心踊るままに遠くを見渡すと、畑の向こうの方に小屋が連なっているのが見える。薄暗くて分かり辛いが、どうやら馬がいるらしい。何頭もいるらしく、そこで作業している人も何人かいるようだった。気付けば、馬のいななきも聞こえてきた。それに混じって鶏のコッココッコなく声も聞こえてくる。馬小屋の前を鶏が自由に闊歩しているのが、小さな点として見えた。意識していなかったから、おそらく見えていても聞こえていてもスルーしていたのだろう。そんな自分の感覚も、とてつもなく面白かった。

 

畑と馬小屋と鶏が近いのはそれらの糞尿が肥料になり得るからだろうと推測する。今この国でそのような農法を行っているのはどのくらいあるだろうか。ほとんど聞いたことがない。この『歴史資料庭園』はきっとそういうものも含めて再現しようとしているのだろう。畑と肥料の流れがあり、きっと循環しているのだ。循環が上手く行っていれば、この施設の入場料がお値打ち価格なのも頷ける。

 

本当は映像でしか見たことのない馬や鶏を間近で見たかったのだが、『←順路』はそこで折り返しとなっていた。

名残惜しくも自分はそれに従った。そんな折、畑で作業している人がこちらに気付いたのか、立ち上がって手を振ってくれた。何だか嬉しかった。

「お疲れ様です!!」

声が届くかは分からなかったが、自分も手を振り返し声をかけた。

 

順路を進んでいくと、大きな建物があった。

中からは威勢の良い声が響いている、ような気がする。自宅から駅へ向かう途中にある大きめの警察署の近くを通った時に、たまに聞こえる鍛錬の声のようだ。彼らは年始の仕事始めに古武術の演武をする習いとなっており、有志で仲間を募り体を鍛え、昔ながらの武術を見せてくれている。警察機構及びセキュリティシステムは監視ロボットが行い、ほぼオートモードである。”戦う”ために体を鍛えるなどということは、ほとんど行われていなかった。そんな必要はないのである。

 

察するに、この建物内で鍛錬をしているように感じられるよう どこにスピーカーが設置してあり、声が聞こえてくるのだろう。ここの建物の中に入ることも覗く事も出来ないようになっているので分からないが、とにかく本格的に再現しようとの試みがなされているのだろう。

 

そういうの、めっちゃいい!!。

めっちゃ頑張ってる!!

 

大きな建物の脇を通って『←順路』に従って進んでいくと、今度は建物の中に入れるようだった。こんにちは〜と扉を潜ってみると、そこは広い土間だった。右側の壁には大ぶりの刀が何本か掛かっていた。それと槍が2本、刃がまっすぐじゃない長い槍っぽいやつが立てかけられている。手に取ってみたい!!ガン見したい!!と思ったが、残念ながら土間の中央を歩くようロープが張られており、古い時代の武器っぽいやつをただただ眺めることしか出来なかった。

刀剣男士の元になったやつやんじゃないか??と思ったら、テンションだだ上がりだった。そもそも昔から神社仏閣とか刀とか鎧とか、そういったものが好きなので、テンション上がらない訳がないのだ。

頭の中で一致していなかったのだが、どうして祖母からもっとたくさん話を聞いておかなかったのか。今更ないがらにとても残念な気持ちになった。

 

反対側の壁には、大きな甕?と小さい腰掛けと手桶がいくつか置かれていた。水を流せるようになっていたので、部屋に上がる前に汚れた箇所を洗い流せるようになっているのだろう。これは何となく理解出来た。今靴を見てみると結構な砂埃でバサバサになっているのだ。ちょっと歩いただけでこうなってしまうのだから、戦から帰ってきたという場合があったとしたら。これはとても効率の良いことなのだろう。生活の知恵が垣間見られてとても面白い。

 

上がり框には、「靴はお持ちください」と電子掲示板に表示があり、その脇に袋が用意されている。

とてもレトロだ!!

これは、とても、面白いシステムである。

袋を手に取り、靴を脱いで中に入れる。そのまま持ち歩いて、別の場所でまた靴を履くのだ。

これは、結構歩くことになるのかな。

他に誰もお客さんはいないけど、変な靴下じゃなくてよかった!と、妙な安心感を覚えた。