旧西側諸国(民主主義国家)は、特に領土においては力による現状変更はこれを認めないという立場。これは高市首相に限らず、米国、そして台湾(約10か国から国家として承認されている)も同じ。今回の件も、その延長なのですが。
台湾有事とは何か:正統性の象徴政治としての構造的対立(知ったかぶりが長くなってすみません)
台湾有事とは、単なる軍事衝突の可能性ではなく、中華民国と中華人民共和国の間に横たわる「国家の正統性」をめぐる象徴的対立構造である。これは、領土や政権の争いではなく、孫文の革命理念を誰が継承しているかという“後継者争い”の延長線上にある。
1911年の辛亥革命によって清朝が倒れ、中華民国が樹立された。孫文の掲げた三民主義(民族・民権・民生)は、中国近代化の理念的支柱となった。特に、人口の大多数を占める漢民族にとって、辛亥革命は清という他民族王朝からの支配を終わらせた民族的解放の象徴であり、単なる政権交代ではなく「民族の再主権化」として深く記憶されている。このため、辛亥革命を歴史から消し去ることは、共産党にとっても不可能である。
中華民国(台湾)は、憲法と制度の中に三民主義を組み込み、首都を台北に移した後も、中国全土を領土とする正統政府であるという立場を維持している。一方、中国共産党は孫文を「革命の先導者」として称賛しつつも、1949年の人民革命によって政権を奪取した。しかし、中華民国に対して明確な米国が英国に対して行ったような「独立宣言」を行っておらず、旧体制からの法的・政治的断絶を明示するプロセスを欠いている。このため、中華人民共和国の正統性は制度的に曖昧なままであり、共産党の革命は“未完の革命”として見なされる((人口の大半を占める漢民族から)危険を孕んでいる。
この矛盾は、人民解放軍の性格にも表れている。人民解放軍は制度上「党の軍隊」であり、国家の軍隊ではない。しかし、中華民国が存続する限り、中国共産党は人民解放軍を“国家の軍隊”として振る舞わせざるを得ない。これは、国際社会に対して「中国の正統な軍隊は我々である」と主張するためであり、同時に国内に対しても「国家統一を担う正統な軍事力」としての演出が必要とされるからである。制度的には「党の軍」でありながら、象徴的には「中国軍」として振る舞うという二重構造が、台湾問題における軍事的緊張の背景にある。中国憲法に「台湾は中国の一部」と明記されている以上、たとえ実際に有事が発生していなくとも、人民解放軍は常に台湾に銃を向けている状態を維持しなければならない。これは、台湾を脅かすためだけではなく、国内の国民に「党は統一を諦めていない」というメッセージを発信し続けるための政治的演出である。
結論として、台湾有事の本質は、武力衝突の可能性ではなく、中国共産党が自らの正統性を維持するために台湾に銃を向け続けなければならないという象徴政治の構造的必然性にある。そしてその根底には、孫文の理念をめぐる後継者争いと、漢民族にとっての辛亥革命の民族的記憶という、歴史と制度を貫く深層的な対立構造が存在している。
つまりは これは 中国国内の漢民族向けです。





