超ネタバレ注意
8月2日~8月4日京都府舞鶴市舞鶴市民文化会館にて今年も「朗読劇READINGWORLDユネスコ世界記憶遺産舞鶴への生還"約束の鎮魂歌"」が上演されました。
出演は前年と同じく
緑川光(青柳肇役)
佐久間大介(西倉勝一、西倉道流2役)
岡本信彦(片桐圭之助役)
下野紘(神部大地役)
佐倉綾音(篠森有栖、青柳茉莉役)
井上麻里奈(青柳恵役)
岸尾だいすけ(浅野直樹役)
そこに下野紘とWキャストとして豊永利行が追加されました。
(今回のレポは下野紘回)
(敬称略)
今年もグッズ列開始に間に合うように早朝に自宅を車で出発しました

去年はお盆期だったからでしょうかすごい混んだ覚えがあるのに今回はスイスイと進み、予定よりかなり早く到着。
去年、グッズ列開始時刻前に到着したのにすでに列が出来ていて「約束が違う!」となったのですが今回はスタッフさんが「まだこの辺りで立たないでください」とちゃんと管理なさってました。
素晴らしい👏👏👏👏
ただ…去年あった肉じゃがコロッケの屋台がなくてお腹減って泣きそう(´;ω;`)
なぁんでぇ~(´;ω;`)
おトイレも混みますのでグッズを買ってお友達と合流したら早めにトイレへ
そして開場11時になり、入場列が落ち着いた頃に中に入りました
中へ入ると引揚記念館の語り部を担う高校生のみなさんが出迎えてくれて、こちらの素敵なファイルをいただきました
中には舞鶴の観光マップなどが入っています
素敵じゃない?このデザイン!マジで使います
席は2階席です

傾斜があるのでとても見やすい
開演前なら写真撮影してもらっていいですよと親切にスタッフさんがアナウンスしてくださいました
ありがとうございます
舞台には薄い透ける布のようなスクリーンが貼られて夜空と満月が投影されています
美しい
今年も月がテーマなのですね
そして開演
スクリーンの向こう側に誰かが立ち、話し始めます。
この段階では誰がなんの役かも知らされていないので「誰のお声だろう緑川さんかな?」となりましたが合ってたみたいです笑
ー月が綺麗だ
ーこの月を故郷で眺めたかったものだ
その言葉で、この方はシベリアで無念にも亡くなったのだなと理解できました。
彼はシベリア抑留された経緯を話し始めます。
ー月が綺麗だ
ー私はこれからも白樺の木の下でこの月を見上げ続けるのだろう
ー彼らとの約束が守れていれば…
後悔が滲む苦しい言葉が綴られます
と、そこに雪を踏む足音が聞こえ
場面は現代に転換されます
大学生の西倉道流役の佐久間大介、青柳茉莉役の佐倉綾音がステージへ
そこは、舞鶴市総合文化会館
どうやらそこで戦後80周年を記念する学生のオーケストラの演奏会が開かれるそうでどうやらこのおふたりは恋人同士のようです
音楽で生きていこうとする茉莉と恩師が亡くなったことで音楽を続ける意味を見失い就職活動をする道流はどうもギクシャクとしています
茉莉の曽祖父はシベリア抑留の際、家族に「新しい恋をした」と裏切るような手紙を寄越していました。
その手紙を発見した茉莉は真相を確かめたいと言いますが道流はそれがなんの意味があるのだと言います。
そもそも
戦後80周年の記念に戦地で亡くなった人に鎮魂歌を届ける?そんなコンサート自体が馬鹿げている
ーそんなもの届くわけがない
そう笑いますが
ー道流は誰かのためにピアノを弾いたことはあるのか
ー亡き恩師にピアノを聞かせようとは思わないのか
普段から道流にはどこか冷めたところがあり、人の気持ちがわかっていないと思っていた茉莉は、そう怒って出ていってしまいます。
道流は腑に落ちないまま自分が弾く予定のピアノを1音鳴らしました。
それは、ロシアのナホトカ市と舞鶴市がシベリアの白樺の木の一部を使って共同制作されたものでした。
そこにまた声が聞こえます。
ーここでくたばって白樺の肥やしになるまいぞ
そして道流は、曽祖父西倉勝一に電話をかけます。
西倉勝一は、シベリア抑留の経験の語り部として活動していて、茉莉の曽祖父の部下でした。
ー話を聞きたいんだ
そこから、場面はシベリアへ
道流の曽祖父、西倉勝一が何故語り部となったのか
茉莉の曽祖父、青柳肇が何故家族を裏切ったのか
その全容が明かされていきます。
佐久間くん演じる西倉勝一は、日本が戦争に負けたと知り自決しようとした過去がありました。
しかし上官である青柳に「これから家族のために生きろ」と諭され、昔幼い妹をなくして母が泣いているのを見た西倉は母の笑顔のために生きて帰ると誓います。
しかし
妹を軍事工場の空襲で亡くした神部大地は、その責任が西倉にあると思い恨んでいて
ー貴様に家族のために生きる資格などない!
