2021年7月句会報 | sanmokukukai2020のブログ

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   2021年7月三木句会報

 

      「海の日」や浜辺育ちに嬉しい日        加藤光樹 

      青絵の具絞り切るかと夏盛ん          田中 梓  

       うす墨の八重葎描く病み上がり             

      和菓子屋の日除残して店じまひ         さとう桐子  

       炎天の午後は紅茶とサスペンス             

      浮いて来い明日のための深呼吸         樹 水流   

       雷鳴や指揮棒ひらり天を突く             

      夏の夜の心張棒を擽るな            國分三徳 

      風死すや魔法のとける二十五時         藤井 素  

       軒下の小さな宇宙釣忍               

      棒超えし胡瓜の蔦の空つかむ          白樫ゆきえ 

       酢漬けして青唐辛子の静寂              

      棒になり受けし手術や半夏生          大塚楓子  

      雨上がり片手に一つ茗荷の子          澤橋 凜  

       山道の夕日に染まる落とし文            

      ジーンズに太ももはちきれて炎天        太田酔子 

      抽斗の隅にアイスの当たり棒          関本朗子 

       棒読みのとなえ詞や夏祓               

       匂い立つ杜の緑や夕立あと             

      目覚めては棹棒打星夏の夜           佐藤花子    

       準急にひらと飛び乗る夏の蝶                 

      梶の葉に平和を祈る一筆や           佐々木 梢     

      水馬日輪めぐり百万歩             関根瞬泡  

      棒読みも褒めて新米教師かな          草野きょう子  

      大賀蓮歴史の眠り覚めて咲く          山崎哲男  

      片影にペリエ飲み干す昼下がり         小泉真樹

      百均の浴衣百均の笑顔で            有馬英子  

      ワクチンに難民のごと並ぶ夏          原宿美都子    

      子の夢を短冊に乗せ形代に           幸野穂高    

      分別を捨ててががんぼヒップホップ       飛鳥遊子   

       暗渠からワライカワセミの高笑  

 

     一気に猛暑がやってきた7月句会、10点越えは出ませんでしたが、複数の方々

   が複数の高点句を出されました。11作もある5点句は、いくつかについて触れて

   みたいと思います。

    絶好調キープの梓さんの「青絵の具絞り切るかと夏盛ん」。木々の繁茂の勢いを、

   絵の具のチューブを絞りきり青緑色をパレットに盛るほどであると表現されました。

   5点句の「うす墨の八重葎描く病み上がり」もありました。もう一つの10点句は

   桐子さんの「和菓子屋の日除残して店じまひ」。コロナ下での飲食店が大打撃とは

   また違う、老夫婦が営む町の和菓子屋をイメージしました。ひっそりと店じまいす

   る感じが出ています。女性ばかり10名の選です。5点句の「炎天の午後は紅茶と

   サスペンス」にも、同感の手が伸びました。余談ながら、土曜日の午後のBS、ア

   ガサ・クリスティー原作のテレビドラマシリーズ「名探偵ポアロ」は、さすがの原

   作の冴えがあり見応えありです。

    9点句は水流さんの「浮いて来い明日のための深呼吸」。季語は「浮いてこい」

   で、水に浮かせて遊ぶ遊具。水面に浮いたら深呼吸して新たな一歩を進めよう!と

   励まされます。こんな不穏なご時世にぴったりの一句になりました。兼題の「棒」

   を使った5点句「雷鳴や指揮棒ひらり天を突く」もありました。8点句は遊子の

   「分別を捨ててががんぼヒップホップ」。季語の「ががんぼ」は細長い6本の足を

   不器用に動かす蚊の親分のような虫。ヒップホップは、黒人から流行った独自のス

   タイルを見せる自由なダンス。もっと自由に生きようよ!との願いを込めて。他に

   「暗渠からワライカワセミの高笑」の5点句も。暗渠の多い街は、果たして洪水に

   強いのか、暗渠の上の緑道は安全なのか。昨今あちこちで顕になっている都市開発

   の盲点を嗤うかのような鳴き声の皮肉。

    7点句は3つ。「夏の夜の心張棒を擽るな」は三徳さん。グダグダにならないよ

   う突っ張り棒でなんとか頑張っているのに、くすぐっちゃダメ、みたいな? 楽し

   いですね~。英子さんと遊子の特選でした。素さんの7点句は「風死すや魔法のと

   ける二十五時」。いかようにも読める句ですが、ぴたりと風の止んだ深夜、魔法が

   とけて何かが起こる‥‥という感じでしょうか。素さんには6点句の「軒下の小さ

   な宇宙釣忍」もありました。観察の目が捉えたゆきえさんの7点句は「棒超えし胡

   瓜の蔦の空つかむ」。もう一つの6点句は「酢漬けして青唐辛子の静寂」。下五の

   静寂がお手柄です。こんな具合に飛ばせるようになると句作りが楽しくなりますよ

   ね。酔子さんの特選です。楓子さんの6点句は「棒になり受けし手術や半夏生」。

   深刻な状況ながらユーモラスにみる余裕も。麻酔をかけられればもう俎板の鯉、棒

   です。季語の「半夏生」は、夏至から11日目、7月2日頃、の意味と、ドクダミ科

   の多年草の、2つの意味があります。多分、前者の意味で使われたのでしょうか。

   最後の6点句は凛さんの「雨上がり片手に一つ茗荷の子」。体験を素直に読まれた

   句のように感じます。しっとり濡れた茗荷の色や感触が伝わります。「山道の夕日

   に染まる落とし文」の5点句もありました。

    今回、珍しい言葉を使われたのは花子さんの”棹棒打星”=実現できないことに労

   力を使うこと。また、思い通りになりそうでいて、どうにもならないもどかしさの

   こと。兼題の「棒」、ちょっと発想を広げにくかったかもしれませんね。来月は

   「数」。

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                                                                                  photo: y. asuka

                                           稲も蝗ももの狂ふかな卑弥呼の国         高柳重信