一つ目の職場体験は、残念ながら三日間の予定だったものが、一日で終わってしまった。
そして続いて二つ目の職場体験に向かおうとした、その日の朝である。
いつも通り、六時ごろ布団の中で目を覚ますと、なんとなく左足のふくらはぎがだる重い。
気のせい、気のせい、と自分に言い聞かせながら支度をし、二つ目の職場体験の場所へ徒歩で向かった。
しかし歩くにつれ、その違和感は鈍痛に変わり、さらにどんどん痛みを増していく。
筋肉痛でもない。どこかにぶつけたわけでもない。急に無理をした覚えもない。
理由が分からないまま、とにかく症状だけが着実に悪化していった。
職場体験の場所に到着し、これまで電話でやり取りをしていた責任者の方と挨拶を交わす。
優しそうで、とても感じの良い方が、今日の作業内容を丁寧に説明してくれ、私の担当、面倒を見てくださるIさんを紹介してくれた。その時点で、すでに左足の痛みはかなり強くなっており、これまで何度か経験したことのある、生理痛のときに貧血になる直前の、血がすーっと下がっていくような感覚が出始めていた。
内心、「まずいな」と思いつつも、表情だけはできる限り平静を装っていた。
「頼む……今日だけはもってくれ……」と思いながら着替え、Iさんの指示に従って体験場所へ向かう。
この日は加工作業の体験だったため、衛生管理は非常に厳しい。
着替えを終え、ゴミや髪の毛が付着しないようにコロコロをし、手を念入りに洗い、いよいよ現場へ――と思った、その時である。
「あれ? くらくらする」
左足の痛みが引き金となり、血が下がって貧血のような状態になり、気持ちが悪くなってしまった。
まさかの、開始前リタイアである。
やむなく、その場で休ませてもらうことになった。
何たる体たらくである。
しかし、ここで無理をして倒れてしまえば、さらに大きな迷惑をかけてしまう。
貧血症状の程度は自分で分かっている。
非常に残念で悔しかったが、ここは潔く撤退すべき状況だと判断した。
少し休ませてもらっても回復せず、やむなく体験は中止となった。
すると心配してくださった責任者の方が、なんと車で私の住居まで送ってくれるという、神対応。
申し訳なさとありがたさで、胸がいっぱいになった。
どうしても職場体験に行きたかった私は、送ってもらったあと、普段なら行かない病院にまで足を運び、痛み止めのロキソニンまで処方してもらった。
ここまで来ると、もはや本気である。
ところが次の日。
何事もなかったかのように、体は元気だった。
捌いても捌いても次々と水揚げされてくるイワシを、ひたすら捌く。
捌いても捌いても、まだ来る。
そして気づけば、お土産までいただいていた。
あの左足の激痛はいったい何だったのか。
未だに原因は分からない。
にしても、どこへ行っても、この島の人たちは本当に温かい。勿論移住者の人もいる。
でも、どの人も決してべたべたとした親切さではない。
けれど、行動や言葉の端々に、見返りを求めない優しさがある。
私がどういう人間であろうと関係なく、
「一人の人として大切に扱われている」
そんな感覚になる。
なんて素敵な温度感なのだろう。
私は来てみて、本当にこの島が気に入ってしまった。