崩れた山腹がナニカに見える!?それは自然破壊に対する警告??

 

武甲山 2007.08.27

 

ジャガーバックス『怪奇!日本ミステリー図鑑』(1983年発行)より

 

28.犬神さまのたたり!?  山腹に巨大な犬神の姿が浮き出す≪埼玉県≫

 埼玉県の三十四ヶ所観音≪秩父観音≫を、見おろすように立っている武甲山には、昔から犬神さまをまつるホコラがあった。ところが、数年前から武甲山をけずって石灰岩を掘り出す作業をつづけたところ、最近になって山腹がひとりでにくずれだし、巨大な犬神の姿そっくりの図形が浮きだした。秩父の人々は、自然破壊を怒る犬神さまのたたりではないか、と不安がっている。

以上、全文転載。

 

秩父(地方)は埼玉県の最西部に位置し、東京都・群馬県・山梨県・長野県に接しています。過去には、峠を破ってダイダラボッチの鼻が出現し、近くで炭焼きをしていた山崎五郎兵衛さんに大きな鼻クソが顔に当たって窒息する事件が発生しています(アニメ第2期『ゲゲゲの鬼太郎』 第29話「ダイダラボッチ」 1972年4月27日放送)。

 

秩父といえば、市の中央に巨大な存在感を示す秩父セメント(現・太平洋セメント)の巨大工場。

 

秩父太平洋セメント 2007.08.27

 

明治末期、埼玉県本庄市出身の事業家・諸井恒平(1862~1942)は、武甲山(標高1,304m)の良質な石灰岩に着目し、セメント製造事業開拓を手掛けました。セメント需要拡大を見込み、1923(大正一二)年に秩父セメントを設立、目論み通り業容は急成長を遂げ、後に彼はセメント王と称されました。

 

秩父太平洋セメント 2007.08.28

 

武甲山は、秩父盆地の南側、秩父市と横瀬町の境界に位置する山で、日本二百名山のひとつに数えられます。同山の石灰岩は日本屈指の良好な大鉱床で、可採鉱量は約4億トンと推定されています。

 

武甲山 2007.08.27

 

山の北側山腹が石灰岩質しつであるため、古くから漆喰などの原料として採掘されてきました。上述のとおり、明治末期よりセメントの原料として採掘が進められ、1940(昭和一五)年、秩父石灰工業が操業を開始。以降、大規模採掘が進められ、北斜面の山体崩壊が著しく、山の姿が変貌してしまいました。

 

武甲山 2007.08.27

 

1900(明治三三)年の測量で標高1,366メートルでしたが、その後、山頂付近でも採掘が進められたため、2002(平成一四)年の測量では1,304メートルと60メートルも低くなっています。

 

武甲山の山名は、日本武尊が、自らの甲を当山の石室に奉納したという伝説が、元禄時代の頃に定着したとされます。

 

かつての山頂には、縄文時代から近代までの歴史ある信仰遺跡や巨石群が存在していましたが、それらは石灰岩の採掘により完全消滅しています。

 

秩父へは、池袋から西武特急レッドアローで最速78分(西武池袋-西武秩父)。料金は1,410円(普通運賃780円、特急料金640円)です。

 

西武秩父線 2007.08.28

 

また、西武特急レッドアローを利用しない場合の所要時間は、西武池袋から約100分です。

 

◆参考文献
ジャガーバックス 『怪奇!日本ミステリー図鑑』 写真でみる怪奇100 佐藤有文 著 立風書房 発行