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 昨日は、ゴルジュ13さんと三人で東の川・中の滝に登りに行った。中の滝には三年前(2002年)に大先輩のNさんのお誘いで登りに行ったことがあった。メンバーには今、関西のフリークライミング界でメキメキ頭角を表しているN井夫妻なんかも参加していて、皆んな初めての「大滝登攀」に高ぶった気持ちで臨んだのを憶えている。しかし、その時は時間などの問題から上段部分の登攀は樹林帯を高巻いてしまって頭に出ないで終わり、ちゃんと最後まで登っておきたいという気持ちが心の片隅に残っていた。気分はフリーへと向かいつつあったが、その心残りがゴルジュ13さんからの声掛けと共に不意に大自然の中に再び呼び出されたのだった。
 上段までは登ったことがあるので、そこまではウォーミングアップという感じ。最高の秋空に、現在沢登りの世界をリードしているゴルさんの話を聞きながら、登るなんてすこぶる気持ちいい。以前と比べて、残置がかなり回収されているようで、ルートはすっきりしていて、「カムでプロテクションを取れるような所には残置をしてはならない」「カムを持って行くのはクライマーとしてのモラルだ」という話をゴルさんから聞く。
 ゴルさんにお会いしてみると、思ったほど太っていないなぁ、とい第一印象。しかし、体重を聞いてみると、なんと90キロ!私なんかはヘルメットの上に乗せてショルダーができるらしい。有り余るエネルギーの塊という感じで、内に秘めた目の光を持っている人だと思った。
 さて、上段部の登攀。まずゴルさんが中段上の水流が三つに分かれる小滝部分をリード。これまでと同じ感じで左岸を登る。その次はコージがリードで、始めリングボルトのある凹角部を登ろうとしたがトラバースが悪そうなんで水流部を全身シャワーを浴びたクライミングで突破する。このピッチは私が回収担当のはずだが、痩せの私が長い間シャワーを浴びて回収するのは可愛そうだというゴルさんの気遣いで、変則的に私はセカンドで登らせてもらう。それでも登り切った時はずぶ濡れだった。ルンゼ状を立ち木のある場所まで登り、次は私のピッチ。
 バンドを左上し、ブッシュの生えた小尾根状を草を掴んだり、浮石を上から押さえつけて騙し騙し登っていく私の好きな種類のクライミングだ。ワクワクしてくる。しかし、フォールに持ちこたえてくれるがどうか疑問のあるブッシュばかりだったので、慎重にジワジワ高度を上げて行く。草つきバントに出、滝身にトラバース出きるか伺うが、左手の壁は悪そうだったので、戻って小尾根状を再び上昇し、その上のバンドに出る。頭上には丈夫な針葉樹が生えているが、目の前にはハング気味の壁が立ち塞がっている。その壁にハーケンを二本決めた後、左手に回りこめるかとトラバースしてみるが、登れなくもないが悪そうな草付き。一層、目の前のハングを思い切って登ってしまえば、一番最速に立ち木に達することができるが、岩が脆かったので、行く勇気が出ない。そこで、一番確実だということで、バンドを右にトラバースし、そこでピッチを切った。ちょっと逃げてしまったかなぁ?もっと攻撃的に突っ込んで行けば良かったなと後で振り返って思った。
 その後は、ゴルさんがリードを受け継いで、一気に頭直下のテラスまでザイルを伸ばす。最後は、コージのリードで、中の滝の頭へと踊り出た。後から見てみると、上段部は『日本の渓谷97』のN瀬さんのラインをほぼ辿ったようで、悪い人工登攀の混じる「わらじの会ルート」は私の辿った所をもうちょっと左手の壁を登るようで、ゴルさんがそこに残置のハーケンを見付けていた。それを見過ごしたのは残念だったが、頭に出れたのは爽快だった。滝の頭から東の川を見下ろし、やはりプラチックでできた人工の壁を登るより、大自然の中の壁を登る方がすっど楽しいと実感したのだった。
 下山後は大先輩のNさんを呼んで大和高田の居酒屋で打ち上げ。ゴルさんのパソコンを見ながら、台湾や称名・剣沢大滝などの話を聞く。M木さんから台湾の沢はすごいと幾度となく聞いたが、A島さんが編集したという記録を見て、台湾の渓谷のすごさに唖然。スケールが半端じゃない。そりゃあ、名の知れた沢屋たちがあそこまで他所の国の谷に夢中になるのが分かる。今になってそれを知った自分の疎さ。短い時間だったが、沢の世界の奥深さをつぐづく実感したのだった。
 自分たちはまだ沢の世界の初っ端にしかいない。しかし、周りに変に影響されて、先を争い慌てて谷を追い駆けるのではなく、あくまで自分たちのペースで、自分たちの求める沢登りをしていきたいとも思った。