映画「ナイトフラワー」の


超絶ネタバレになります

注意して読んでねニコニコ
ナイトフラワーの結末、はっきりとは説明されてませんが、大概の人はこう考えていると思います

"みんな殺されたんだ"

その考察については今回は置いておくとして

夏希たちが殺されたのは現実的な理由として、サクラが死んだことで警察が薬の出処を捜査することになるため、サクラと組織に繋がる糸を切るために"処理"されたということです

そして、もうひとつが"罪を犯した人間が神に裁かれた"という意味合いもあったのではないかと思います

だから、罪のない子供も殺された。

他人の子供の命を奪った報いを受けた。

だとすると

池田海はなぜ殺されたのか。

これも現実的な理由としては組織につながる糸のひとつということで"処理"されたからです。

では、"裁き"という観点ではどうでしょうか。

だってなんも悪いことしてないやん。

夏希や多摩恵を売人たちと繋げただけやん。

だってそもそもサクラにせよその他のお客さんもみんな夏希たちがいなくても違う経路でシャブ漬けになっていただろうしね?

多摩恵の言いなりになっていただけやん???

利用されて可哀想に...

と思ったんですが、これこそが池田海の罪だと思いました。

彼は、多摩恵のことが大切で守りたいから寄り添っているように見えますが本当に守るつもりがあるか?てことです。

多摩恵が金が欲しいと言うから自分の働く風俗店を紹介した。そうでないと多摩恵がよそでもっとタチの悪い仕事をするかもしれないから。

多摩恵がクスリの売人を紹介しろと言うから紹介した。そうでないと多摩恵がもっと危ないことをするかもしれないから。

俺の目の届くところで見守るんだ。

...でもさぁ

結局、体売ることを容認して、クスリの売人にしたよね???ええんか???

多摩恵の言いなりになるのも、多摩恵を自分が手放したくないからじゃないの???

多摩恵のため

多摩恵のため

でも、きっと本人もわかっていないけど本当はそれって自分のためなんじゃないの?

自分が多摩恵を守りたいという欲望なのではないの?

私は、そう思いました。

だから、海が罪に問われるとしたらそこだと思いました。

多摩恵を手離したくない守りたい寄り添いたいという自分の"欲"ために結局は彼女を不幸に陥れていたということだろうと。

でも海に全く悪意はないんです。自分でも気づいていない罪。

海はやがて決死の覚悟で、彼女に怒りをぶつけながらも秘めていた想いを伝えた...にも関わらず多摩恵は耳を貸さずに夏希のもとへいったわけですが

それでもその後に多摩恵とラーメン食べに行くんですよね

あんたバカだねぇ...

その上、必死に多摩恵の試合を応援してあげたのに、さらにまたそこで多摩恵が必要としているのは夏希だと見せつけられ、多摩恵の傍にいるのは自分ではないんだと、役目は終わったんだと思い知らされ...

そして自分が殺される時には少しの可能性に賭けて必死でひとり倒すんですよね。多摩恵を守るためにね。

で、最後の最後まで多摩恵のことを想って、多摩恵と見た海を想って死んでいく。

ほんまにアホやなぁ...アンタ...

せっかく不良少年から更生して風俗店とはいえ真面目に働いて生きていたというのに(原作より)。

ひとりの人間を愛し続けたがためにあんなことに。

ていうか内田英治って人はとんでもないなと思いました(褒めてる)

いや、普通は人間の心理として小春ちゃん死なせられないんですよ。

小太郎もなんだけど、夏希の子供たちは何も悪いことしていないどころか、小春にいたっては未来の夢のために必死に頑張ってます。

基礎がなっていないと言われてからはずーっと基礎の練習をして、上達して来てる。厳しい指導を受けながらもプロになるために必死に頑張ってる。

普通はそんな健気な子なんとかして生きさせるんですけど...なんやかんや「んなアホな」て言うくらい上手いことあって最後は幸せに暮らしましたとさってなるんですけど

ならないんかい...

だから、観てる側もなんとかして夏希たちが生きて幸せに暮らす可能性を見出そうとするんだけど考えれば考えるほど辻褄が合わない。

考えれば考えるほど最悪の結末への伏線が回収されてしまう。

海にしたって、下手な映画なら誰かが助けに来るわけよ。

例えば原作には海が死んだあとでそれを知らない多摩恵が「また海に連絡してみよう」って思ってる場面があるので

例えばだけど多摩恵が電話をかける

出ない

嫌な予感

そして助けに行くみたいな???そんなのがあってもいいじゃない

ただし、それがあることで一気にこの映画はリアリティが急降下して安くなるんだなぁ...

ピンチに現れるヒーローなんていないし

悪いことをして反省したら許してもらえるとは限らないし

火事場のクソ力で海があの男たちを倒せるわけもない

さくらの母ちゃんが小春を撃つのを思い直すこともない

サトウの3つの質問に上手く答えられるとも限らない

だからこの映画は面白いんだよなぁ...

話の重さはミッドナイトスワンとよく似ているけどミッドナイトスワンのほうがまだ救いがあったような...

見れば見るほど重いなぁ...と思う映画でしたが、私はまたこれからも海のあの血まみれの笑顔を見に映画館に通うのでしょう...𓀗…ヨボヨボ

ところで「紫の海」とはなんだろうと調べた結果、心理的に深い感情(愛情、悲しみ)を表すそうです。

海の目に映った紫の海は母親を失った悲しみでもあるし、同時に芽生えた多摩恵への愛情だったのかなぁ...