キャリアブレイン(http://www.cabrain.co.jp/)というベンチャー企業の社長が書いた本。
理論派というよりは感覚派なのかなぁ、と思わせる語り口は、本を読んでいるというよりも、問わず語りを聞いているような気分。
とはいえ、ベンチャー企業を起こした創業者の生々しい経験談は、これから起業しようという人間にとっては大変タメになるものである。

僕の生きる業界は、いかに資金を集めて、いかに早くIPOして、いかにキャピタルゲインを稼ぐのか、というのが半ば感覚として常識と化しているわけだが、そんな僕の目から見ると、ベンチャーなのにこんな堅実経営をしているところがあるのかと驚くばかりである。

なによりも驚いたのは、資本が100%社長個人の資金である、ということである。
手っ取り早く業容を拡大して高収益モデルを早期に構築することこそが生き残る術だと思っていた自分にとっては、本書はカルチャーショックとも言える内容だったのである。

たしかに、本書で述べられている「身の丈経営」は、長い目で見れば正論であるが、大抵の場合、そんなことを言っていると経営が軌道に乗る前に原資が尽きてしまうという危機に見舞われる。
しかし、キャリアブレインは、堅実に自力で業容を拡大している。
そのような経営も有り得るのだということは、学ぶべきところが大きいように思う。

正直、著者である社長の、学生時代の就職活動の話を持ち出されたときはどうしようかと思ったが、後半は充分に読み応えがあった。

起業する際には、本書に書かれている内容についても充分に考え合わせながら、安易な経営に走らないように注意しようと思った。

(生々しさ度:★★★★★)

吉岡 政晴
やりようは、いくらでもある!―ニューベンチャー起業成功の仕事術