そう罵ります。
この時、神部大地を演じた下野さんの演技の凄まじいこと。
神部は最初少し高い位置に登場し、階段を駆け下りて来るのですがもうその音でビクッとします。足音がもう怒りを表現しています。
神部は西倉を罵りながら掴みかかるのですが、舞台の上ではふたりともマイクの前で喋っているだけなのに、本当に殴りかからんばかりの迫真の演技...
見ているこっちが胸ぐらを掴まれて揺さぶられているような感覚にすらなりました。
神部は別の収容所に異動することになっていて、最後にそうやって恨みを吐き出して去っていきました。
やがて西倉勝一、青柳肇、片桐圭之助、篠森有栖は厳しいシベリア抑留生活の中で、手作りの楽器を作りやがて楽団として認められ、各地の収容所を慰問し、抑留者の心を癒すと共に亡くなった人たちへの鎮魂歌を届ける活動を始めます。
そこで、神部と再会するのですが
神部は病に倒れ余命いくばくもない状況でした。
ここでの下野さんの死と隣り合わせの鬼気迫る演技も凄い。
神部は、亡くなる直前に西倉に謝ります。
妹が死んだのを西倉のせいにして悪かったと。ただ、やりきれなかったのだと言います。
妹が可愛いあまり結婚を許してやれず、そのまま妹を死なせてしまった自分が許せなかったのだと。
そして、恨んでいたはずの西倉に頼み事をします。
ー生きて語れ
ー何歳になっても、たったひとりになっても、誰かを想い続け、死んでいった者のこと、戦争の虚しさを伝える語り部となれ
ー西倉勝一、君には生きて帰って欲しい
なんと残酷な願いごとでしょうか。
たったひとりになっても生きて語れだなんて。
一方、片桐は従軍看護師として派遣され収容された篠森有栖に恋心を抱きます。
しかし、有栖には日本に残した婚約者がおりその子供を妊娠しているのですが、それでも片桐は有栖を献身的に支えます。
ある日、片桐は有栖のために極寒の地で薬草を探し、そのせいで手に凍傷を負ってバイオリンが弾けなくなってしまいました。
西倉も、一時は病に倒れ死を覚悟しますがやがて奇跡的に復活を果たして仲間のもとに戻ります。
しかし、西倉がそこで見つけた青柳の家族への手紙。
ーこちらである女性に心を奪われてしまいました
ー家族を裏切って申し訳ない
西倉は青柳を責めます。
あなたが家族のために生きろと言ったのではないかと。あなたの家族への想いはそんなものなのですかと。
すると青柳は西倉に言います。
ーお前の命はずいぶん安いものだな
ー生きろと言われて生きるなんて
ーお前は単純でクソ真面目で扱いやすいから利用しただけだ
西倉は「正気で言っているんですか」と震える声で聞きます。
しかし青柳は更に
ー神部の妹のかわりにお前が死ねば良かったのではないか
そう罵り続けます。
ー約束はどうするんですか!生きて帰ってみんなで演奏をしようという約束も僕を調子づけるための嘘だったのですか!
青柳は言い放ちます。
ひと言「あぁ」と。
ーどうして!!!どうしてなんですか!!!青柳さん!!!!
西倉の怒りと哀しみを含んだ叫び声が響きます。
このシーンまでは、西倉は比較的穏やかな口ぶりだったのですがここで感情が爆発してしまいます。
佐久間くんの悲哀を帯びた叫び。
大好きです。凄いです。かっこいいです。
悲しみを爆発させる演技がとても胸に刺さります。
やがて、彼らは日本に帰ることが決まりました。
帰国するその日、天候が荒れる中、西倉、青柳、片桐、有栖とその子供は列車へと向かって歩きますが途中で青柳を見失ってしまいます。
西倉は片桐に有栖と子供を守るように言い、自分は青柳を探しに戻ります。
吹雪の中、西倉は青柳を見つけますが青柳は実は自分は肺ガンを患っていて、もう帰る力がないのだと言います。
もし生きて帰っても家族に迷惑をかけるだけだと知り、青柳は家族に嘘の裏切りの手紙を書いたのでした。
けれど、西倉もわかっていました。
あの手紙には、青柳が妻の恵にプロポーズする際に送った言葉を一度書いて消した跡があったからです。
ー月が綺麗ですね
青柳は西倉に、白樺の木の皮にしたためた家族への本当の想いを書いた手紙を渡します。
しかし、それは誰にも見せないで欲しい。
たったひとり、西倉にさえ本当のことを知っていてもらえればいい。
西倉は青柳に言います。
ーみんなで生きて帰るという約束はどうなるのですか
ーあなたに命を救われなければこんな辛い思いをしなくて済んだのに!
