サディスティックそば | 「賛否両論 笠原将弘のオールナイトニッポン」オフィシャルブログ by Ameba

サディスティックそば

先日、仕事で名古屋に行った。
打ち合わせ等々無事終わり、仕事先の方々とみんなでランチになった。
世界的パティシエの辻口さんも同席することになった。
隠れ家的なそば屋があるんですよ。
仕事先の方の案内で、一行は昼下がりの住宅街に足を踏み入れた。
そのそば屋は住宅街の中に、ひっそりと佇んでいた。看板が無ければ、普通の民家だ。
いい感じじゃないですか!辻口さんも興奮気味に言った。
私も初めてなんですけどね、前から気になってたんですよ、イヒヒ!!
店を予約したIさんがドヤ顔で笑った。
期待と興奮で一行はそば屋の玄関を開けた。
靴のまま御上がりください。
木の札が立て掛けてあった。一行はそのまま店内に入ろうとすると、着物を着た女将らしき人物がいきなりあらわれた。
あぁあぁ!!靴は脱いでくれないと、困りますわぁ!
ええっ!!僕は木の札を二度見した。
女将は面倒くさそうに、スリッパをならべる。
本当は今日は定休日なんですけどね!
女将がポツリと呟く。
一行は顔を見合わせた。
予約で無理に開けてもらったんですよ、イヒヒ!!
Iさんがひきつり気味に言った。
さぁ、さっさと上がってください。
女将の案内で我々は座敷に通された。
料理はコースでお出しします。もたもたしてると終わりませんので、ちゃっちゃとお召し上がりくださいね!
かなりサディスティックな説明だ。一行に緊張感がみなぎる。
すごいですね。
辻口さんがポツリと呟く。イヒヒ!!とりあえず何か飲みますか?
Iさんがビールを注文した。
グラスはいくつ?
女将がぶっきらぼうに聞く。
えーと、ビールはどんなのがあるのかな?
Iさんがメニューをあわててめくりながら、聞いた。だからグラスはいくつ!!
女将がイラッとしている。ろ、六個お願いいたします。イヒヒ!!
Iさんが涙目で言った。
ただならぬ緊張感の中、食事がスタート。
料理はどれもこれも美味しいのだが、たまに柱の陰から女将がチラ見してくるのが恐い。
ちゃっちゃと食べましょうね。
世界の辻口シェフまで怯えている。
Mっ気のあるIさんだけが、イヒイヒ喜んでいる。
あなた達はそばの食べ方はご存じ?
女将が現れた。
僕だって自分でもそばを打つし、江戸っ子だから、多少はそばに詳しいつもりだ、でも恐いから女将に聞いてみた。
最初は何もつけずに、そばだけ味わってください。
つぎに少しだけつゆをつけて食べる。間違ってもいきなりつゆに、わさびとねぎをいれないように、そんなの論外です!
思いっきりわさびとねぎをIさんがつゆにいれている。
僕はIさんを二度見した。隣で辻口さんが笑いを噛み殺している。
そばの後に御飯物が出てきて、さらに温かいそばまで出てきた。料理のボリュームもサディスティックだ。残すと女将に何言われるか恐いので、一行は必死に食べた。
食後のお茶を飲んでいると、また女将が現れた。
今、期間限定フェアやってますから、来たかったら来てもいいですよ。
女将は我々にチラシをくれた。
たぶん来ないだろうな。辻口さんがポツリと言った。じゃあ、お会計してきますから、イヒヒ!!
Iさんがレジのほうへ向かった。
女将の声が響いて来た。
カード使えないって玄関に書いてあるでしょう!!
どこ見てんの!
最後まで女将はおっかなかった。