インターネット関連企業で働くようになってからもう5年以上、職歴を語る上でインターネットコミュニティの運営とは切っても切れないぐらい密接に関わってきた。
近頃はweb2.0などという言葉も流行り出し、どんどん姿を変えていくインターネットコミュニティだが、果たして今後はどんな形になり、どんな性質を帯びてゆくのか。

まさにその問題は、今後の自分のメシのタネにも大きく影響する話であり、しかも、非常に変化のスピードが速いので、常に情報収集に気を配らなくてはならない。

思い起こせばこの1年でいったい何が起こったのか。
SNSというサービスがGreeの登場により広く認知されるようになったのが、まさに去年の今頃。その後mixiが登場し、後発ながら今や会員数ではGreeを抜き去り、7倍ほどの大差をつけて国内最大手となっている。
ブログもすっかり市民権を得て、去年の同時期に比べ利用者は3倍とも4倍とも言われている。
かたや、ちょっと前まで「インターネットコミュニティ」の代表格だった掲示板やチャット、出会い系などのサービスはすっかり影が薄くなってきている。

このように、非常な速さでコミュニティの在り方が変わっていく中、その流れに遅れないようにするだけでなく、如何に一歩先を読めるかが死活を決定づけることになりかねないのである。

今回取り上げた本は、まさにサバイバルと化したインターネットコミュニティサービスの在り方について、ヒントを与えてくれるような本ではないかと思って購入した。
値段は2,800円。並みのビジネス書より5割は高い(という事実には、買ってから気付いた)。

読み始めてみると、文章の進め方が、なんだかとても懐かしく感じた。
なんだろう、この懐かしさは。遠い昔に、こういったテンポの文章を大量に読んだ覚えがあるような・・・。
そうだ! 学生の論文や大学の研究室の紀要のような、読者を意識せずに書いた三流以下の学術論文にありがちな文章法だ! 学生の時にイヤというほど読んだ、あの気詰まり感のある文体だ!
それに気付くとすぐに、巻末の著者紹介を確かめてみた。

ああ、、、やっぱり。。

思ったとおり、大学院生の論文だったのだ。
うーん、やられた。
どうりで、データは古いし、調査の範囲も狭く、調査対象の母数も少ないわけだ。

読んでいても、あまり目新しい内容も無く、データもせいぜい2004年までのもの。
大半は2003年以前のデータをもとに机上で組み立てた論理であり、しかも、観点がちょっとズレているような気がしてならない。
これだけ変化の激しい題材について論じるのに、そんな昔のデータを出してきて、しかもデータをいじくり倒して論じられても、どうにも説得力に欠けるんだよなぁ。
結論の着地点は大きくズレてないと思うんだが、それを論証するための材料があまりに貧弱で。

インターネットコミュニティのような生モノを論じるのなら、数字のような定量的な裏づけだけでなく、定性的な裏づけもちゃんと添えないと、充分な内容にならないのではないだろうか。
フィールドワークとは、数字をそろえることだけでなく、実際の現場からデータを拾ってくることでもあるのだ。

残念ながらこの論文には、インターネットの匂いを感じることはできない。

(高くついちゃった勉強代度:★★★★☆)

池田 謙一, 志村 誠, 小林 哲郎, 呉 國怡
インターネット・コミュニティと日常世界