見分けがつかぬ中国共産党と日本の野党による集団的自衛権批判 | 産経新聞を応援する会

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見分けがつかぬ中国共産党と日本の野党による集団的自衛権批判


 参議院で7月27日に始まった安全保障関連法案の審議を聴こうとテレビをつけ机に向かったが、中国が発した日本の集団的自衛権批判を扱う番組と勘違いし、チャンネルを替えようと振り返って驚いた。参院本会議で質問に立つ民主党の北澤俊美氏(77)が映っているではないか。北澤氏はこう言った。

 「憲法違反の法案、立憲主義を理解しない首相。この組み合わせが安全保障法制だ」

 
酷似の集団的自衛権批判

 北澤氏の質問は、中国国営新華社通信が発信した中国共産党のプロパガンダにソックリだった。安保関連法案が衆院平和安全法制特別委員会で可決(7月15日)されるや、新華社は速報で批判を繰り広げた。

 《広く違憲と考えられている/(成立後)海外の武力衝突地域で、自衛隊がより大きな任務を果たすことを許す/憲法第9条は明らかに自衛隊の海外での戦闘と集団的自衛権行使を禁じている/日本政府は制約を撤廃すべく違憲解釈をした》
中国の批判は明々白々。日本が極めて限定的ながらも、米国はじめ民主国家との間で集団的自衛権を行使できるようになると、日本領域奪取など軍事膨張を背景とする中華秩序建設の妨げになるためだ。

明らかに、中国は危機感を抱いている。逆説的には、政府が整備を進める関連法制は、中国に侵略を躊躇させる抑止力に成り得る証し。

 だのに、左翼野党は中国ではなく、日本政府にファイティング・ポーズを向ける。日本共産党の市田忠義氏(72)に至っては、中国共産党顔負けの切り込みを展開した。

 「憲法と国民主権の蹂躙で、立憲主義の原則に反する歴史的暴挙だ。米国の戦争に自衛隊が参戦し、海外で武力行使を行おうとするものだ。クーデターともいうべき法体系の破壊だ」

 左翼野党には、中国の膨張に対する強い危機感が見られぬばかりか、もはや左翼野党と中国共産党による日本政府への中傷は見分けがつかぬ。

そも集団的自衛権は全国家が権利を有し、ほとんどの国家が行使を前提に安保体制を整えるが、日本のみ行使できない。左翼野党は、国際社会を武力をもってかき乱す中国も、北朝鮮も、ロシアも眼中になく「日本は世界で一番アブナイ国」と断定している。



今国会成立を望む石垣市

 一方、外交的配慮もあり、名指しに慎重だった安倍晋三首相(60)は憂慮を明確にした。7月28、29日の参院特別委で、岩礁を埋め立てて軍事基地を急造し、資源を違法開発する中国を名指しで指弾。法制整備が中国の強引な海洋侵出に歯止めを掛ける旨を強調した。

 (1)南シナ海で中国が大規模な埋め立てを行い、東シナ海のガス田でも(日中共同開発の)合意が守られていない(2)こうした力による現状変更はできないと理解させつつ、平和的発展への方針変更を促すことが大切。

法制を整備し、日米同盟が揺るぎないと内外に示すことで、わが国の平和と安全を守り抜いていける(3)中国の力による現状変更の試みには、事態をエスカレートすることなく、冷静かつ毅然として対応していく。

 抑止力強化=戦争回避を目指す至極もっともな法制整備理由と思う。ところが、北澤氏は「覇道」、市田氏は「独裁の道」と、軽々に法案にレッテルを貼る。「覇道」「独裁の道」こそ、中国に浴びせる言葉であろう。

日本を危険視し、中国に寛大な左翼野党を尻目に、中国が占領を狙う尖閣諸島を市域に抱える沖縄県石垣市議会は7月15日、法案の今国会成立を求める意見書を可決したが「永田町では感じ得ない肌感覚の危機感を持っている」(首相)。

 もっとも「危機感」は持つが、政治的に封印する政治家もいる。民主党の枝野幸男幹事長(51)は会見(7月29日)で「特定の国名を出して話をすることは避けるべきだ」と指摘し、政府の「焦り」だと切って棄てた。

枝野氏は意外にも、中国へはそれなりに厳しい態度を採ってきたが、この日はなぜか変心した。小欄はむしろ、安倍氏が中国を名指しするはるか以前より、日本を日常的に名指し批判してきた中国の「焦り」を感じる。例えば、5月発表の国防白書《中国の軍事戦略》。

 《日本は戦後体制脱却を目指し軍事・安全保障政策の大幅な調整・変更を進め、地域諸国に重大な懸念を誘発した》

 
国民の姿勢にも問題

 《地域諸国に重大な懸念を誘発》しているのは中国で、主要国もASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国も、日本の集団的自衛権行使をこぞって歓迎。《重大な懸念を誘発した》のは、誼を通ずるわずかばかりの無法国家だけだ。

 否、日本の左翼野党も《重大な懸念を誘発》された。国際社会が支持して、無法国家と左翼野党のみ反対する様子は、天下の奇観である。

 審議では、左翼野党が「国民の理解が深まっていない」と連呼。「戦争法案」へと問題を単純化し、国民の不安を煽る。同時に、なぜ今必要なのかをけむに巻きながら、出自の怪しい故に分かり難い憲法や法律をこねくり回し議論を複雑化する。

国民は単純化された「戦争法案」なる看板の前で凍り付き、複雑な議論が耳に入らない。産経新聞の投書欄に載った岡山県の中学校講師(33)の声を抜粋したい。

 《国会中継を見て、新聞やインターネットで関連記事を熟読した人は、おそらく少ないだろう。多くが、編集されたニュース番組などを見た程度ではないか(略)国民の姿勢にも原因があるように思えてならない》

 《編集された番組》という箇所で目が留まった。授業中、生徒に《もうすぐ日本は戦争を始めるんですよね》といわれた福岡県の中学校教員(30)も、生徒ではなく《社会に関心を持ち始め、成長途中の中学生に、いいかげんな感覚を植え付ける社会に》怒っていた。

 《まことしやかに流される「情報」には中立を欠くものが多い。

国会で議論されている安保法制に関しては特に顕著で(略)ネガティブなキャンペーンを執拗に繰り返す一部マスコミが中学生を不安に陥れている(略)生徒に「全くその逆だ」と答えた私は、それから1時間の特別授業を始めた》

 左翼野党や《一部マスコミ》はぜひ《特別授業》を受けていただきたい。(政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS