どうして「あまい」とわかるの?
  ~おじいさんの人物像をつかむ


<本文>

 あまい あまい、大きな 大きな かぶに なりました。


モエコちゃんの疑問

おじいさんが「あまい あまい、大きな 大きな かぶに なれ。」といってかぶのたねをまきました。そうしたら、上の地の文のようになりました。この1文をどう読み、授業で取り上げるか。

初めてこの授業をした時、この文の当然さ(そのころはそうしか思っていませんでした)に、「だからなに?どう授業すればいいの?」と戸惑いました。
発問さえ思いつきませんでした。これは教師としては致命的なことです。

このときぼくを救ってくれたのは、モエコちゃんでした。
モエコちゃんはこの文を読んでいるとき、「へんだなあ」とつぶやきました。その声を耳にしたぼくは、「どうしたの?」と尋ねてみました。

「おじいさんがね、大きなかぶだってことは、見ればわかったと思うのね。でも、食べてもいないのにどうしてあまいってわかるの?」
モエコちゃんは、大きな目を見開いてゆっくり答えてくれました。

モエコちゃんの問いかけを受けて、その意味を原文にもどって考えてみました。
そうか、ここで明らかにすべきことは、おじいさんはどんな人物であるかということなのだ、そのことでした。

「~なれ(願い)}と「~なりました(結果)」の間をうめるもの

おじいさんの会話文の「~なれ」という願いと、そのあとの地の文の「~なりました」という結果、その間を想像で埋める必要があります。
つまり、願いが結果として結実するには、それの間に書かれていない「行為」があったはずです。

そこで、次のような発問を考えました。

<発問①>
*おじいさんのまいたかぶのたねが、あまい、あまい、それに、大きな、大きなかぶになったのはどうしてだろう。


子どもたちは、おじいさんのしたこと、思ったことを想像して語りました。
・毎日毎日、水やりをしたんだ。(自分たちの育てるアサガオのことをイメージしたようです。)
・虫がつかないようにしたよ。
・雑草が生えないように、草取りした。
・毎日声かけしたはず。
・おばあさんたちにも、大きくなる様子を伝えた。

<発問②>
*おじいさんが、かぶをあまいとわかったのはなぜですか。


おじいさんの人物像を、更に明らかにするための発問です。

・色を見ただけでわかったんだ。
・つやつやして、さわっただけで分かる。
・においもあまそうだ。(あまそうな果物は自分にもわかるよと、子どもたちはリンゴや桃のことを出しました。)
・なんどもかぶを育ててるから、分かるんだ。

おじいさんは、農民(お百姓)です。プロというものは、かぶを育てることが仕事ですから、食べなくてもわかります。

<発問③>
*「あまいかぶ」「大きなかぶ」と「あまいあまいかぶ」「大きな大きなかぶ」の違いはどうですか。

ここではくり返し(反復)表現から、おじいさんの思いを考えます。くり返しは、強調するときに使います。

・すごくあまいんだ。
・とんでもなく
あまかった、大きかった。
・おじいさんが思っていた以上にあまい、大きい。
・うれしいなあとよろこんでる。

おじいさんの喜びに目を付けた子どもたちです。
わずか1文ですが、学ぶことはたくさんあります。モエコちゃんには感謝です。

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ところで、このゴリラくん、モエコちゃんがかつておみやげにくれたものです。
“さんにゴリラだよ~ラブラブ”と。
いまでも大事にかわいがっています。

(④につづく)

(№1391の記事)