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(上)出合左又に掛かる滝の直登。
(下)銚子滝の頭へ高度感満点のクライミング

コージが古川の岩屋谷に行きたいと言うので、以前からこの谷に行くことにしていて、集会の時にこの谷の計画を挙げると珍しくS岡さんが行きたいと名乗りを挙げた。後で聞いたところ、白川又川の岩屋谷と勘違いしていたらしい(^^;)。それでもS岡さんは一緒に行ってくれると言うので、二人ともウキウキ気分。S岡さんとはWの同期で歳も近いので心易い。古川の岩屋谷は数年前、私たちが沢を始めて間もない頃、WのOBの方に連れてもらったことがあったが、その時、銚子滝を登り掛けてやめた所があって、コージはそこが気になっているらしかった。私は、集会の時、K崎さんに「行って欲しい」と言われた25m滝の高巻きルートがあるので、そこを探ってみたいと思っていた。
 前日、ロックオンでヨレヨレになるまで登った後、バイクで自宅にやってきたS岡さんを拾って池原公園に向う。トイレ前にテントを張って軽く呑んだ後、12時前には早々にテントに入って眠りに就いた。
 夜半にポツポツと雨がテントを打つ音で目を覚ました。朝には止んでくれるだろうと、そのまま再び眠りに入ったのだが、5時半頃起きると、相変わらず、雨がシトシト、強くもないが、しかし、一向に止みそうな気配がない調子でずっと降り続いていた。
 テントの中から顔を出すと、飛び入り参加してきたK氏が車から降りて来て、「どうするん?」と聞いてくる。K氏もあまり乗り気ではないらしい。コージは体調が今一つ、私は昨日のボルダリングで痛めた左太股が治っていない。正直、コージも私もすっかり中止気分だったが、S岡さんに聞いてみると、どうも行きたくて仕方がないらしい(^^;)。どんよりした雨雲を眺めながらトイレの軒下でしばらく迷っていたが、これだけ人数が揃っていることだし、せっかく池原まで来たのだから行こう、ということで重い腰を上げて出発することにした。
 425号線を30分ほど車で走ると、不動橋に到着。橋の上から見上げる岩屋谷はなかなかの迫力で、出合に30mの不動滝、その上には両側に嵓を張り巡らした銚子滝への連滝が延々と続いている。「岩屋」という谷だけある。右岸のガレを降って、ガレの堆積した出合に降り立つ。不動滝を見上げると、左岸の凹角部を登り樹林帯を伝って頭に出れなくもない。確か、ここを登ったという話は聞いたことがない。「狙い目かも?」なんて思うが、しかし、雨の中、そのルートを試す気にもなれず、「以前来た時は、左叉の7m滝を直登したっけ」と思い出す。コージが車の中に忘れたハンマーを取りに戻ってくると、ザイルを出して、左叉に掛かるこの滝を右から登れそうということで登り始める。しかし、「滑りそうだ」と言って降りてきて、以前と同じように結局、左側から取り付いて右へトラバースして登った。
 左叉を回り込んで行くと連滝となった斜滝が現れる。「確かここはK崎さんは直登していたなぁ」とルートを探っていると、K氏が左岸から巻き始める。「もうちょっとルートを探らせてよー」と思うが、ずんずん登って行ってしまうので、付いて行くことにする。「もっと際をトラバースできるのでは?」と思ったが、モチも上がらず「まぁ、いいか」と思ってしまう。傾斜があるので、一応ザイルを出してK氏リードでリッジを右から回り込むようにして登って行くと、何と不動滝右岸の岩場上に出た。ここからダム湖や停めた車がよく見える。岩場から懸垂下降で一旦、不動滝上段に降りて、滝身をちょっと登って頭へと登り出た。斜滝の直登ルートが探れなかったのは心残りだが、これはこれで何て面白いルートファインディングだと思った。
