……と、乙女チックな(そうか?)出だしからはじめてみましたが、書いているのはいつものオッサンです。山麓です。
アメリカの超人気オーディション番組『アメリカン・アイドル』、そのシーズン8で準優勝を飾ったアダム・ランバートのデビューアルバムを今ごろとはいえ紹介いたしましょう。
この番組を見ていると、アメリカのエンターテインメント界の底力に脅威すら覚えます。この番組、毎年やっているのに毎年毎年「まだこんな実力者がいたのか!」と言いたくなるほど凄いシンガーが出てきます。男女平等に審査されるのも気持ちがいいし(日本だったら女性のみ男性のみの番組しか成り立たないでしょう)見た目がイマイチでも、歌唱力とキャラクターで人気をもぎ取っていく参加者がいたりします。音楽業界の低迷が世界基準で見てもとりわけ激しい日本で、なぜこの番組フォーマットをやらんのか、それこそ『ジャパニーズ・アイドル』でいいからやればいいじゃないか。実際番組フォーマット(そもそも『アメリカン・アイドル』自体、イギリスの『Pop Idol』のアメリカ版だったりするのですが)を買って自国版を成功させている国がたくさんあるわけですし。そうか、『ジャパニーズ・アイドル』というタイトルが格好悪いというのだな、じゃあ『スター誕生!』だったらどうだ? ん? 昔あったぞ、って?
さて『アメリカン・アイドル』の話に戻ります。一昨年のシーズン8で、最初から格の違いを見せてくれた候補者が彼アダム・ランバートでした。歌唱力が抜群で、特にロックナンバーを歌わせたら右に出る者がいません。僕が個人的に応援していた候補者は別だったのですが、アダムが歌うと「悔しいが実力は認めざるを得ないよなぁ……」と、こちらの雑念をねじ伏せてしまうほどに力強い歌声を聴かせてくれたものです。
これですよ。凄い。
決勝戦では、『近所のお兄ちゃん』的ルックスのクリス・アレンに敗れ準決勝に終わったものの、良い意味でアクの強いファッションセンス(ゴス)ともども、強烈な印象を残してくれました。
結果発表の日、会場全部がアダムのファンみたいな状況で異様に盛り上がる中、天の邪鬼と化したワタクシは「クリス頑張れ! アダム負けろー! ガハハ」などとワイングラス片手に酷いことを言いながら見守っておったのですが、本当にアダムが負けてしまったので仰天、「なんでアダム負けてしもたん……?」と節子に変身してしきりと妻に問うて気持ち悪がられました。あれですか、ツンデレですか?
そのアダムのデビュー盤が、こちら。
For Your Entertainment(2009)
これが痛快無比のロックアルバム「やったぜ!」みたいな内容だったら本当に良かったのですが……意外にもダンサンブルな楽曲中心のポップアルバムで、やや肩すかしをくらった気分でありました。もちろん、彼の変幻自在の歌唱力は健在とはいえ、僕は「もっとロックをくれ」と不満顔をしていたものです。発売当時は。
ところが発売から一年数ヶ月経ったものの、現在、まだ僕はこれをちょくちょく聴いています。あらかた楽曲も覚えてしまっていました。ということはつまり、気に入っているということですな。ヤダ、やっぱりツンデレなのかしら。だからオッサンが何度も書くんじゃないよこういうことを。
恐るべき衝撃! 聴けば即、壁を突き破って隣の家族にコンニチハ、みたいなアルバムでは決してありませんが、長く聴ける良作であると思います。