「あ、すぐに次の任務始まるんだね」
時の政府から配信される予定表を確認しながら、審神者は言った。
先日に天保江戸の爆発物撤去及び調査が終わったばかりである。その為、審神者は刀剣男士の面々に本丸でゆっくりしてもらおうと思っていたのだった。
が、政府からのお達しであるため従わざるを得ない。
「任務なら、私も行こう」
審神者の執務室の隣にある談話室。
炬燵に正座し、湯飲みを天板に置いて水心子正秀は言った。
隣で同じく炬燵に入っている源清麿(胡座をかいてくつろいでいる)は、ちらりと相棒の方に目をやり、少し微笑んで茶を飲んだ。
「う〜ん、さっきも説明したけど・・・ここの本丸に新しく来た男士の皆さんには、ここに慣れてもらうのを目的に、最低5日間!!、任務について貰わないようにしています」
審神者は水心子と清麿の正面に来て正座した。何度か説明しているのだが、水心子は納得してくれない。どうしたものかと審神者は少し身を乗り出すような仕草をする。
審神者の動きに(炬燵に入るのかっ?)と驚いた素振りをみせる水心子だったが、審神者はただ炬燵の前で姿勢を正しただけだった。
即座にへし切り長谷部が審神者にお茶を出し、スッと後ろに控える。
この本丸の近侍はへし切り長谷部らしい。
跪坐に半眼で控える姿は静かで、それでいて周りの全てに気を巡らしている。存在感がない訳ではないが、それを感じさせない繊細な雰囲気を、清麿は受け取った。
「あぁ、有難いお気遣いだね。しばらくゆっくりさせてもらえるよ」
清麿はにっこりと微笑んで、茶菓子を一つつまんだ。美味い。藤の花を象った砂糖菓子は口の中でフワッと溶けて余韻だけを残した。
「しかし、それでは・・我々がここに来た意味が無いのではないか?」
水心子はちらりと審神者を見、すぐに視線を外す。
何度目かのやりとりだ。
全方向に意識を向けて頑なに自分を保とうとしているらしい水心子の様子に、審神者は己の近侍を振り返り、近侍の長谷部はどうしたものか・・と審神者に苦笑を返した。
「水心子は頑張り屋さんだね」
湯飲みを炬燵の天板に置いて、清麿は水心子に笑いかけた。
審神者と近侍の長谷部は、遠征に行く男子からの呼び出しを受けて、すぐ戻ると言い残し しばらく場を外している。
「いやっ、ぼ、僕は・・」
「これ、美味しいよ?」
清麿は言い淀む水心子の口に茶菓子を放り込んだ。上品な甘さが口の中に広がり、水心子は一瞬そちらに気を持っていかれた。
「頑張り屋さんだよ。早く任務について、この本丸に審神者に報いたい。そう思うのは、頑張り屋さんの証拠だよね?」
清麿は水心子の湯飲みに新しくお茶を注いでやった。そっと差し出すと、水心子はおずおずと湯飲みを受け取った。
「・・・刀剣男士としての、あるべき姿だ」
親友であるはずの自分の前でさえ、態度も言葉も崩そうとしない水心子の頑なさに、清麿は笑みを深めた。
「そうだね。だからその為に、ここの本丸に慣れた方が良いのかもしれないね。地に足がついていない状態で戦に出るのは、少し心許ないかな。僕にとっても、水心子にとっても、ね」
水心子はハッとした感じでこちらを見て、もそもそと茶菓子を口にして、小さく言った。
「そう、だね・・・うん、清麿の言う通りだ。5日間、ここのやり方とか他の男士に慣れるように、頑張るよ」
茶菓子を気に入ったのか、次々と口に頬張りながら、清麿の方に向き直り、にっこりと笑った。

