ことり | a frog in November

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11月のかえる

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小川洋子の,ことり,を読了した.
本1冊を読み終えたのは,数年ぶりのような気がする.気力が充実していないので,だいたい途中で飽きる.

ことり,は飽きずに読めた.
小川さんの小説は,妊娠カレンダー,やさしい訴え,など,読んでいる方だと思うが,言葉の選び方の美意識が研ぎすまされていて,感心させられる.ストーリーの起伏などどうでもいいと思ってしまう.実際,ことり,は,小鳥の言葉しか話せない兄を持つ小鳥好きの小父さんが亡くなるまでを,淡々と書き綴った長編だ.12年ぶりの書き下ろしだそうだが,全く錆びていない.こういう作品にいまでも出会えるのは幸せなことだ.

それにしても,小川さんと言えば,映画にもなった本屋大賞の,博士の愛した数式,の著者として一般には認識されていて,これしか知らない人も多いと思うのだが,あれは,ゴミだ.ゴミは言い過ぎだとしても,極めて小川さんらしくない小説.本人が面白がって書いたのか,ミーハーな編集者にそそのかされたのか,未だに疑問である.