2020年 4月句会報  | sanmokukukai2020のブログ

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   2020年4月三木句会報

 

 

      木の芽時木々の元気に励まさる      光樹

      野火迫る誰かが風を読み違え       英子

      故郷や今も単線花の帯          梢 

      ふるさとは母の月日と山桜        きょう子 

      帰り着く桜蘂降る生家かな        梓  

      消しゴムの跡ばかり春というのに     水流 

      チューリップ愛でる子等無き学舎に    ゆきえ

      春の雲グーグルアースで旅に出る      朗子  

      お笑ひの國へゆくなら花筏        水玉 

      囀りやレコードの針のよく揺れる     瞬泡 

      マスク二つ作りし午後のアマリリス    汐  

      春の雪へ音記号の音奏で         花子 

      ベビーバスほどの池にも春の光      楓子 

      子等さとす老師の微笑や花御堂      穂高 

      蜘蛛の糸マスク求める初夏の群れ     哲男 

      退院日数える呼吸浅利めし        美都子 

      花ミモザ咲きあふれ春あふれけり     凛  

      泥まみれ満面笑みのむつごろう      三徳  

      うつばりは肺腑に打たれ比良八荒     酔子 

      教え子ら別れ惜しむや花の下       秀隆 

      山鳩は群れず不条理の春啄む       遊子  

 

 

 

    今月も英子さん快調。「野火迫る誰かが風を読み違え」、誰かって、そうあの人

   ですよね、っと思った方々の特選3つの10点句。9点句の「春愁の欠片で作る万

   華鏡」は、覗いてみたくなるような美しい句です。他に5点句の「行春の真逆の坂

   にいる途中」も。どの句も象徴性が際立ちます。クリーンヒットを飛ばされたのは

   梢さんの10点句「故郷や今も単線花の帯」。故郷は佐賀だそうです。細かいこと

   を言えば、故郷や、で切れず、故郷は、と主語になるべきかもしれません。「ふる

   さとは母の月日と山桜」はきょう子さんの8点句。見逃してしまいそうな楚々とし

   た風情ある一句を、特選1つと7名の方が見逃しませんでした。ふるさと、とひら

   かなにされたのも効果的でした。山桜の淡い色合いが母の月日を彩っているようで

   す。

    7点句は6つあります。梓さんの「帰り着く桜蘂降る生家かな」、水流さんの

   「消しゴムの跡ばかり春というのに」、朗子さんの「春の雲グーグルアースで旅に

   出る」、ゆきえさんの「チューリップ愛でる子等無き学舎に」、遊子の「山鳩は群

   れず不条理の春啄む」と「人並の憂鬱くるむ春ショール」。梓さんには6点句「躑

   躅には嘘を隠せる蜜の味」、朗子さんには5点句「試されるヒトの叡智やしゃぼん

   玉」もありました。「お笑ひの國へゆくなら花筏」は水玉さんの6点句。愉快な句

   です。一見結びつかないものをぐいっと連結した力技です。英子さんの特選。5点

   句は3つ。瞬泡さんの「囀りやレコードの針のよく揺れる」は、季語との取り合わ

   せが絶妙で、お手本のような一句です。さらに汐さんの5点句「マスク二つ作りし

   午後のアマリリス」と花子さんの「春の雪へ音記号の音奏で」。どちらも安心して

   鑑賞できる佳句だと思います。マスクは冬の季語ですが、この春からは通年になり

   そうですね。花子さんの句、ヘ音記号が低音部を表すということを知っていれば、

   春の雪との取り合わせの妙が感知されますね。

    今回の注目句は酔子さんの「うつばりは肺腑に打たれ比良八荒」。うつばりは梁、

   うつばりの塵を払う、として聖書マタイ伝福音書の言葉から。ウイルスは肺腑に巣

   食う。比良八荒は3月末琵琶湖に吹き降ろす冷たい風で春の季語と、この3つから

   揚句を鑑賞してみましょう。噛みごたえのある難解句です。

    今回もうっかりの季重なりが目につきました。ざっくり見て84句中9句に季重

   なりがありました。そして、三木句会では、ふりがなはご遠慮願っておりますよ~。

                                   (遊子・報)

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