複雑だった。
遠征部隊からの伝書鳩で、新たな刀剣男士を迎える準備の依頼を受けていた。
新しく来るのは どうやら自分と同じ『堀川国広』らしい。
すぐに準備を始めるも、その手は何となく進まなかった。

「おいおい国広、お前俺の助手やってる時はテキパキとてるのに、一体どうした?」
兼さんが見かねて声を掛けてくれた。
・・・いつもとそんなに違うのだろうか。
「うん、兼さん、やっぱり僕ちょっと変かな?。次に来る新しい男士が『堀川国広』らしくて。何だか戸惑ってるんだ」
内番服や戦闘服や下着は、ちゃんと新品の方が良いだろうし、生活用品も全て新しい『堀川国広』用に揃えはした。揃えはしたが違和感しか感じないのだ。
それらを使うのは『堀川国広』で、自分も同じ『堀川国広』である。自分の為に準備をしているのか、何なのか。よく分からなくなっていた。

「国広は真面目だな。新しい男士が来る、だからその準備をする。それだけでいいんじゃねぇのか?」
新しい僕・・いや、『堀川国広』の為に用意された布団一式を担ぎながら、兼さんは笑った。兼さんのそういった割り切りの良さを、僕はいつも凄いなぁと感心する。

何だかモヤモヤしてるのは、すごい兼さんの隣にもう一人違う人が立つ事になると思うから、というのも原因でもあるのだろう。
そして。
新しくきた『堀川国広』は、きっといつか錬結か習合されるのだと思うと・・・罪悪感を禁じ得ない。
自分でないのが有難いと思うのと、もしかしたら自分がその対象になるのではないかという恐れと。
様々な思いが胸の中を駆け巡るのだった。

かくして遠征部隊が帰城して『堀川国広』本体が“顕現の間”に運ばれ、速やかに顕現の儀が執り行われた。
顕現した新しい『堀川国広』はしばらくボンヤリとしていたが、直ぐに意識(と呼んで良いものか分からないが)を取り戻し、辺りを見回してキョロキョロし始めた。
すみませーん。こっちに兼さん……和泉守兼定は来てませんか?
こちらが驚くほど朗らかに迷いなく相棒の和泉守兼定を探す様に、我ながら少し恥ずかしくなった。
「おぉ国広、起きたか。俺ぁ此処にいるぜ?」
顕現を見守っていた兼さんが声を掛ける。
新しい『堀川国広』は、安心したようにニッコリと微笑んで良かったと小さく呟いた。
あっ、僕は『堀川国広』です。よろしく」
周りにいた主や他の男士に気付いて、新しい『堀川国広』は皆に挨拶をした。
そして、僕に気付いて、少し驚いた顔をしたけれど、特に何の反応もなかった。
「国広が二人たぁ、俺は両手に花だな」
無事に顕現の儀が終わって安心したような男士達だったが、兼さんが一番嬉しそうにしているのに少し複雑な気分になった。


🌾唐突に妄想は終わります🌾
本丸に自分と同じ刀と、自分がいたらどうなんだろう?って、思う訳です。
アイデンティティ崩壊しそうだなぁ。。。