昨年の秋、東ノ川以来の大台ケ原。GWのせいか、私たちが駐車場に到着した時にはすでに多くの車が止まっていた。しかし、国道169号線であったあの土砂崩れの影響の為にか、例年より些か少ないような気がする。
 そそくさと準備を済まして、監視員が活動する前に周遊路を撮って尾鷲辻から尾鷲道に入る。昨年、二ノ俣谷・黒滝を登った時に通った道だが、ガスも掛かっていないと言うのに堂倉山付近でやはり道を外してしまう。戻るのが面倒なので、そのまま稜線をニノ俣谷源頭まで縦走する。
 源頭で少し休憩の後、稜線から離れて緩やかな窪地となっているニノ俣谷源流を下っていく。すぐに水が流れ出して辺りにはバイケイソウやトリカブトが芽吹いていて、春の訪れを実感する。ニノ俣谷は黒滝まで幾つかの小滝があるものの大した悪場もなく順調に下っていく。黒滝の巻き下りにはややルートファインディングがいって、右岸の急な枝尾根を立ち木に捉まりながら降りていく。熊笹が深くなってくると、右手に黒滝の雄姿が木々の合間から見られ滝下には間もなく到着する。
 大岩の上に腰掛けて、黒滝を眺めながらコーヒーを沸かして昼ご飯にする。「やっぱり大滝はいいなぁ」と思いながらコンビニで買った大好きなパンにパクつく。黒滝から下流も両側に岩壁が立ち、谷は曲折しながら急激に下っていて、巨岩に埋もれた渓相は物騒な感じ。しかし、行き止まりかと思えても、近づいてみると、大岩の合間を縫って下っていくことができて、林道までは結局1回の懸垂下降で済んだが、これも振り返ってみると、クライムダウンが十分可能だった。
 大きな枝沢が左岸から入ってくるところまで荒れた川原を歩いて、そこからは林道に這い上がった。しばらく歩くと、倒木に塞がれた向うに営林宿舎があって、今は使う者がいないのか、相当荒れ荒んでいたが、傍にあった桜はハラハラと花びらを落としていて、昔を変わらない艶やかな姿を山間に残していた。
そのまま林道を歩いて、光谷出合に向かったが、何箇所か山ヌケなどで崩壊していて巻き上がらなければならなかった。手彫りのトンネルを二つ潜ると、光澤橋までは直だったが、橋周辺は切り立っていて容易に谷に降りれそうにないので、もうちょっと林道を歩いていくと、枝沢があってそこを下って行けそうだったが、道は光谷に向かって続いているので、そのまましばらく林道を辿ることにした。林道から見る谷は荒れていて、正直林道を歩いて正解だと思った。堰堤上で、ちょうどいい台地を見付けたので、そこで初日はテントを張ることにした。