深夜の水木しげるロードにたたずむ髪の長い美女には要注意。

 

 

ある晩、若い男がある場所を通りかかったところ、向こうから若い娘がやって来た。ニタリと笑うので少し気味悪く思ったが、美貌につりこまれて笑い返すと、突然女が長い髪を振り乱して襲ってきた。

 

 

ざんばら髪の先端が鉤針のようになっていて、これで男を引っ掛けて連れていくといい、愛媛県宇和島地方では濡れ女子(おなご)または笑い女子ともいわれる。

 

 

この鉤を引っ掛けられると、いかなる大男も身動きができなくなってしまうという。

 

 

城辺町(現 愛南町)桜岡にはしきりとこれが現われ若い男を苦しめる所だったという。

 

 

冒頭の若い男は驚き、一目散に家へと逃げ帰り、大戸を閉ざしてブルブルと震えていた。

 

夜明けを待って、朝、恐る恐る表へ出てみると、大戸には、髪の毛の先で引っ掻いた無数の傷跡が残っていた。大戸が板戸であったため危うく難を逃れたというわけである。これが障子だったら髪の毛の先の鉤に引っ掛けられて開けられてしまっていただろう。

 

 

これを教訓に、針女に追いかけられたら障子戸ではなく板の大戸を閉めるようになったという。

 

◆初出

◆アニメ版概要

 

◆参考資料

『決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様』 水木しげる 著 講談社 発行

『日本妖怪大事典』 水木しげる 画 村上健司 編著 角川書店 発行