俺は、燭台切に、全てを話した。
同じ『へし切長谷部』の筈が、情けない自分のこと。
この本丸で、自分なりにやっていると思っていたのに、役に立っていないということ。
それを自分で分かっていた上で、
信頼を置いている主から『異動勧告』を受けたこと。
話している側から消えてしまいたくなる。
しかしその感覚は何処か遠く、人ごとのように思った。
燭台切は、ただ静かに、俺の話を聞いてくれていた。
「俺は、俺は・・・主命とあらば、何でもこなすつもりでいる。そのつもりだが、・・前の主同様、またしても下げ渡しされるのは・・・」
グッと両の手に力が入る。
と、途端に包帯が赤く滲んだ。
「・・・長谷部くん、今日はもう寝た方がいい。ほら、僕が布団を引くから」
遠征から帰ってお風呂入ったよね?
主に呼ばれてクリーニング済みの正装(戦装束)に着替えて伺ったよね??
うん、なら、もうそのままでいいから。
上着だけ脱いで、着替えなくていいから。直ぐ寝て。
敷布団敷いたから。
枕置いたから。
はいここ寝転がって。
あ、その前にもう一回お水飲んで。
うん、うん。
掛け布団掛けるからね。
やや強引に矢継ぎ早に言う燭台切の言葉に、俺は素直に従った。
考える事を、俺の頭はほぼ拒否している状態のようだった。
「すまない」
すっかり寝支度が整って、それだけをやっと口にする。
燭台切は困ったような笑顔を見せて、首元の布団をポンポンと押さえてくれた。
「うん、大丈夫だよ。僕は散らかったのを片付けるから。少し煩いかもだけど、寝ててね」
部屋向こうには、読みかけだった本や資料、割れたガラスの破片が散乱している。燭台切は資料を整理し、ガラスの破片を集め始めた。
ガサガサという音と、カチャリカチャリという音が、部屋の静寂を埋めていく。
俺が見るともなしに ぼんやりとその動きを眺めていると、その気配に気付いたのか、燭台切は作業をしながら こちらを見ることもなく話し始めた。
「ねぇ、僕は最初期からこの本丸にいて、その様子をずっと見てきたよ。一振目の長谷部くんの事も、二振目の長谷部くんの事もも、三振目の君の事も。同じ長谷部くんだけど、皆んなそれぞれ頑張ってる。そして、それをこの本丸の皆んなは、よく知っているよ。・・・君はそれを知らないだけ。受け取ろうとしていないだけだよ」
「・・・・」
俺は何も返さなかった。
そんな事は分かっている。
頭では理解してはいるのだ。
ただ、主の一番でありたい。
それが、・・・叶わない。
叶わないばかりか『異動勧告』を突き付けられている。自分はこの本丸には不要と言われたようなものだ。
涙が出てきた。
俺は燭台切の姿が見えない方向に、体を向き直す。
本当は、皆の自分を見る目を、知っている。こうやって、一人で放り出されない自分がいるのも、知っている。
・・・有難くて、有難くて。
不甲斐ない自分で申し訳なくて。
やっぱり、何だか、辛かった。