薬研藤四郎が、極修行から帰ってきた。
彼は粟田口の兄弟短刀達に囲まれて てんやわんやする中、一期一振に修行の顛末を伝え、湯に浸かり、一休みしてから、審神者の自分のところに改めて挨拶しに来てくれていた。

この本丸では、薬研藤四郎は石切丸・和泉守兼定・堀川国広に続き、極になった4振り目の前男士だった。

いつも思う。
ただ人である自分が、彼らの主としてここにあるのは、何だか申し訳ない気がしてならない。

石切丸は御神刀、和泉守兼定と堀川国広は新撰組“鬼の副長”土方歳三の佩刀であり、薬研藤四郎は誰もが知る織田信長の懐刀である。

前の主たちと審神者とは言えただ人である自分。
比べるまでもない。

そんな前の主を持った男士達が、自らをより磨き上げ、極めて帰ってきたのだ。
自分がどれだけ彼らに見合う主であるのか、、、考えただけで気後れする事しきりである。

薬研藤四郎は、新しい装束を身に纏い、両の膝をついて、審神者である自分の前に佇んでいる。
静かな中に威厳を称える姿は、短刀とはいえ いっぱしの“もののふ”の姿を体現していた。

とはいえ、極になった男士を迎えるのも4回目だ。
自分より遥かに優れた器量を持つ彼らの主であることに、残念なことかどうなのか分からないが、慣れつつはある。
彼らに対して気後れする感覚は、無くなることなく続くのだろうと諦観を込めて・・・

「ところで、大将」

一通りの挨拶の文句を述べた後、薬研藤四郎は形式張った雰囲気を解いて胡座をかいた。

「俺たちに気後れする必要はないからな?」

真っ直ぐこちらを覗き見るような目に、ドキリとする。心の奥底までまで覗かれているようで、見透かされているようで。何だか心許ない。

「大将はいつも、自分の事を“ただ人”だと言う。俺たちの元主が歴史上の大人物だというのを、気にするのも分かるが・・・」

気を利かせて 堀川国広がお茶を淹れてくれていた。薬研は堀川に短く礼を言い湯呑みを受け取り、口元に運ぶ。
本来労いの気持ちを込めて自分が茶を淹れるものと思っていたが、やや強引にその役割を堀川に持っていかれてしまったのだ。
薬研と同じく自分も手元に出されていた湯呑みを手に取り、一口飲んだ。美味かった。

茶を一口すすり、薬研は続ける。
「彼らと大将は違う。審神者には審神者としての役割があって、大将はそれをきちんと果たしている」

気恥ずかしさに、自分は まだまだ未熟だけどね〜あはは〜(恥)と頭を掻いたが、真っ直ぐこちらを見たままの薬研は、何の反応もする事なく先を続けた。

「審神者は、『眠っている物の想い・心を目覚めさる技』を持つ者。『人の体をもってこの世に姿を顕現させ、自ら戦う力を与え、振るわせる』事が出来る」

薬研は、不意に手に持っていた湯呑みを茶托に据えた。鋭くカチャリと音がして、自分は身を硬くした。

「全ての刀剣男士の元主が持たなかった能力を、審神者の大将は持っている。これまでは自分の力でどうにも出来ない事ばかりだった。それが今は、大将のおかげで自分の力で切り開く事が出来る。俺は、自分の意志で、大将の力になろうと思っている

薬研は、胡座のまま身を乗り出すようにしてこちらを見ていた。
そしてそれ以上何も言わない。

己の『審神者としての自分』を認める事。

薬研は、その覚悟を表せと、言葉ではなく空気で伝えてきている。

自分は、自分も、彼の言葉を、意思表示を、受け止める他なかった。
自分も茶を飲み干し、湯呑みを茶托に据え、大きく息を吐き、目を閉じた。

  分かった。
  これからも、宜しく頼む。

こちらがそれだけを言うと、薬研はいつものように朗らかに笑った。
釣られて、自分も両の口の端を上げた。
場の空気は柔らかく流れ始めた。

頃合いを見計らって、堀川が茶菓子を出し茶も改めて淹れてくれた。
身に染みるほど美味かった。

「なぁ、大将も修行に出られたら良いのにな。生まれ変わった気分になれるぜ?。そうなりゃ、さしずめ審神者の極だな」

  なるほどね、みんなの刀だった時代に行って それぞれを見てくる、とか?。どんだけ時間かかるんだろうな。刀の見分けつけられるかどうか分からないし、難しそうだ。

「ははは、それもそうか。じゃぁ、大将にとっちゃ、今が修行の時期ってことかな」

茶菓子を頬張って、薬研はニヤリとこちらを見た。
自分もそうかもね、と、その笑顔に答えた。


🌾妄想は唐突に終わる🌾

pixivとか見て、
色々、
深まって、
沼広深い。
ビバとうらぶ(笑)