「国広っ!、これ見てくれよ!!」
兼さんが嬉しそうに見せてくれたのは小さな手まりの根付だった。新撰組のだんだら模様の羽織をイメージしたもので、主さんが作ったものらしい。
兼さんはその紐の部分を摘んで高く掲げたり目を細めたりしてずっと眺めている。
僕に「見てくれ」と言った割にはずっと自分で見ている。それじゃあんまりよく見えないよ、とは心の中でこっそり呟いた。兼さんがあまりにも嬉しそうなので、邪魔しちゃ悪いかな?と思ったのだ。

そんな僕を訝しんだのか、兼さんはパタリと動きを止めて何も言わない僕の方をチラリと見る。
「へへっ、主がくれたんだよ。国広、おめぇのもあるぜ!」
不意に兼さんは何かを投げてよこした。驚きつつも慌ててキャッチすると、それは小さな金色の鈴のついた手まりの根付だった。
「お揃いだな」
顔の横に自分の根付を持ちながら、覗き込むようにこちらを見る兼さんは相変わらず嬉しそうだ。
何だか僕も嬉しくなって、兼さんの掲げる根付に自分の手の中にある根付を寄せてみた。少し小振りだけど兼さんのと同じ模様があしらってある。小さな金色の鈴も同じだ。
「きれいだね」
僕が言うと、兼さんはニカッと笑って
「他の奴らに持ってかれねぇようにしねぇとな」
と言って早速自身の本体に括り付けたのであった。新撰組メンバーは二人だけではないのだ。僕も兼さんに倣って付けてみた。兼さんとお揃いなのがとても嬉しかった。

兼さんは、少し前くらいから、この本丸の審神者さんと、ちょっと特別な関係にあるようだということに気付いた。何となくお互いがお互いを意識している、そんな感じ。ハタから見ていると初々しいというか、焦れったいというか、甘酸っぱいような。何処となく可愛らしい感じに見えた。

僕は兼さんの相棒だ。
と同時に、主さんもかけがえのない人だ。僕は大切な二人のことを、付かず離れず見守ろうと思っていた。

だけど。
本当は少し、多分ほんの少し。
僕はほんの少しだけ主さんに嫉妬していたのだ。
そうと気付いたのは、兼さんの腕の中で兼さんが僕を呼ぶ声を聞いている時だった。

目を開けているはずなのに何も見えない。
暑さも痛みも何も感じない。
ただ兼さんが必死に僕を呼ぶ声が聞こえるだけ。

今この瞬間は、兼さんは僕の方を見てる。

通常審神者は戦場には出ない。
だから兼さんの腕の中で最期を迎えるのは、主さんには出来ない事。
僕にはそれが出来る。
少しだけ優越感を持った。

兼さん、
兼さん、
兼さん・・・

僕はいつも通り兼さんの呼び掛けに応えた。
そのつもりだけど、多分、きっと、届いては いない、かも