しばらく後、高麗笛と篳篥の音が鳴り響いた後。
絶妙なタイミングで一度、何処かで柏手が鳴った。
(えっ?、もしかして、音頭分かる人いるのかな?。えっ、えっ、すごくない?、コレって、すごくない??)
♪♪あ〜は〜れ〜〜ぇぇ〜〜〜
石切丸だった。
冒頭の歌い出しを石切丸が歌っている。
普段祝詞などで朗々と声を出している為か、めっちゃ良い声だと思った。
(うわっと!)
そんな感慨も、次の短いフレーズ吹かなきゃ!と吹っ飛ぶ。
今剣はこちらを見計らって入ってくれた。高麗笛との次の短い合わせもピッタリだった。
(多分日本人しか出来ない『空気読む』が、ここで発動っ!?。凄い!)
♪♪お〜おぉ〜〜お〜〜〜〜⤵️(×4)
♪♪は〜れ〜む〜な〜、あ〜あぁ〜・・・
(うわっ、うわうわうわっ!!、ほんまもんの本場のアレじゃないですか?これ??)
篳篥のフレーズがひと段落し、筆頭の歌い手(音頭)がソロで歌うところで、審神者は混乱した。千年前の当時を知っているかも知れない男士が、歌ってる・・それは、もう、ほんまモン・・ほんまモンを見ていると、そういう、事!、ですよ、ね??!
(うわっ、和琴!!、和琴ないのめっちゃ残念!!)
♪♪〜〜〜 と〜とぉ〜の
へろ〜な〜 あ〜ぁ〜あ〜〜ぁ
(うわっ、付け所!。誰か歌他に付けてくれないかな?。うーーん清光と光忠は多分無理だし、あーーー!!)
悶絶していると、繰り小刀丸がさらりと歌い出した。本来なら途中から何名かが一緒に歌い出すのが定例なのだ。
(ナイス!、繰り小刀丸ナイスだよー!)
そんなことを思っていると、石切丸も新たな歌い手に気付き、おやっと彼の方を見た。今剣同様すぐに事態を察したようで、繰り小刀丸に優しく微笑んだ後、歌いながら彼の近くに座った。
(※石切丸が座る時に、歌の合間で小さく「よいしょ」と言ったのを審神者は聞き逃さなかった。思わず頬がニヨっとなったのは内緒)
今剣も石切丸も楽座で座っていたので、それだけでも何だか嬉しかった。
音頭の歌い手と付けの歌い手が擦れるところもタイミングぴったりで、聞きどころ最高過ぎる!!!と、審神者は感動していた。
ただ、、、清光と光忠が置いてけぼりになっていないかな?と少し心配になったが、むしろ二人して正座して聞いていたので、多分大丈夫だろう。
審神者は、現世の演奏会で密かに心配していたのだ。雅楽を演奏している人は楽しい(ある程度の腕のある演奏者との合奏ならば)。
それが普段聴き慣れないゆったりまったりとした音楽の上に、物理的な動きも少ない演奏を聞いている人たちは、果たして退屈なんじゃないだろうか。
といっても、それは受取手の問題なので考えても仕方のないこと。
演奏者はただ良い演奏をすることに集中するだけで良い、集中することが本義なのだった。
『東遊(あずまあそび)』の3番に当たる箇所の歌が盛り上がる場面後の区切りで、審神者は一旦演奏を止めた。
もう楽しくて楽しくて仕方がない、そんな様子で今剣を見、石切丸を見、繰り小刀丸を見、改めて幸せを噛みしめた。
その間一言も発しなかったが、本当に嬉しくて仕方がないという感じが目に見えるようだった。
刀剣男士で言うところの桜吹雪状態、桜の花弁が飛んでなくても見て取れる。そんな感じだった。
満面の笑みで清光と光忠を見ると。
・・彼らは揃って微妙な顔でこちらを見ていた。
あれ?、何か良くないことがあったかな??と審神者は一瞬にして心が萎んでしまった。
が、清光と光忠は直ぐに二人して目を合わせ、二人してこちらを見、二人して障子戸の方を見やり、二人して同時にそちらを指差す。その間、何故か二人とも無言だった。
「あなや、続きはやらんのか?」
