わたしの好きな俳人の五句
今回を最後にこのコーナーは終了します。2年間みなさまのお好きな俳人や句を
紹介していただき、知らなかった俳人を知り、その後深掘りしたり、同じ句でも解
釈により見方が変わったり、作り手の状況や心境の変化を句の中に見つけたり、と
いうことも知りました。今回は哲男さんお1人になってしまいましたので、遊子が
飛び入り参加しました。
長谷川 櫂(はせがわ かい) 選んだ人 山崎哲男(やまざき てつお)
『震災句集』より
正月の来る道のある渚かな
みちのくの山河慟哭初桜
桜貝残されしもの未来のみ
雪の峰みちのくに立つ幾柱
震災の年のゆきつく除夜の鐘
池田澄子(いけだ すみこ) 選んだひと 飛鳥遊子(あすか ゆうこ)
2020年4月ブログで佐藤花子さんが好きな俳人として池田澄子をあげていらっ
しゃいます。たまたま書店で見つけた俳人を初見で好きになり5句を選ばれました。
池田澄子の第7句集『此処』は第72回読売文学賞、詩歌俳句賞のダブル受賞。帯
で作家の川上弘美氏が「みずみずしさは作りはじめの頃と変わらず、句の中の世界
はいよいよ深まり、「池田澄子」という唯一無二の詩形が、ここに極まっているの
である。」と記されています。
読んだときは、驚きを感じました。今までとは確かに違う句が散りばめられてい
るのです。8歳のとき戦争で父を失い、厚く師事していた師を失い、育ての父、母、
そして夫を見送る。80代半ばになられた今、自らの立ち位置を見据えたなかでの、
みずみずしさを湛えた句に感動を覚えます。欲張って10句記します。
長生きのあるとき蕪の葉が綺麗
また此処で思い出したりして薄氷
私生きてる春キャベツ嵩張る
リラ咲いて心の水っぽい夕べ
夕焼けのあとの渚に残るココロ
偲んだり食べたり厚着に肩凝ったり
いっときを我は人にて冬の月
しーっ牡丹に空気がうごかないように
秋ざくら情欲衰うるも快哉
ショール掛けてくださるように死は多分
photo: Kerry William Purcell
Twitter @kerrypurcell
ハンカチに海のかけらをくるみけり 和田 誠