 ナメや小滝をやり過ごすと、右岸から枝沢が入る所に登れそうに見えない15mほどの滝が現れる。以前はこの滝を左岸から巻いたが、K崎さんは右岸から巻いているらしい。「どうしようかなぁ」と思ったが、K崎さんは右岸から巻いた後、谷を渡って結局その上は左岸から巻いているので、以前と同じように左岸から巻くことにした。
 ここは私がリードをしたが、この上にも滝が続いていて、結構、上まで登らされてからトラバースすることになってしまった。踏み跡を辿るだけの何と冴えない高巻き。もう面倒なので銚子滝まで巻いてしまおうと思ったが、俄か冒険心が芽生えたのか、コージが降りてみようというのでゴルジュの途中に懸垂下降で降りた。そこは上段滝の下で、シャワーでもしかしたら登れたかもしれないが、ここはザイルを張ったまま流れを右岸に渡り、ハングした岩間を小ネズミのように潜り抜けて越えた。小さな私とS岡さんは岩間に出来た小さな穴を潜り抜けることができたが、コージとK氏は体が通らないらしくて、上からザイルを出すことになった。K氏はユマール、コージは意味不明だが、ユマールを使いながらあくまでフリーで登ってきた。大抵は損なのだが、たまには小さくて特することもあるもんだ。
 ゴルジュを抜けると、その上に連段となった銚子滝が現れた。水量はないが、両側には岩壁を張り巡らしていて、なかなかスケールがある。ここまで随分時間が掛かっていてお昼を回っていたので、昼食にすることにした。
 この銚子滝はWのOBの方に連れられて来た時は、滝の右壁を登り掛けたのだが、結局、悪そうなのか止めることになって左岸を大きく巻いたのだった。コージはその止めた所を登りたかったらしい。他にも右岸を巻いて滝の中段をトラバースする高巻きルートもあるらしくて、カップ麺を食べながら銚子滝を色々と眺める。コージに「どうするん?」と聞いてみると、溯行中に風邪をこじらせてしまったのか、熱があると言って、今回は登るのは止めようということになった。
 岩壁の基部に沿って左岸を巻き、適当な高度を上げた後、樹林帯滝身へとトラバースしていくと、落ち口の右手に出た。上部には岩場があって、前来た時はその岩場を直上したのだが、バンドを頭へとトラバース出来そうになくもない。ここはK氏が果敢にリードし、バンドを滝身へとトラバースした後、一旦、滝身にクライムダウン、そして、見事、銚子滝頭を直登した。背後にはダムの湖面が広がる素晴らしいロケーションで、K氏のナイス・ルートファインディングだった。
 その上には釜を持った6mの滝。K氏はこれで勢い付いたのか、釜を渡り、ショルダーで直登だとジェスチャーしている。S岡さんも登りたそうにしていたが、コージと私はもう濡れる気分ではなかったので、悪いと思ったが、左岸のリッジから高巻くことにした。ここはS岡さんがリードし、リッジから小尾根に出て、谷に沿って斜面を25m滝の前までトラバースした。 
 25m滝は私が探りたいと思っていたルートのある場所だったが、もう3時を回っていたし、コージの体調もますます悪くなっているようなので、沢床に降りずにそのまま斜面を上がって左岸尾根に登り出て、仕事道にて下山することにした。仕事道に出るまでに一度ザイルを出したが、踏み跡を辿って行くと無事に仕事道に出た。仕事道は時々不明瞭になるが、小沢を左右しながら出合へと下って行っているので、分からなければ、この小沢を辿れば良い。
 降りてきて、スパッツを外してみると、丸々と太ったヒルがコロリと落ちてきた。見ると、右足の脹脛をやられていた。今年初である。他の人は付かれていても無害だったらしい。久々のヒルの洗礼にいよいよ本格的な沢シーズン到来を感じた。それにしても、私もコージもモチの上がらない溯行で、今度はコンデイションのいい時にアグレッシブに登りに行きたいものだ。内容的には中途半端だったが、色々と発見があって、得るところの多い溯行だったように思う。