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       『365日入門シリーズ① 櫂 未知子 食の一句』(ふらんす堂)  より飛鳥遊子

 

        言うまでもなく女性にとって食材や料理は身近なものであり、同じ食材

       が旨くも不味くも、美しくも見苦しくも調理しだいでいかようにもなり、

       必ずや腹に収まって消る。缶詰、レトルト、冷凍など、保存がきき、かつ

       美味しいものも増えてきた昨今だが、指先で感じる鶏や牛・豚の肉の感触、

       目で見る新鮮な野菜の色合い、鼻腔が喜ぶ山椒の芽の香りなど、楽しまな

       ければもったいない、といった心もちで食に向かえたらいいなと思う。

       もちろん、一句浮かんでくればいうことなしだ。

 

        著者である櫂 未知子さんは1960年北海道余市生まれ、短歌を学ぶ一方、

       句集も出し、俳人協会、国際俳句交流協会、日本文藝家協会会員など

       に所属。

        上掲の『365日入門シリーズ① 櫂 未知子 食の一句』は、食をテーマ

       とする俳句ばかりを集めたもの。櫂さんのワンパラグラフの感想文も的を

       射ており、するりと読める。こんなふうに食を詠めたらいいな~との羨望

       と目標を込めて、抜粋して季節ごとに心惹かれる俳句をご紹介してゆこう

       と思う。

 

 

 

        5月8日  若葉してうるさいッ玄米パン屋さん   三橋鷹女

 

        かつては自転車で、今はトラックで売りに来る<玄米パン屋さん>。

       飴入りと飴なしがあるというが、幸か不幸か、私は出くわしたことがない。

       この句、<若葉して>からいきなり<うるさいッ>と転ずるあたり、さすが

       鷹女。これが戦前の作だとはにわかには信じがたい。まばゆい若葉、しかし

       それら初夏の景を全てぶち壊すような声を撒き散らしながら食べ物を売りに

       来る商人。鷹女には悪いが、小銭を握りしめ、玄米パンを買いに走りたく

       なる。(『魚の鰭』)季語=若葉(夏)

 

       遊子のおまけ:

        三橋鷹女(1899年~1974年)。この句が作られた年代はわからないが、

       菓子パンを売り歩いた習慣はあったらしい。パン屋さんとしているところ

       から、本当に怒っているのではない気配が伝わる。「鞦韆は漕ぐべし愛は

       奪ふべし」など、鷹女は猛禽類のイメージの強い女流俳人だが、こんな

       お茶目な句もあり、ユーモアをよく解する幅広い心を持つ女性であった

       のではとも。 

 

 

 

 

 

 

             

                                 Ⓒ r. watanabe

               春の夢みてゐて瞼ぬれににけり    三橋鷹女

 

             12本の真紅のバラ。誕生祝いに友人が添付して

               送ってくれたもの。生成AIを使ってゼロから

               作ったと。7、8回も手を入れてリアルにした

               のだそう。右からの光による影や奥のボケ具合

               など見破れないほどにリアル。rwさん、ありがとう!