きのこ歴30年。
その歴史の中でひときわ人々の記憶に刻まれ、そして後の世に語り継がれた合宿がある。
西暦2006年、日本は小泉総理の時代。
菌学会は東北、関東、西日本3つの支部が互いに研鑽を競い、
荒ぶる猛者?が野山を駆け巡っていた。
最強合宿伝 仙国演義!
「我の会話(2番)」
それがささやかな少年の趣味のためでも 我は律儀に語りかけた
町に埋もれて生きるのがいやに思えて 季節季節に雨を待った
これはなに?彼が尋ねる クリタケと我は答える
野山にしみる雨で 菌類の成長を促す
限られた予算の中 無駄遣いしないように
息をアラゲきつい 山登り後を追っておいでよ


採集2日目の成果品。
以前にもホウキタケ属の一種として紹介したことのあるものに似ている
ピンクのホウキタケ。色合いも美しく、サンゴのよう。
こういうものは従来「ハナホウキタケ」とされていたもの。
この正体を調べられるのは、誤の酒后だけだ。

これもまたちがうホウキタケ。
じつにいろんなものがある。

今度は真っ黄色なもの。従来は「キホウキタケ」とされていたのだろう。

ヤマナラシノアオネノヤマイグチ。アオネノヤマイグチに似ているが、ヤマナラシの樹下に発生し、カサの色などが淡いという。

キショウゲンジ。ショウゲンジの仲間だが、ショウゲンジのように食用ではない。
全体的に黄褐色。

こちらもシシタケ。

「珍菌」と書かれているが、ホコリタケのように内部から胞子を噴出するきのこ、
「ダンゴタケではない」という。

こちのほうはダンゴタケ属の一種だという。
これを同定しているのは、大学院生で、「腹菌類」を主に研究している。
頭頂部がくぼんだように孔が開いて胞子が出ている。

ベニタケ属の一種。
色彩がちょっと独特で、カサの中央部が紫、周辺部が草色、柄は白又はピンクを帯びており、
ヒダは黄白色。さわったり傷ついた部分が黒く変色する。
黒く変色するものに「イロガワリベニタケ」というものがあるが、これはちょっとちがう。
3年後に京都でも同じものを目撃することになる。

全体的にややココア色で、先端部が水色のホウキタケ。
これを分析できるのはやはり誤の酒后だけだ。

シロハツに似ているが、ヒダはやや青みを帯びている。
普通なら、「アイバシロハツ」というところだが、なんでも、仙台方面ではこの程度の青みではアイバシロハツとはいわないのだという。同じ名前で呼ばれているきのこでも、地域によって認識がちがうこともあるようだ。
こうして全国から多くの参加者が集まった大合宿も終わりを迎えた。
撮影し損ねたが、最後の集会のあいさつで、誤の酒后は感極まって涙を見せた。
擬の妖菌王は「鬼の目にも涙」と例えた。

帰りの仙台駅で、牛タン定食を食べた。
牛タンには麦飯と白ネギの入ったスープがついている。
最後にこれを食べられてよかった。
さて、こうした全国からメンバーが集まるような合宿は、この2年後に今度は鳥取の大山で実現するのだが、その話はまたいつか。
誤の酒后はこの数年間、鳥取で大学生をしていたが、実は仙台出身。
実家が仙台にあるので、今度の地震以来、地元にもどっている。
元気にはしているようだが、どのような苦労をしているのか。
それにこの仙台合宿でお世話になった地元仙台きのこ会のメンバーは。
今年の1月くらい、たまたま妖菌王は今年はまた仙台に行きたいものよ、とのたまっていたが、しばらくは実現しそうにない。
しかし、このすばらしい地をまたいつか訪れたいもの。
困難な長い道のりだが、また訪れる日がくるだろうと思う。
そのときは酒后につきあってオールでもかまわない。
最強合宿伝 仙国演義
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