかなか悪そうだ。

真下からでは全貌が見れないので、左岸の斜面に上がって撮影してみたが、

灌木に阻まれて、いい写真が撮れなかった。その先が気になるが、引き返し奥の二又に戻る。

川崎さんは、奥の左又に入り、それらの写真を撮っているはずだった。しかし、結論を言うと、

川崎さんが撮影した大滝は、奥の右又に掛かる大滝で、『秘瀑』の文章も概念図も

誤りだった。

 

 

奥の右又大滝。

 

 

 

 無論そのことは知らず、『秘瀑』を信じて、引き返し奥の左又に入る。

ゴーロを登って行くと、連滝となって滝が続いているのが見える。「さあて、待ちに待った大滝か?」。

 

 まず、20mほどのナメ~斜滝が続き中段まで登って行く。そこから先はヌメったシャワクラとなりそうだ。

ラバーとの相性が悪そうなので、左の壁をコージのリードで頭まで伸ばす。最初のワンムーブが悪く、

私はできなかったので、ザイル掴んでゴボウした。頭に立つと、連滝となってまだまだ続いていた。

これがあの大滝なのだろうか?訝しく思うが、まだまだ滝は続いていた。

 

奥の左又の連滝。

 

 

 

10mほどのナメを登ると、更に傾斜の増した滝となる。黒光りする、ホールド乏しい滝だ。

登れそうにないので、ここから高巻くことにする。右岸に上がり尾根状地形を登って行くと

獣か、先人によるものか、微かにトラバースする踏み跡を見付けたので辿って行く。

 トラバースし、谷側に寄って行くと、三段の連滝となって掛かっているのが眺めることができた。

全部で50mほどあるだろう。上段はハングとなっていたが、全体的にナメっていて細く、迫力に欠けていた。

 

 

奥の左又大滝下段。

 

 

奥の左又大滝中段~上段遠望。

 

 ルンゼからクライムダウンし、上段滝を見に行ってみる。記憶は定かではないが、

こんな感じの滝だったのかな?右手がこなせそうだったが、ザイル出すことになりそうなので、

戻って再び右岸を巻く。微かに感じとれる踏み跡を辿って上段頭へと抜けた・・・。

川崎さんの記述では大分悪い巻きだと書いていたが、ザイルの必要などなかった。

私たちの技術が高くなったのか、それとも川崎さんも年齢が年齢だったし・・などと考えてみたが、

納得いかず、結局これ以上の滝は出てくることなく、奥の左又を詰めて稜線に出ることになった。

 

 帰宅し、私たちが撮影した写真と『秘瀑』の写真とを検証したところ、奥の右又に掛かっていた大滝が、

それだということが判明した。

 

奥の左又上段。

 

 

 

 大滝上は壁も消えて、なだらかな斜面が谷へ下りてくる。小滝が断続的に出てくるが、

基本ゴーロの登高だ。もう大滝などで出てきそうにない。いい時間になったので、

弁当を開けてランチタイム。この辺りまで標高を上げると、まだ芽吹いておらず、

寒々とした枝先をみせている。しかし、枝先に遊ぶ小鳥は、日差しを一杯浴びて愉しそうだった。

 

 

奥の左又・奥奥の右又。

 

 

 

 出発すると、さらに二又となり、ナメの続く右又を選ぶ。右又に入るとナメがしばらく歓待してくれるが、

詰めは時間の問題。やがて、左岸の尾根に上って稜線を目指す。ヌタハラ谷の疲れがあったのか、

休み休み登って、台高主稜に出た。太いブナの茂る台高らしい稜線だった。

 霧降山まで台高主稜を北上し、霧降山から東に派生する尾根に進む。

近年の『山と高原地図』では登山道記載があり整備されたらしい。私たちはまだ歩いたことがなかった。

 

 

台高主稜。

 

 

 1222mピークまでの稜線は伐採跡なのか、開けて展望がよい。地形図には点線記載があり、

宮ノ谷二又から道が通じていたようである。

1222mから先はやや東向きに変え、なおも忠実に尾根筋を辿る。

やがて、痩せ尾根になりひと登りすると、コブシ平という場所へ、。地形図には記載のないピーク。

ワイヤーや大きな滑車があったので、搬出基地があったのだろう。しばし、ここでも休憩を入れる。

深い緑の皺を寄せている奥ノ平谷が見下ろせて、厳しい渓相が伺い知れた。

 

下山にて。

 

 

 テーピングも随所にあり、ルーファイも要らぬ、お気楽下山だったのだが、

林道への分岐をどうも見落としたらしい。鹿のフェンスに出たところで、藪が深くなり外したなと

思ったが、戻るのも面倒なので、目に入ったモノレールを辿って林道に出ることにした。

 

 モノレールと言えば、お決まりの直滑降。迷わぬことはないが、地形を見ない

最短距離の下降で、足場が悪い。しかもガレ場を通っており、ガラガラ下りとなった。

最後の最後に不快極まりない下山だった。

 

 

最後の最後に・・・。

 

 

 奥の右又に見た大滝、そしてその先が気になる・・。

しかし、飽きたんで、当分は蓮川の谷には行きそうにない。(贅沢ものがっ!と怒られそうだ。。)