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         三木句会ゆかりの仲間たちの会:有冨光英 自解150句選より その9

 

 

         海の卓さみだれづくめなるほどに     昭和48年作

 

      外向的な晩春初夏を過ぎると、さみだれの降り続くいささか陰鬱な時期を迎える。

     こういう風景は海岸に行くとよく目に入ってくる。海水浴場でもホテルの庭でもいい。

     夏の盛りともなれば人が集まってくると思われる浜辺にテーブルが一つ置かれている。

     置きわすれられていると言った方がいい。ことによるとこのテーブルから意外なドラマ

     が始まるかも知れないのに、雨ざらしの卓には誰も見向きもしないのだ。「なるほど

     に」に作者の感情を入れたつもりである。

      毎年さみだれの時期に幼年学校の訓育班会が開かれる。交通の弁を考えて熱海が

     多い。揚句の風景は見馴れていたが、一つのものを通じてどれほどの心情が表現でき

     るか、当時の私の実験句だった。

                       『琥珀』・季語=さみだれ

 

 

 

        風花のどこまぼろしを探す子等     昭和49年作

 

      東京で生まれ東京で育った筆者だが、ここ何十年と東京では風花を見たことが

     ない。それもその筈、峠越えの強い風に乗って舞い落ちる雪片を風花というのだ

     から、都会で見ることは無理な相談なのである。ところが子供の頃、日射しを浴び

     ながらちらちらと雪が降ってくる光景に何度も出会った記憶がある。東京の郊外では

     案外風花も珍しくなかったのかも知れない。

      子供の目から見ると風花はなんとも不思議な現象なのだ。まぼろしが降ってくる

     ような気分になる。そのまぼろしの源はどこにあるのだろうかといろいろ考える。

     童話の世界を思い浮かべていたかも知れない。子供の想像は邪心がない。大人が

     わすれていた世界がそこにあった。

                            『琥珀』・季語=風花

 

 

 

 

 

 

                                                

                                                                                   photo: y. asuka

                                                   港出てヨット淋しくなりにゆく              後藤比奈夫