けれど、そうでなければ音楽の素晴らしさを、月の美しさを、仲間の大切さを知らなかった。
ーだから、生きてあなたのことを語り続けます
そして倒れる青柳。
青柳の名前を叫ぶ西倉。
そして台本にはセリフではなくこう書いてありました。
西倉「慟哭」
そこで
これまで、倒れる青柳を見下ろすように話していた佐久間くんがバッと顔を上げ、泣き叫びました。
激しくも悲しい慟哭が会場に響きます。
さすが!!!!こういうのが上手いんです佐久間くんは!!!結構、長く叫んでたと思うけど一切声にブレもない。
なにより、ここで顔を見せる演出がいいではないですか。
佐久間くんは立って叫んでいるだけですが、しっかりと情景が浮かぶんです。
吹雪の中に倒れる青柳を覆うようにしがみついて天に向かって泣き叫ぶ姿が。
青柳だけでなく、神部やその妹、仲間の死、なによりどうしてこうなってしまったのか、戦争とはなんなのか、どうしてこんな辛い目に合ってまで自分は生きねばならない使命を背負ったのか。
あなたが救ってくれた命ではないか。
その叫びに全てが詰まっていました。
青柳を残し、舞鶴へと寄港する西倉と片桐と有栖とその子ども。
出迎えた有栖の婚約者浅野に、片桐は有栖の荷物を渡して去ろうとしますが、有栖はそれを引き止めてふたりきりになり、これまで守ってくれた感謝を述べます。
ー婚約者と幸せに
いつものようにおどけて見せながら、片桐は去り際に有栖に言います。
ーあぁ...それと...月が綺麗ですね
片桐ーーーーー!!!!!!!!私は心の中で叫びましたね...なんていいやつなんだ...
ずっと秘めていた想いをやっとここで言えたのか!!!しかも「あーそうそう」みたいな言い方したけどずっとこれ言おうと思ってたやろ!?
実らないことを知っていて!!!!
愛おしい!!!!君は幸せになれ!!!
そして、西倉は青柳の妻に会って青柳の死を伝え最後に手渡された「誰にも見せるな」と言われた手紙を妻に渡してしまいます。
ー渡すなと言われたのですが...手紙とは届けるものです。僕はクソ真面目なので
渡すんかーい!!!!!
でも、もしかしたらですけど青柳は西倉が妻にこれを渡すことをわかっていた可能性もあります。
なにせずっと青柳は西倉のことを「クソ真面目」だと言っていたので。あと、妻の恵も本当は自分のことを信じてくれていると思ってたのかも?
その手紙の最後にはもちろんこう書かれています。
ー今夜も月が綺麗ですね
そして舞台は現代へ
道流の曽祖父、西田勝一から曽祖父青柳肇の手紙の真実を知った茉莉と、その壮絶な抑留体験を聞き大切な人を想う気持ちを改めて考えることになった道流。
演奏会のその日、道流は茉莉に言います。
ー亡くなった先生に届くようにピアノを弾く
ーそしていつか一緒に綺麗な月を見に行こう
道流????
あなたまさか!!!!
それって!!!!!!
あのセリフを言うつもりでは!!!!(*ノωノ)キャー!!
なんてこと言ってますが
このお話の冒頭から、佐久間くん始めこの朗読劇を去年から知っている人には何かよぎるものがあったはずです。
亡くなった恩師とは
もしかして、去年この朗読劇を置いて志半ばで亡くなった松野太紀先生のことなのでは。
そして、道流は空に向かって言います。
「先生、僕...上手になったんですよ...」
松野先生ぇーーーーーー!!!!!!!!
聞こえますかぁーーーーー!!!!!!!!
佐久間くん、上手になったんです!!!!!!!
きっと松野先生は佐久間くんを錚々たる声優さんたちの中にひとり残してしまったことを心配していたのではないかと思います。
本当なら自分が面倒をみるはずだった。
でも、佐久間くんはちゃんと自分の力でみなさんに受け入れてもらえましたよ!!!!
そして、上手になりました!!!!!!!
あの場面だけは、憑依型と言われる佐久間くんが一瞬役から抜けて"佐久間大介"として語っていたのではないでしょうか。
マイクから離れた時、一瞬ですがお袖で顔をぐいっと拭っていてそれを見てこちらも泣かずにはおれんのです。
そして、道流がピアノを鳴らすと
西倉勝一と抑留生活を共にした仲間たちの幻が現れます。最初はそれに戸惑っていた道流ですが、やがて勝一に戻り、仲間たちと演奏をはじめます。
それは、遠くシベリアの大地にも届いたようです。
ひとりで孤独に月を見上げていると嘆いていたあの声が最後にこう言います。
ー今夜はひとりではないような気がする
青柳さーーーーーーん!!!!!!!
