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     三木句会ゆかりの仲間たちの会:有冨光英自解150選 その7

 

       大蟇の聖の墓にたじろがず         昭和46年作

 

      かねてから念願の唐招提寺に行くことができた。

      八月八日から三日間、京都で行われた甥の結婚式に出席した好機を利用して、

     家内共々西の京、斑鳩に遊んだ。暑い日だった。

      南大門をくぐると、千二百年間保たれた澄明な境内がそこにあった。開山忌

     にだけ公開してされる鑑真和上坐像を拝観することはできなかったが、境内の奥

     にある和上の墓に詣でることはできた。天平十七年、艱難辛苦の末来朝した鑑真

     を偲び、芭蕉は《若葉して御目のしづくぬぐはばや》と詠んだ。鬱蒼と繁った

     樹々の中に墓は鎮まっていた。

      墓の前に大きな蟇が一匹坐っていた。思わずこの句が口を衝いて出た。

                           『日輪』・季語=蟇

 

 

 

       秘仏得て青萩の道戻りけり       昭和46年作

 

      唐招提寺・薬師寺から法隆寺界隈にかけてのたたずまいは私の憧憬の景観である。

     古代の様相を彷彿とさせる典型的な大和の田園風景と言われている。春ならば菜の

     花の黄と麦の青、秋ならば稲穂の波と柿の点景が浮かんでくる。八月の風景は田圃

     の緑と青萩だった。

      法隆寺では聖徳太子ゆかりの釈迦三尊に薬師如来、百済観音に夢違観音、等挙げ

     ればきりもない仏像の数々に圧倒される思いだった。昭和二十四年に失った金堂の

     壁画もそのままに修復されていた。中宮寺の弥勒菩薩半跏像は和辻哲郎の初恋の仏

     であったという。

      拝観する仏像は多く、時間の足りない一刻であった。見終って青萩の道を戻る時

     の気持は夏の暑さをすっかり忘れていた。

                            『日輪』・季語=青萩

 

 

 

 

 

 

                  

                                                                       photo: y. asuka

                                                 佛像に飽き炎天の石跨ぐ          渋谷 道