「どうした?、大将。ため息なんかついてさ?」

本日も、この本丸の審神者は居間で寛いでいた刀剣男士達にお茶とお菓子を出し、楽しく談笑しつつ皆を労っていた。
一通り皆と話をした後持ち場に帰ろうと廊下を歩いていた審神者を、薬研藤四郎は呼び止めて質問した。

「いつも気になってた。これでは戦さのさわりになりかねないから、話してくれないか?」

遠慮がちな言い回しだが、真っ直ぐ審神者の目を捉えており、有無を言わせない空気を漂わせている。審神者は少々逡巡したが、直ぐに折れた。

「いや、ね。皆楽しそうにやっているからさ、・・・そのまま、楽しくやって貰いたいんだよね」
審神者は廊下を歩きつつ、何となく重い口を開く。
薬研藤四郎は、空になった急須や菓子器ののったお盆を審神者の手からさりげなく引き受け、続きを促すように何も言わずにうなづいた。

「その日常を壊すのは、何だか忍びなくてね。私は審神者だから、歴史修正主義者が現れて、時の政府からの要請がきた時は、どうしても君達 刀剣男士を送り出さなきゃならない。傷付いて、最悪 破壊されるような戦場に送り出すのが、さ・・・何か申し訳なくてね」
皆には、いつも屈託無く笑っていて欲しいんだよ。
そう言って先を歩く審神者の後ろ姿は、声音は苦笑している雰囲気を醸し出していたが、薬研藤四郎には何処か不安げで、心で泣いているように見えた。

「・・・大将は優しいな」

薬研藤四郎の独り言に そんな事はない と審神者は否定したが、薬研はまた審神者のそれを否定した。

「俺たちは刀剣だ。戦をするために作り出された、生来そういう質のモノなんだ。贈答品として作られるモノもあるが、基本戦う性を持ってる。だから大将、それを気に病む必要はないんだぜ?」

それでも、と黙り込んで歩む足取りがゆっくりになった審神者は、下を向いて顔を隠すようにしていた。薬研藤四郎は審神者を気遣いながらも それ以上は何も言わず、審神者を追い越して厨に入り、そこにいた歌仙兼定にお盆を渡した。

「おっ、粟田口の兄貴は気がきくね。有難う、後で洗っておこう」
夕食の準備を始めたらしい歌仙兼定は、上機嫌で薬研藤四郎を労ったが、彼の持つ雰囲気が少し沈んでいる事に気付いた。

「ん、どうした?。主の作ったお菓子が口に合わなかったのかい?」

「・・・あれは、大将が作ったのか」

何かを察したのかそうでないのか、歌仙兼定は手に持ったお盆を台に置き、惚ける薬研藤四郎に話し始めた。

「そうなんだ、あの菓子、南蛮渡来の“くっきぃ”という名の菓子だそうだ。皆に大変な役割を背負ってもらってばかりだから、せめて君達・・刀剣男士達というからには 僕も含めてなんだろうけど、『何かしてあげたい』とね、作りに来ていたんだよ」

歌仙兼定は、何気なく近くにあった折れたり少し焦げたりしているクッキーを口に入れた。

「あの人は、心の優しい人だ。色々こちらを気に掛けてくれる。本来その必要はないのにね。・・でも、有り難いことだよ」
すっかり緩くなっているだろうお茶をすすり、歌仙兼定は続ける。

「僕たちの性は、戦う事だ。それはなにがあっても多分変わらない。それと同じように、あの人は他者を気遣うのが性なんだろうね。つまり、そうそう簡単に変えられる類のものではない」

だから、気に病みすぎないように、こちらも気に掛けて差し上げないとね。

苦笑する歌仙兼定に、薬研藤四郎も彼の言わんとすることが何と無く分かったようで、野菜を物色し始めた同士に笑いかけた。

風流を是としているこの刀剣は、おそらくこの本丸の審神者の持つ性とやらに似たものを、これまでの時間の中で培ってきたのだろう。

そして自分自身も、歌仙兼定程ではないにしろ、審神者の持つ性に気付く程度には、それを持っているらしい。

二人に何処と無くぎこちなく笑いながら、審神者は厨に入ってきた。

クッキー作りを手伝ってくれた歌仙兼定と、お盆を持ってくれ自分を気にかけてくれた薬研藤四郎に礼を言い、今日はもう本丸を後にして自分の屋敷に戻るということだった。

「主、新しい菓子を作れて楽しかった」
ニッコリと歌仙兼定は微笑んだ。
「新しい食べ物を知る事が出来るのは、僕としては世界が広がって、とても面白い事だよ」

「あぁ。くっきぃ、大将が作ったんだってな」
薬研藤四郎は審神者に向かって質問する。
質問に小さく頷きつつ何処と無くたじろぐ審神者に、彼は言った。
「美味かったぜ、大将。また頼むな」


🌾突然妄想は終わる。


ホントはこの後 遠征から帰ってきた兼さんが来て、クッキー食べれられなくて むーんってなったりするんですけど、もう全然無い文才がホントについてこないので、唐突にここまでです(汗)

毎日戦いに明け暮れてて、刀剣男士大変だなー不憫だなーと思ったけど、割とそうでも無いかもなー、ってふと思った、たったそれだけからの妄想でした、まる。