11月句会報 つづき | sanmokukukai2020のブログ

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    さて、珍しい言葉がいくつかありました。梓さんの「弓なりの海嶺鎮め月の射て」

   の海嶺は大規模な海底山脈のこと。地震につながるようで怖い気もしますが、梓さ

   んは雰囲気のある一句に仕立てました。作者の心奥の深さをうかがわせる佐藤鬼房

   の「海嶺はわが栖なり霜の聲」があります。 もう一つ、「琉球弧描く列島冬に入り」

   の琉球弧。九州の南から台湾へ弧状に連なる島列のこと。素敵な響きを持つ言葉だ

   と思いましたが、列島冬に入る、と続いたのが残念でした。夏あたりに、もう一度

   作ってみてほしいですね。

    さらにさらに、耳慣れない言葉が‥。酔子さんの「離層とは命のベクトル葡萄枯

   る」の離層。葉、花、果実などが茎から脱離するときに、それらの基部と茎との境

   界面に生じる特別の細胞層。自然の摂理の中にはシンボリックな現象が多くあるの

   ですね。学びました。そして、天に目を移すと水玉さんの「冬の耳惑星αをキャッ

   チせり」。ケンタウルス座α星は、ケンタウルス座で最も明るい恒星で、全天21の

   1等星の1つ。目ではなく耳がキャチしたのがミソです。各々の言葉について関心の

   ある方は、ご自分で深掘りしてくださいね。

    馴染みうすい言葉を一句に持ち込むことは、功罪相半ば。新鮮でインパクトの強

   い句になる一方、その言葉に頼ってしまい、本当に句としていいものになるかも難

   しいところです。深く自戒します。子曰く”平易簡明な言葉で心ゆさぶる句が作れる

   ことが最良”とも。これこそ、一番難しいことですね。日本語には和語、漢語、四文

   字熟語など、豊かな言葉があります。好きな言葉や表現に出会ったら自分だけの「こ

   とば帳」を作っておくのも、作句のきっかけになりそうです。

                             

   2021年が明るい年になっても、それほどでなくても、どなたかがおっしゃった、

   ”コロナ禍の日々、俳句に救われました” を励みに、通信句会を続けて行きたいと思

   います。

 

  

 

   

   さて、ここからは瞬泡さんの添削コーナーです。

 

   石蕗の花荒れ庭のすみ黄に匂う    大塚楓子

   この句、季節感があって、とてもいいのですが、ちょっと言い方を変えると、もっ

   とよくなります。石蕗の花は普通、黄色い色をしていますから、「 黄に匂う」と言

   いたい気持はよくわかるのですが、ここは押さえて、   

   荒れ庭の隅に匂うや石蕗の花    とすればいいでしょう。

 

 

   個展観て音曲に出会ふ秋日和    幸野穂高

   この句も秋の季節感が出ていて、とてもいいのですが、言い方を工夫すると、もっ

   とよくなります。「音曲」というよりも、この句の場合は西洋的な響きを持つ「音

   楽」という言葉の方が適当ではないでしょうか?そこで、   

   個展観て音楽に逢う秋日和   としたらいいでしょう。

 

 

   親亀の背中に乗って天高し    國分三徳

   この句も秋の季節感が感じられ、その上、ユーモア感もあって、とてもいいのです

   が、少し言い方を変えると、もっとよくなります。そこで、   

   親亀の背中に子亀天高し   としてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

                                                                              photo: yuko asuka

                                              桃いろ多き明治の駄菓子秋風に       古沢太穂