そしてカーテンコールでは、佐久間くんはニコニコ笑顔でお手振り、アイドルに戻ります^^
前作では、佐久間くんは非業の死を遂げてしまったのでカーテンコールの笑顔に心底ホッとしましたが、今回は生きててくれて良かったです。
鳴り止まない拍手の中、初回とあって捌けるタイミングを見失う演者のみなさん笑
岸尾さんがサザエさんのエンディングのごとく誘導して行きます笑
そして、佐久間くんが捌けようとしたその瞬間、下野さんに押し戻されて、ソロでお手振り^^
そして深々としたお辞儀。
佐久間くんのお辞儀はしっかりと深くて直角でスマートで素敵だといつも思う。
下野さーん!!!ありがとうございます!!!
演者のみなさんが佐久間くんを声優として受け入れてくれている一方で、こうしてアイドルとしての顔もファンのみんなに見せてくれる。なんて配慮ですか。なんて有難い。
ちなみにこの朗読劇の中で、佐久間くんは一度も「月が綺麗ですね」と言ってくれないんです。
しかし、最終公演ではカーテンコールで言ってくれたみたいですね。
しかもそれは岡本くんの手引きだったとか。
本当にありがとうございます。
これもひとえに佐久間くんの人柄でもあると思いますが、ファンのみなさんがお行儀よく、良い印象を与えることが出来ていたからではないでしょうか。
私、ついついアイドル佐久間大介を見に来たことを忘れてしまって...すっかり役者の一人として見ていたもので...なんとなくさらっと見送ってしまった笑
あぁ、もっとお顔見とけば良かった...笑
しかし、良く考えれば前作より難しい役だったと思います。
前作では岡本くんが"生きて帰ったものの宿命"を背負っていたと思います。彼は死んだ仲間を日本に返すため、遺骨の収集に尽力しました。
今回の佐久間くんが演じた西倉勝一も、死ぬな、生きろ、生きて語れという使命を背負いました。
生きて帰れるのに手放しでは喜べない。
そんな難しい役を見事に演じきってくれました。
実際、この西倉勝一のモデルとなった西倉勝さんは御歳100歳になる今もシベリア抑留の語り部として、戦争の悲惨さを伝え続けています。
今回、ステージの演出や演奏もグレードアップしていて驚きました。
ステージ上に何枚も下げられたスクリーンに吹雪や夜空の月の背景が映し出されたり、時にはスクリーンで演者を隠すことで回想やこの世にいない人間であることを表現します。
前作の佐久間くん演じる島津が死ぬ場面では、島津に当たるスポットライトが消され、真っ暗になることで死んだということを表現しました。
そして、やがて島津が立ち上がり、光を目指して階段を登っていくことで魂があの世に送られたとわかります。
今回、下野さん演じる神部が死ぬシーンでは神部そのものは真っ暗な影になり、その背後のスクリーンに光の粒が映し出され、その光の粒が神部の体から放たれて行きました。
きっと、その光の粒が神部の魂が天に昇る様子を表現しているのでしょう。
そして音楽。
前作ではフルート1本の旋律がこれはこれで儚く美しかったのですが、なんと今回は海上自衛隊舞鶴音楽隊の皆さんがオーケストラに加わって、音楽が物語の中心であるこの劇を豪華に彩ってくれていました。
なんと言いますか全てにおいて美しい朗読劇でした。
前作のほうが現実的な悲惨さが剥き出しでしたが、今回は割とファンタジー要素が多いです。あと、恋愛も。
だからちょっと「んなことあるかい!」的な心のツッコミもあった場面はあります笑
アニメ的と言いますか...
でも、それがある意味もしかしたら現実に近いのかも知れないとも思います。
シベリア抑留のお話を聞いていると、苦しい抑留生活の中でも、音楽やスポーツを楽しめる息抜きの場面もあったようですし、恋バナもしたでしょうしね。
でもね
ひとつだけ親心で言わせてください。
西倉道流
彼女へのプレゼントにオンラインギフトは絶対なしだ!!!!!!
お前、モテないぞ!!!!!!!
そしてちゃんと
月が綺麗ですねって言うんだぞ!!!!!!
おばちゃん応援してる笑
そんなこんなで
まぁ、記憶が抜け落ちている部分もありますので拙いレポにはなりましたが...生暖かく見守っていただければ幸いです。
帰りは、とれとれ市場で焼き鯖まるごとと海鮮ちらしをいただいきました。

そして看板巡りもさせていただきましたよ!
来年もまた、この素晴らしき舞台を見に来られますように。



↑↑↑最後、道流と茉莉が語り合う引揚公園の展望台です