「あなや、続きはやらんのか?」
微妙な空気の中、三日月宗近が廊下からこちらへ姿を現した。何処となく残念そうだ。
どうやら舞の始まりに合わせて廊下でスタンバイしていたようだった。用意周到なことに、戦闘装束にきちんと己自身を佩刀している。どうやら
『東遊』の舞装束を踏襲してのことだった。(東遊の前奏と、一段二段の歌と・駿河歌一歌を全部やると割と長いので、佩刀する時間は十分あると思われる)
(えっ?、はぁ?、なにっ?!、宗近舞ってくれるの?。えっ、マジで?!)
「あっ、続きやります!!、駿河歌一歌終わりのところの、めっちゃ盛り上がる『ことこそよし』のところからやります!!、せぇのっ!!」
今の説明で、今剣も石切丸も繰り小刀丸も、バッチリ入ってくれた。
三日月宗近は、満足そうな笑顔になって(綺麗だなぁ)、自分が舞い始めと思う場所に移動し、見る方向を体ごと変えた。
(おぉ、こちらが正面になるんですね)
(うわわ、佩刀してるの結構重くないかな?大丈夫かな??)
駿河歌二歌の始まりが舞の始まりで、駿河歌一歌の盛り上がるところが舞人が方向を変える場所なのだ(確か)。
勢いがついた一歌から二歌に変わる時には、余り余白はない。
しかし、曲の早さは相当まったりした感じになるので、その表現が難しい。
ただ、三日月宗近のゆったりとした、しかしどっしりとした、というか、うーんどっしりというか安定感のある、しかし重さはあまり感じさせない舞は、見て楽の音を合わせやすいと思った。
舞のある曲は本来舞人に合わせるもので、舞人が楽に合わせるものではないらしい。本来のやり方で出来るようになるには、まず曲を知り、舞の手を知っている事が必要になってくる。もしくは舞い手が上手く楽人をのせられるかどうかなのだが・・・宗近は完全に後者だった。舞にのせられて楽をのせる。最高だった。苦労して譜面を暗譜して良かった!!!と、審神者は心から思った。
手数の少ないゆったりとした舞は、激しく舞う走り舞(はしりまい)よりも余程難しい。それを優雅で美しく舞う姿は、光源氏もかくあらんと思わせる程であった。
(何っ回も思うけど、暗譜してて!、暗譜してて良かった!!。眼福!、眼福過ぎるぅぅーーー!!)
舞は駿河歌二歌を過ぎ、求子歌で一応の終わりを迎える。
その間中、審神者は最高に幸せだった。
まさか本丸で雅楽曲の合わせが出来るとは、全く思っていなかった。
そして、自分の持つ繰り小刀が、よもや刀剣男士として?顕現するとも、つゆほども思っていなかったのだ。
(何か分かんないけど、とにかく有難う繰り小刀丸!!。今この瞬間超幸せだよー!!)
(ずっとこの時間が続けば良いな・・)
そんなことを、審神者は思った。
まあ、吹き続けるの結構しんどいけどね、、、、
