5層吹き抜けの大空間で瑞雲に包まれた天女が花芯に降り立つ。

 

 

三越日本橋本店本館中央ホールにそびえ立つ天女像は、三越のお客様に対する基本理念「まごころ」をシンボリックに表現したもので「まごころ像」、「まごころ天女像」ともいわれる。

 

 

三井財閥の源流となる三越(現 三越伊勢丹ホールディングス)は、1673(延宝元)年に伊勢松坂(現三重県松阪市)出身の三井高利が江戸日本橋に創業した「越後屋呉服店」がはじまり。

 

 

1904(明治三七)年、「デパートメントストアー宣言」から10年後、1914(大正三)年に「スエズ運河以東最大の建築」と称賛されたルネッサンス様式の日本橋本店・新館が完成。

 

三越のシンボル「ライオン像」が設置されたのはこの時。ロンドンのトラファルガー広場にあるネルソン提督像を囲むライオンがモデルとされ、当時会長の日比翁助の案により1/4の大きさのレプリカをが設置された。日比は自分の息子に男に「雷音(らいおん)」と名前を付けるほど、無類のライオン好きであったという。

 

 

日本初のエスカレーター(上り)、エレベーター、スプリンクラー、全館暖房の設備が備えられた、鉄筋造、地上5階・地下1階、当時建築史に残る傑作といわれた店舗が誕生。

 

 

1935(昭和一〇)年に日本橋本店・本館の大増築改修工事が完了(地上7階・地下2階)。

 

 

現在の店舗の形が完成。

 

 

我が国における百貨店建築の発展を象徴するものとして価値が高い」として、2016(平成二八)年、国の重要文化財に指定された。

 

 

建物中央部に設けられた5層の吹き抜け「中央ホール」は、アーチ状の天窓からの光がホール全体を照らし、5階までの各階にはバルコニーが廻らされ、アール・デコ風のデザインが目につく装飾性豊かで見事な空間。

 

 

2階バルコニーに設置されたパイプオルガンは、1930(昭和五)年に輸入されたアメリカ製のもので、現在の貨幣価値に換算すると2億円相当。

 

 

冒頭の天女像は、名匠・佐藤玄々が京都・妙心寺内にあるアトリエで多くの弟子たちとともに10年の歳月を費やして1960(昭和三五)年に完成させたもの。

 

 

高さ約11メートル。

 

 

およそ3万パーツを現地で組み立てた木彫刻作品。

 

 

像の裏側も豪華絢爛。

 

 

五色の瑞雲の周りを飛ぶ鳥。

 

 

瑞雲は西方極楽浄土から阿弥陀如来が菩薩を随えて、五色の雲に載ってやってくる『来迎図』などにも描かれており、めでたい出来事が起こる前触れとして捉えられていた。

 

 

特に解説などがなく何とも不明なこれは日輪?

 

 

制作費1億5千万円は、現在の貨幣価値で約50億円。

 

 

通常、百貨店などの商業施設内は撮影禁止ですが、まごころ天女像は撮影可。

 

日本橋北詰に立地する三越日本橋本店新館の開業は2004(平成一六)年10月11日。

 

 

規模は地上13階・地下4階・塔屋2階。構造は地上S造(柱CFT造)、地下RC・一部SRC造。設計は清水建設、監理は横河建築設計事務所が担当。三越の株式会社設立100周年の記念事業の一環として建設されたもの。

 

再開発著しい日本橋界隈に於いて、1935(昭和一〇)年から85年を経て完成当時の姿で佇む三越日本橋本店本館。

 

 

それは都市の品格。

 

 

三越のない日本橋なんて、いちごの入ってないいちご大福のようなもの。

 

 

ここから見える景色も大きな変貌を遂げようとしている。

 

 

そう遠くない日、この光景が懐かしいと思う時が来るだろう。

 

最後にひとつ三越日本橋本店最大の謎。

 

 

大理石の階段踊り場にある扉。

 

◇店舗データー

〇2017年度

名称=三越日本橋本店

所在地=東京都中央区日本橋室町1-4-1

TEL=03-3241-3311

営業時間=10時00分~19時00分、但し本館・新館1階・地階19時30分まで、新館9・10階レストラン11時00分~22時00分

売場=本館B1~7F・RF|新館B2~10F

売場面積=62,318平方メートル

年商=155,357百万円

売上順位=5/199(17年度百貨店店舗別売上ランキング)

ホームページ=日本橋三越本店 | 三越 店舗情報

※参考資料

〇2000年度

名称=三越日本橋本店

売場面積=119,833平方メートル

年商=291,989百万円

売上順位=1/1000(00年度大型店舗ランキング)

 

◆参考文献

『流通・サービスの最新常識2019 日経MJトレンド情報源』 日経MJ(流通新聞)編 日本経済新聞出版社発行

『流通経済の手引き2002年版』日経流通新聞)編 日本経済新聞出版社発行