高島屋の旗艦店として威容を誇る高島屋日本橋店。

 

 

1933(昭和八)年竣工、2009(平成二一)年に百貨店建築として日本で初めて国の重要文化財に指定された。

 

 

高島屋日本橋店は当初「日本生命館」と呼ばれていたように、日本生命の主導で高島屋が営業することを前提として建設された。建設にあたってコンペが実施され、390の応募の中から伊東忠太、片岡安、佐藤功一、武田五一、塚本靖らによる審査の結果、高橋貞太郎の案が選ばれた。

 

 

現在、高島屋史料館TOKYO4階展示室では、企画展「装飾をひもとく ~日本橋の建築・再発見~」が2月21日(日)まで開催中。同店をはじめとする日本橋界隈の近代建築の装飾的な細部を鑑賞することをコンセプトにつくられたMAP「日本橋建築めぐり」が会場で無料配布されている。その裏面では細部の装飾を解説しており、MAPを片手に同店内を巡り、じっくりと鑑賞することができる。

 

南側階段室の創建当時から変わらぬ大理石の腰壁と手すり。

 

 

階段を見上げると、手すりの底に釘隠し風の金物装飾。

 

 

竣工当時の意匠がそのまま残されている屋上階正面エレベーターホール。

 

 

大理石で柱や梁、長押が表現されており、長押には釘隠し風の装飾が見える。

 

 

天井意匠に注目。

 

 

柱頭に大斗肘木風のモチーフがのり、その上が壁から曲面で持ち上げた白い折上げ天井。

 

 

通常、折上げ天井の場合、碁盤目状の格天井のはずだが、そうではないところがおもしろい。

 

 

エレベーターの階数表示板にも歴史を感じる。

 

 

外観も竣工時のままの姿が残されている。

 

 

外壁はタイル張り。

 

 

出入口上部に板蟇股風の装飾。

 

 

軒下に垂木を模した装飾。

 

 

2本のピラスターと柱頭飾りの斗栱(ときょう)など、随所に和風の意匠が見られる。

 

 

柱脚部の丸みを帯びた絞り込みは「粽(ちまき)」という禅宗様の特徴。

 

 

見落としがちな足元の装飾。

 

 

約6,000平方メートルを有する広大な屋上庭園は、超高層ビル群が林立する大都会の真ん中の緑あふれるオアシス。

 

 

円形の噴水も竣工当時そのままの姿で残されている。

 

 

花模様の透かしをもつ陶製噴水塔は、陶芸家・小森忍の作品。

 

 

竣工当初は7階にあった大食堂に設置されていたものを移設。

 

 

噴水を囲むペリカンたち。

 

 

どことなく伊藤忠太の作品を思わせる。

 

 

太平洋戦争後、予め一体的に計画されていたと考えられる増築が村野藤吾の手によって実施された。南・東面に大量のガラスブロックを用いて壁を覆い、近代的な表情に仕上げた。

 

増築部分の塔屋。

 

 

このガラスブロックの使い方は村野っぽいな・・・

 

 

南側のエレベーターホールの天井から下がるミッドセンチュリーモダンな時計は、増築時のもの?

 

 

特徴的な北側の塔屋。

 

 

1950(昭和二五)年5月、タイからメスの子象を輸入し、屋上遊園で飼育をはじめた。名前は高島屋に因み「高子」。当時、象は上野動物園にもいなかったことから大きなニュースにとなり、たちまち子どもたちのアイドルとなった。

 

 

この塔屋は人気者だった子象の高子を模したもの。

 

 

塔屋の前に鎮座する「笠森稲荷」は、大阪府高槻市にある「笠森稲荷神社」を分社したもの。

 

 

増築予定地にあったものを屋上に移設したと伝わる。

 

 

銘板は高島屋社長を務めた飯田新一の書。2019(平成三一)年3月の改装時に、祠全体を新築したが、釘隠しや扉の金物などの一部は屋上移設当初のものをそのまま再利用している。

 

東館屋上から本館増築部の意匠がよく見られる。

 

 

本館北東角の塔屋は給水塔?

 

 

2015(平成二七)年10月7日、高島屋ウオッチメゾン東京が中央通りを挟んだ斜め向かいのスターツ日本橋ビル1・2Fに路面店方式でオープン。

 

 

2018(平成三〇)年9月25日、本館北側に隣接する日本橋高島屋三井ビルディングに日本初上陸を含めた専門店115店舗で構成される新館日本橋高島屋S.C.が開業。新館開業直後、本館の入店客数が1.5倍を記録。

 

 

新館は本館のデザインをリスペクトし、装飾的な細部を省きながらも、軒の高さや湾曲した隅部を揃え、ファサードの構成を踏襲している。

 

本館と新館の間を走る区道284号線を歩行者専用道路とし、強化ガラスの大屋根が設置され、路面店が並ぶ「日本橋ガレリア」が誕生。

 

 

2017(平成二九)年3月に太陽生命日本橋ビルの4・5Fに売場面積約2,000平方メートルで先行開業した東館、2015(平成二七)年10月に売場面積800平方メートルで開業した高島屋ウオッチメゾン東京、売場面積約46,000平方メートルの本館に売場面積約17,000平方メートルの新館の開業したことにより、4館体制で売場面積約66,000平方メートルの新・都市型ショッピングセンターが誕生した。新館と本館ガレリアは、高島屋グループのディベロッパー会社・東神開発が開発・運営を担当。

 

本館と東館、本館と新館は、連絡ブリッジ及び地下道で接続された。

 

 

本館と新館を結ぶ連絡通路の完成により、本館北側の意匠を間近で見ることができるようになった。

 

 

最後に中央階段室の格子。

 

 

いつ頃のものでしょうね?

 

◇店舗データー

〇2017年度

名称=高島屋日本橋店

所在地=東京都中央区日本橋2丁目4番1号

TEL=03-3211-4111

営業時間=10時00分~20時00分、本館B2・8Fレストラン11時00分~21時00分、本館8F特別食堂11時00分~20時00分、東館ポケモンセンタートウキョーDX10時30分~21時00分、新館1F~5F10時30分~20時00分、新館6Fレストラン11時00分~22時00分、新館7Fレストラン11時00分~23時00分、高島屋ウオッチメゾン東京10時00分~20時00分※店舗によって営業時間が異なる。※新型コロナウイルス感染拡大の影響により営業時間が変更になる場合有、ホームページで要確認

売場=本館B2~8F・RF|東館B3・B1・1・3~6F|新館B4・B1~7F|ウオッチメゾン1~2F

売場面積=49,144平方メートル

年商=134,241百万円

売上順位=7/199(17年度百貨店店舗別売上ランキング)

ホームページ=日本橋高島屋 S.C.

※参考資料

〇2000年度

名称=高島屋東京店

売場面積=50,682平方メートル

年商=192,245百万円

売上順位=5/1000(00年度大型店舗ランキング)

 

●企画展「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」 概要

監修:五十嵐 太郎(建築史・建築評論/東北大学大学院教授)

展示期間:2020年9月2日(水)-2021年2月21日(日)

開館時間:11時00分~19時00分

休館日:月・火曜日、年末・年始

入館料:無料

展示場所:高島屋史料館TOKYO 4階展示室
※5階旧貴賓室は、セミナー開催時のみ開館。

主催:高島屋史料館TOKYO

 

◆参考文献

『流通・サービスの最新常識2019 日経MJトレンド情報源』 日経MJ(流通新聞)編 日本経済新聞出版社発行

『流通経済の手引き2002年版』日経流通新聞)編 日本経済新聞出版社発行

「日本橋建築めぐり」 高島屋史料館TOKYO発行