「福島は広島にもチェルノブイリにもならなかった」 高田 純⑤ | 産経新聞を応援する会

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除染センターを建設し復興させる

 内部被曝については、筆者は、放射性ヨウ素による甲状腺線量と体内セシウムによる線量を現地で検査している。これまでに百人以上の希望者について、二本松、福島、南相馬、いわき市、郡山で検査した。検査した六十八人の県民の甲状腺線量は八ミリシーベルト未満。八月までの乳児、幼児を含む五十二人の県民のセシウム検査では、ほとんどの内部被曝が〇・一ミリシーベルト未満である。特に子どもたちのセシウム内曝は今のところ全員が〇・一ミリシーベルト以下である。この内曝その場評価方法は、筆者は旧ソ連の被災地でのロシア科学者との共同調査などを通して独自に開発したものである。

 小さな子どもたちは大人に比べて放射線影響が三倍くらい大きいので、注意が必要である。これまでの調査結果は、飯館村などで大人の外曝が仮に三ミリシーベルトとしても、三倍で子どもは九ミリシーベルト相当となる。これなら安全範囲と言える。実際には、個人線量計を政府が装着させていないので、本当の値は分からないのだが。

日本の放射線防護の科学力では、外曝と内曝のどちらも、正確に評価できるのだが、菅政権はその科学力を活用しなかった。これが一番の問題である。そのため、非専門家たちの想像力で怪しい過大な線量値が多数の県民と国民を不安に陥れてしまったと、筆者は見ている。

 今後、筆者が実施している福島県民に対する科学的な放射線衛生調査を、国の責任で希望者に対して行うべきである。間違っても、県民をモルモット扱いしてはならない。低線量を、それぞれの県民が知ることにより安心することが目的である。また、特に二十~三十kmの農業や酪農を復興させるための科学プロジェクトを早急に立ち上げ、住民の個人線量が年間一ミリシーベルト以下になり、作物のセシウムが基準値以下となるように、表土の除染を国の責任でする。さもなければ、福島の農業は崩壊する。これが、七月二十七日都内での福島支援のシンポジウムでの筆者の基調科学講演での提言である10。直後に、総理官邸へ意見として送信した。野田佳彦新総理には、福島復興に強い姿勢を期待したい。

 二十km圏内に、表土除染センターを複数建設し、住民らに働いてもらう。その事業の結果、農業・酪農が再建することになる。そのためには、一兆円、二兆円かかっても良し。世界に日本の科学力と強い意思を示そうではないか。

福島は広島にもチェルノブイリにもならなかった事実を、復興という形で世界に発信するのだ。これが、戦後日本の歪んだ姿勢を改めることになる。

[参考文献]
1 高田純 広島平和公園の碑文は撤去すべし、  アパグループ第3回「真の近現代史観」懸賞論文優秀賞、2010
2 高田純 「核と刀」 明成社、2010
3 高田純 「福島 嘘と真実」医療科学社、2011
4 高田純 「世界の放射線被曝地調査」講談社、2002
5 高田純 「中国の核実験」医療科学社、2008
6 高田純「核の砂漠とシルクロード観光のリスク」医療科学社、2009
7 高田純「核爆発災害」中公新書