2000年代の初め、高松港を発着するフェリー・高速艇を運航する船社の中で、飛ぶ鳥を落とす勢いだったSグループに対して、小豆島の南岸中央を母港とするK社が高速艇市場に参入を目論み、小型高速艇2隻を建造。しかし、Sグループの猛烈なプレッシャーにより計画は頓挫。代わりにフェリー1隻から2隻体制、1日5往復から8往復に増便。

 

それら2社の冷戦を横目に南岸東寄りの草壁港を母港とする内海フェリーは、地元住民の悲願であった高速艇を就航。

 

 

同船は、石川島播磨重工(現IHI)と東京大学の共同研究開発による高速旅客船「とらいでんと」として1991年竣工。1992年には公益社団法人日本船舶海洋工学会が主催するシップ・オブ・ザ・イヤ―を受賞。同船は所有者を転々とした結果、内海フェリーが所有。

 

 

同社は小豆島・草壁港と高松港の所用時間約70分、1日5往復のカーフェリー「ブルーライン」の運航に加え、2003年6月1日より同航路所用時間約45分、1日5往復の高速艇「サン・オリーブ・シー」の運航を開始。

 

 

就航当初、エンジントラブルなどが頻発し、エンジンを載せ替え。その期間中、小型高速艇を傭船。しかしながら傭船料が高額で不採算だったため、以降、年一度のドック期間中は運休しています。

 

 

S社の大型高速艇に比べて小さく、設備や所要時間が劣り、また、双胴船という形状から横波に弱く、風波穏やかな内海湾内の航走は快適ですが、気象海象悪化時は地蔵埼を抜けた備讃瀬戸東航路で大揺れするなどの欠点がありました。

 

 

しかしそれらを補って余りある利点は、旧来よりもダイヤが倍増したこと。島外に通学する児童や生徒、通勤や通院など近隣の利用者の利便性が著しく向上し、年間約6万人が利用しています。

 

 

ところが先月9日、機材の老朽化に加え、船員の退職が相次ぎ、人員不足で運航の維持が困難になったという理由により、高速艇サン・オリーブ・シーが9月1日から運航を休止することが報じられました。

 

 

本州四国連絡橋の児島・坂出ルートの開通以降も、3社が24時間運航し、1日122往復していた宇高航路は、燃油費の高騰や瀬戸大橋の通行料金値下げが直撃。2009年4月に津国汽船(日通フェリー)が航路廃止、2012年10月に国道フェリーが撤退。唯一航路を維持している四国急行フェリーも利用悪化や不採算に歯止めがかからず、2017年4月に1隻5往復体制に減便しています。

 

港の整備は進んでも、撤退、休止、相次ぐ減便。ついに小豆島航路でも航路の運休が現実となり、衰退に歯止めがかからない瀬戸の都サンポート高松。船の姿が消えた港、20年足らずで隔世の感あり。

 

船名:サン・オリーブ・シー

総トン数:52トン

旅客定員:68名

諸元:全長30.40m×型幅5.60m×深さ2.00m

航海速力:26.2ノット

催行速力:27.3ノット

主機関:ディーゼル

建造所:石川島播磨重工

竣工:1991年

備考:深日海運・とらいでんととして就航、エアポート淡路アクアラインからシャトルサービスを経て、淡路開発事業団が買い上げパールブライトに改名