定時制高校の教員をしながら、不況の中でギリギリの生活をしている生徒たちをこの十数年間何百人も見てきた。
 
せっかく定時制に入学したのだから、アルバイトで家計を支えようと思っても、アルバイトがみつからない、アルバイト面接で何回も落とされる教え子たちが何人もいた。
 
アルバイトですらこうなのだから、就職はもっと難しい。就職試験に落ち、正規社員になれずに卒業していく生徒を何十人何百人も送り出してきた。
 
この不況(デフレ)を何度恨んだことだろう。...

 
それがここ1、2年変わってきた。新入生のアルバイトがすぐみつかる。あるいは、アルバイトをやめてもすぐ別のアルバイトがみつかるという話を聞くようになった。
 
そして、今年度になって急に卒業生の就職(正規採用)がよくなった。昨年度から就職がよくなったと感じていたが、今年度驚くのは、9月の就職試験解禁後の一回目の試験でほとんどの生徒が内定をもらったことだ。
 
さらに驚いたのが、試験を受ける前の会社見学の段階から事実上内定宣言される生徒が何人かいたことだ。これは本当は採用企業側の勇み足なのだが、それほど企業は人手不足状況ということだ。
 
ニュースに高校生の内定率が25年ぶりに高水準で売手市場とあったが、高校教員としてそれはその通りだろうと実感する。

 

政府の財政政策、日銀の金融政策に求めることは、バブルを起こすことでもなく、長期デフレでもなく、若者たちが安心して安定して働くことができ、結婚や子育てができるような社会を安定的に実現していくことであると一定時制教員として思う。

 
そして、そうした経済的生活の安定がそのまま若者たちの心理的な安定に直結していると一臨床心理士としては考える。若者のまわりにはカウンセリングや心理療法などの心の対応以前の問題が多すぎる。