退院を前日に控えて、大イベントがあった。

 「保育参観」だ。

 

 ただ、保育園の参観は低年齢の子だと、親がいると通常通りの保育ができない場合があるので、部屋の窓には目隠しがされて、そこから親が目だけで出してのぞくというスタイル。

 

 これ、見ている子ども側からしたら、絶対目がぎょろぎょろして気持ち悪いっていうか怖いだろうし、というか親だって気が付いているんじゃ??

 

 義母と2人で行った。私たちが知らない昼間のムウちゃん。

 変装して、園庭で遊ぶ様子を「凝視」。

 

 黙々と砂場でカップに砂を入れて、ひっくり返している。

 

 かと思ったら、ダンゴ虫がいる!と友達と盛り上がったり。私は泣いていた。

 

 他の親に悟られまいとしても、こんなに大きくなって、ありがとう。ムウちゃん。お義母さん。夫。ルイちゃん。みんな。

 保育園の先生たち、どもだちたち。みんなみんな、ありがとう。

 

 昼食などは4人1組で食事をするのだが、おしとやかな女の子がバクバク食べていいる横でなかなか進まないわが子。

 (これは、いまでも悩まされる。食に対するどん欲さがない)

 

 「やっぱり、少食ね・・・」 義母が心配そうにする。

 

 しかし、おかずをしぶってもしっかりロールパンのおかわりを、隣のよく食べる子に合わせてゲットしていた。よしよし。

 

 他の親たちも、こっちのほうが見えるわよ、とか言いながら譲り合いながらわが子に視線を送る。

 わたし、最初この立ちっぱなしでしかも、他のママ(この日は父はおらず)たちがいる中で、私は「正常を保てるか」正直怖かった。

 

 「顔に、うつ病の母です」って書いていない?私。

 

 でも、正常、保てた。できた。

 

 他のママ友とも談笑できた。

 

 さて、次は義母とのランチだ。感謝の気持ちを込めて、近所のかなりおいしい鰻屋に行った。

 

 「お義母さん、これまで本当によく頑張ってくださって。ありがとうございました。今日見た、彼の成長も、そしてルイちゃんの成長もすべてお義母さんなくしてありませんでした。まだ、私はヨタヨタです、しばらく力を貸してください」

 

 義母は、正直、きつかったこともしっかりと話してくれた。夜中の授乳。母親不在の子どもたちを守らないといけない思い。私の母、頼りにならない絶望感。子どもたちには、栄養のあるものの食べさせてあげないとと頑張ったお料理。私がつぶれたことを全部やってくれた。

 

 それを最後に、こんな言葉で終えてくれた。

 

 「つらかった。でもね、こんなことがなかったら孫たちとこんなに濃密にすごせなかったと思うの」

 

 私のせいでみんなんの人生をめちゃくちゃくにしているんだ

 

 を

 

 孫たちとこんなに濃密にすごせたからと+(プラス)に置き換えてくれた目の前の義母。

 

 手で口をおさえて、歯をカチカチ言わせて涙をこらえようとしたが無理だった。

 

 「さ、泣いている暇はないから。これからが本番だから」

 

 鰻が来た。

 

 特上にふさわしい味だった。

 

 ありがとう、ありがとう、ありがとう。お義母さん。