Greeといえば日本のSNSの草分け的存在だが、そのGreeの代表取締役である田中良和氏が監修したのがこの本である。

田中氏といえば、新卒一期生としてソネットに入社して1年で退職。その後楽天に転職して今日の楽天の基礎を作り、そして激務の片手間でGreeを立ち上げたということで、ソネットでは伝説の男になっているらしい。
そりゃ伝説にもなるよなぁ、と。

さてこの本だが、アメリカと日本のSNS事情に絡めながら、SNSがどのような使われ方を想定しているのかを解説している。
さすがにGree代表が監修しているだけあって、Gree以外の日本のSNSの名前はすべて匿名になっている。
とはいえ、ありがちな特定の企業マンセーな内容ではなく、SNSについて総合的に紹介している印象である。短絡的な功利主義の本でないところに好感が持てる。
文中に「人脈づくり」ということが盛んに登場するが、のし上がって勝ち組になるための「人脈」ではなく、楽しい生活を送るための仲間作りという意味合いが強いように思う。そういう意味でも、Greeの原点が反映された内容になっているのではないだろうか。

そもそも、なんでもかんでも利己的に使い倒すという観点からインターネットコミュニティを論じるのは、ハゲタカ系投資ファンドと同じで、社会の共有財を一部の人間の利益のために食いつぶすような発想である。
インターネットコミュニティは、それ自体を直接的に金儲けのネタにするのではなく、社会のインフラの一つとして、文字通り「コミュニティ」として存在するべきなのである。(もちろん、インフラはインフラとしてのみ存在しても意味がないので、どのように社会に成果を還元するかを考えるべきだが)

悲しいかな、いままで世間に出回っていたSNSについて書かれた本は、だいたいがビジネスに結びつけたもので、SNSのコミュニティを使っていかにビジネスチャンスを掴むかみたいな本ばかりのような気がする。
その中にあってこの本は、SNSの可能性や将来性について、素人に分かるように噛んで含めるように解説しつつ、SNSについての展望を語るという、ちょっと珍しい存在である。
たとえばGreeに入社したら、新人研修でこういう話を聞くことになるのだろうか。

問題は、わざわざこんな本を買って読もうという人間がこの程度の内容に満足するかである。
正直なところ僕自身にとっては、目新しいことは何も無かった。

もうちょっと突っ込んだ内容が欲しかったなぁ。

(初心者向け度:★★★★★)

原田 和英, 田中 良和
招待状、届きましたか? SNSで始める新しい人脈づくり