2022年7月 句会報 | sanmokukukai2020のブログ

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   2022年7月三木句会報

 

      人けなき道に緑の見えぬ街          加藤光樹   

      母老いて笑まふばかりや晩夏光        藤井 素    

      袴能シテの老師の息ゆたか              

      (不掲載)                 佐藤花子    

      御旅所やしばし整う街の息          樹 水流     

       返事する首の壊れた扇風機               

      立葵届かぬ吾子の背比べ           佐々木 梢    

       息合わせ老犬引く手夏の畦               

       ただいまの声を迎える金魚鉢              

      新しきわれあらはれよ髪洗ふ         太田酔子    

      形代や小さく三つ息をかけ          関本朗子    

      麻布団丸まる老女の背硬し          米澤 然     

      鳴き声が静けさ誘う森の蝉             吉村未響          

       風鈴や儚きものの涼映す                

      息もまばら海月のような前頭葉        関根瞬泡    

      つゆの身に生命の色や露草は         田中 梓     

      曇天に地平線まで草の息           原宿美都子   

      かさぶたの跡だけ白く残る夏         小泉真樹    

      息つめて蜥蜴キャッチの六歳児        大塚楓子    

      珠洲焼きの壺に卯の花雨上がり        神宮前小梅   

      泰山木きのふの花の息絶えて         さとう桐子  

      夏草は刈らず二頭の牛が来る         草野きょう子  

      腹式の吐く息長し青簾            白樫ゆきえ    

      経をあぐ盆僧の動きせわしけり        幸野穂高    

      息苦し線路が曲がる猛暑かな         山崎哲男         

      前頭八つ切り西瓜贔屓とす          國分三徳    

      汗ばめる女座りの膝の裏           飛鳥遊子     

       射程距離範疇にいて三尺寝               

 

 

    今月は二桁には届かなかったものの9点句が3句。そのうちの2つをゲットしたのは素

   さん。俳句が夏バテで……との呟きももれ聞いていたので、その冴えに拍手です。「母老い

   て笑まふばかりや晩夏光」と「袴能シテの老師の息ゆたか」。母の句は個人的な体験であ

   ると同時に、この歳になれば同じような親の老いを見てきた人も多いはず、共感を呼びま

   した。中七から困惑が伝わります。兼題の「息」を使って、夏の季語である「袴能」を綺

   麗に詠まれた2句目も実力を感じました。もう1つの9点句は遊子の「汗ばめる女座りの

   膝の裏」。膝の裏など滅多に俳句に詠まれない部位でしょうね。8点句の「射程距離範疇

   にいて三尺寝」は、隣国が軍事力を高めている映像は見ていても、実感としての危機感の

   ないまま庶民は昼寝……といったところ。

    花子さんの8点句は、ご希望によりブログには不掲載です。水流さんの8点句は「御旅

   所やしばし整う街の息」。「御旅所(おたびしょ)」とは、”神社の祭礼の神輿(みこし)

   渡御に際し、本宮を出た神輿を迎えて仮に奉安する所”の意。お勉強しました。水流さんに

   は5点句の「返事する首の壊れた扇風機」もありました。日常の中に句材ありのお手本の

   ようです。

    今月の敢闘賞は梢さんです。8、6、6点の「立葵届かぬ吾子の背比べ」「息合わせ老

   犬引く手夏の畦」「ただいまの声を迎える金魚鉢」。細やかな日々のワンシーンを素直に

   詠まれました。老犬と息を合わせ……なんて、優しいですね。7点句は2つ。酔子さんの

   「新しきわれあらはれよ髪洗ふ」。現れるといいですね~。朗子さんの7点句は「形代や

   小さく三つ息をかけ」。こちらも、亡き魂の安らぎを望む柔らかな気持ちが出ているよう

   に感じました。

    4月からお仲間になられた然さん、未響さんも善戦していらっしゃいます。然さんの7

   点句は「麻布団丸まる老女の背硬し」。良いところを見ていらっしゃるなと思いましたが、

   「老女」はちょっと距離感があるので、「祖母」とすると句に実感が加わるような気がし

   ました。未響さんは2つの6点句。「鳴き声が静けさ誘う森の蝉」と「風鈴や儚きものの

   涼映す」。うるさいほどの蝉の声が、逆に静けさを強調すると感じられたのでしょうね。

   「蝉の声静けさ誘う森深し」などの詠みもできそうです。風鈴の句、「涼」は「涼し」が

   夏の季語ですから微妙なところですが、雰囲気のある一句に仕立てられました。今月は高

   点句が多く出ましたので、これくらいにいたしましょう。

    ところで、みなさま! 俳句を読んでいらっしゃいますか? 詠むではなく読むです。

   佳い句をたくさん読むことは、佳い句を詠むことにつながります。漫然と5・7・5に思

   いを述べれば一丁上がり!ではないこと、肝に命じましょう!句集を購う必要はありませ

   ん。ネットを活用しましょう。例えば、http://web575.art.coocan.jp/page016.html/ 。

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                                                                                                    photo: y. asuka

                                                      白南風や午前にキスをちょっとして  坪内稔典